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4章 繁盛

73話 お仕置き

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「な、何事だ!?」


ピーブルとジャジャマーが戸惑い、リザードマンたちが入って来て状況を伝えていた、余たちに聞こえないようにじゃな、じゃが外の騒ぎ方で大体分かっておる。
それにくしゃみをしたのだから近くにいると、余は周りを見たのじゃ、屋根に空気を通す穴があるのじゃが、そこにひょっこりと猫の顔が見えた。


「やはりクロネオか」

「魔王様どうし」


パランティが余の目線を追い天井を見てなるほどっと頷いた、相手の事情も聞けた、もう用はないから力でねじ伏せても良かった。
本来馬車の方向を変えた時、護衛の者たちが反撃していたはずなのじゃ、余の護衛たちは強い、実は余もパランティも相当に強くなっておる、じゃが力でねじ伏せるにも順序がある、護衛の者たちがどうして素直に従ったのか、それは相手の事情を聞いて解決したかったからなのじゃよ、力だけではない方法として話し合いを優先したのじゃな。


「それで、どうするんですか魔王様」

「そうじゃのう~・・・それはあいつらに任せるのじゃ」


そろりそろりと壁伝いにクロネオが降りてきたのじゃ、ピーブルとジャジャマーは気づかず外を見ておる、外では大きな機械族以外もいるようじゃ、クマの部隊だと言っておるな。


「巨大な機械族、どうなっておるんじゃ」

「オラも始めて見た、でも強い者が勝つのは同じ、行ってくる」


ジャジャマーが槍を持ち一人で出て行ったのじゃ、その後をリザードマンが付いて行こうとしてクロネオに縛られた、それを見たのは余たちだけじゃ、窓の外を見ていたピーブルは気づいておらん、そのまま天井に引っ張られて行ったのじゃよ。
パランティは余たちが天井を見て不思議そうじゃ、余は咳ばらいをして注意を引いた、そして魔王は諦めろ、そう言ったんじゃ、しかしピーブルは怒り狂っておるな。


「外を見て分かるじゃろう、強さも持っておるんじゃよ、それを使わないのは余の心の強さじゃ、外側ではなく内側が大切なのじゃよ、ピーブルおヌシには分からん、だからおヌシはなれんのじゃ」


余が答えを言ってる間に、ピーブルはクロネオによって縛られた、宙づりのこいつは分かっておらんようじゃ。
ゆえに余はクロネオに指示を出した、くすぐる道具を渡してな。


「ぎゃははは、や、やめるのだ、やめろー!」


クロネオはくすぐるのを止めん、楽しそうでもあるから余もしばらく放置じゃ、その間に外は大騒ぎじゃ。
大きな機械族がシンジの作った刀を振り回しておる、沼に剣が振り下ろされた時、津波が起きて家が流されていた、余の護衛たちはクマの部隊が守っておった、余たちのいる家はパランティの障壁魔法で無傷じゃ、これほどの障壁を作れるのはレベルを上げたくれたシンジのおかげじゃ。


「はぁっはぁっはぁっゆ、許さんぞお前」

「なんにゃ、まだ足りないにゃ?」


クロネオが猫じゃらしをユラユラさせてピーブルに近づいておる、じゃが戦いわ終わった、クロネオに止める様に言って話し合いじゃ。


「おのれ卑怯者が、大きな機械族がいるからと、自分で堂々と戦えないのか」

「ふむ、そうまで言うならば余とお主で勝負するか?」


ユニコーン種の戦いをしようと提案したのじゃ、それは魔力をぶつけ合い相手を押しつぶした方が勝者となる戦いじゃ、ピーブルはそれを聞きニヤ付いておるよ、負けるわけないと思っておるんじゃな。
クロネオに縄を解くように言うと、ピーブルは腰を落として構え余も準備を始めたのじゃ、パランティが心配しておるが、平気じゃと手を振って見せた、今の余に力で挑んできた時点でこいつらに勝ち目はないのじゃ。


「さぁ行くぞ!」

「いつでもよいぞ」


軽い返事から始まった魔力つぶしは、あくびが出るほどの差があったのじゃ、シンジのおかげとは言ってもピーブルは弱すぎる。
余が力を入れていないせいか、ピーブルも余裕を見せ笑っておるよ。


「くっくっく、どうじゃ小娘!ワシの強さが分かったか、これでもまだ半分の力だぞ」

「半分なのか・・・分かった少し力をあげるぞ」

「ぬおっ!?」


魔力を少し上げると、ピーブルが魔力の重圧に膝を付いたのじゃ、じゃが持ちこたえておる、半分じゃなかったのかと思ってしまったのう。


「な、なかなかやるではないか、ではワシも本気を出させてもらうぞ」


ピーブルはそう言っておるが、魔力の量は変わらぬ、こいつが嘘をついていると分かったので、もう少し魔力を上げ押しつぶしてやった。


「ぐっ・・・お、おのれ~」

「おヌシの言った正々堂々じゃ、これで満足じゃろ」


ピーブルに告げたが負けてないと言ってきた、起き上がれない程に潰されているのじゃ、余は半分の半分も魔力を出していないのじゃがな。


「結局おヌシは認めんのじゃな、それなら余も覚悟を決めるぞ、それでも良いのじゃな?」


少しずつじわじわ魔力をあげて行ったのじゃ、ピーブルは顔まで床に付けて苦しそうじゃな、じゃがこれでしまいじゃ。
余が力をあげようとした時、ピーブルの背中に長く光った爪と余の良く知っている剣が突き刺された、それを見て魔力を解いたのじゃ。


「ユニーシャの手を汚すほどの奴ではない、オレはその為にいる」

「ウチもそう思うにゃ、魔王様はシンジにゃんと同じにゃ」


クロネオに言われる、シンジの顔が浮かんだのじゃ、それは魔力でとどめを刺す時に浮かんだ、悲しそうな顔をしておったな、きっと止めてほしいのじゃろうな。


「余は覚悟しておったのじゃが、取られてしまったのう」


全ての魔族の気持ちを背負う覚悟は出来ておる、それは命を取る以上に取られる覚悟も持っておるのじゃ、じゃからピーブルたちとも話をした、結果は残念じゃったがリザードマンたちの生き残りは何とかしてみせるぞ。


「その覚悟はまだ先に取っておいてくれユニーシャ、きっとこの先いくらでもある、そうだろうクロネオ」

「うんにゃ、ウチがここに来たのもそれを知らせに来たにゃ」


兄さんがタイミング良く来たのはそれが理由かと聞いたのじゃ、そうしたらクロネオが空を指差した、なんでも空高くを飛んでいるスライムがいて、世界を見ているそうじゃ。


「シンジは規格外じゃな、そんなスライムがいるのか?」

「そうにゃね、見えないにゃから空のは分からにゃいけど、外のあそこにいる大きなスライムと同じ種類だそうにゃ」


外には、機械族以外にも機械のようなスライムがいたのじゃ、言われるまで分からなかったが、乗り物の様じゃ、そして強そうじゃ。


「ほんと、規格外じゃな」


これほどの者たちを従え力を持っておるのに、シンジはそれを使わない、余はそれを見て習ったのじゃ、うまくいかなくとも力を使わず頭を使って解決する、今までもやってきたがあれとは違うのじゃ。


「じゃあ行きましょう、シンジの所へ」

「うんにゃ」

「そうじゃの、早く美味い飯が食いたいのじゃ」


リザードマンたちはギャランに任せ、余たちはシンジの元に向かったのじゃ、クロネオが言っていた機械族のようなスライムに乗ってな。
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