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4章 繁盛

70話 世界初ゴーレム

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「う~ん上手く結合しないなギャラン」

「そうだな・・・やはり大きすぎるのか、もう少し細かく」


我の提案をピャーンが拒否してきた、それは我も思っている事だ、細かな装甲にすると継ぎ目を攻撃される、我らの様に小さければ狙えないが今作っている鉱鎧甲冑はとても大きな物だ、シンジ様の機関車と並列して作っているのだが、なかなかうまくいかない。


「しかし防御を多少犠牲にしなくては動かせないだろう」

「それはそうだけど・・・でもでも、下から見たら分かっちゃうんだよ、やられたら意味ないよ、ここは装甲を大きくしなくちゃ」


ピャーンの言い分も分かる、しかしそれをすると動きが遅くなる、攻撃も当たらなければ意味をなさない、我たちはどうすれば良いのかと悩んだ、そうしていると夜が明けしまったのだ。


「ああーもうっ!朝になっちゃったよギャラン、ご飯にしようご飯」

「分かった分かった、腹が減っていては良い案も出ないからな、シンジ様の所に行ってみよう」


シンジ様の考案した機関車もすごかった、魔力でタービンを回し動力にしたのだ、タービンと言うのを始めて見たし、本来は蒸気を使うとか言われたが素晴らしいの一言だ、今回も何か良い案をいただけるかもしれない。


「と言う事なんですよシンジ様、どちらかを優先すると上手くいかないの、どうすれば良いのかとても困ってます」


ピャーンがシンジ様に馴れ馴れしい喋り方をしている、我は砂鉄ジュースを飲みながらイライラしている。
どうしてそんな気持ちになるのか、自分でも分からなかった、しかしそれを理解する前にシンジ様がある提案をしたんだ。


「ふむふむ、じゃあ餃子を作ってみようか」

「「はい?」」


ピャーンと声を揃えてしまった、餃子とはシンジ様がたまに作っている我らの食せない食べ物だ、我らは巨大鉱鎧甲冑を作りたいと言っているのだ、意味が分からないとふたりでシンジ様に言った、しかし作れば分かると言われてしまった、そして鉱鎧甲冑からも出るように言われたんだ。


「ほんとに意味が分からん」

「だよね~・・・でもきっと何かあるんだよ、だってシンジ様だよ、考えが読めないシンジ様なんだよ」


ピャーンが褒めているんだか分からない言い方をしている、今はミント殿がいないから良いが、もしいたらお前大変なことになってるぞ。
そんな事を思いながら、我は本体でニラを切っていった、ピャーンもキャベツを切っている、シンジ様は鼻歌を歌いながら肉を細かくしている。


「さて、具は出来たから次は皮だね、ふたりで伸ばして行って」

「「はい」」


ピャーンと返事をして作業を進めた、しかし我たちは分からない、丸い皮を作りながら唸っているんだ、横ではシンジ様がニコニコしている。
その顔を見て我は聞いてしまったよ、それで鉱鎧甲冑の大型化が出来るのかとな。


「ギャラン、料理は色々な物が合わさり美味しくもなるしまずくもなる、それは二人が悩んでいることに似てるんだ、例えばふたりが切ってくれた野菜は細かく切れてないのもあるよね、それは火が通りにくかったりする」


シンジ様は更に続けた、皮が厚いとその野菜は更に悪い方に行くそうだ、しかし皮が上手く作れている物に入ればそれほどでもない、他にもにんにくとショウガのどちらを入れるかと味の好みもある。
奥が深いのだなと我は思った、そう思いピャーンと腕を組んでいるとシンジ様は言ったんだ。


「ふたりとも、失敗は成功のもとって言うほどに繰り返す物なんだ、失敗する事は悪い事じゃないんだよ、だからどんどん失敗を繰り返していい物を作ってね」


ピャーンと顔を見合ってしまった、失敗は出来ないとふたりで悩んでいた、機関車もシンジ様に聞いて失敗をしなかった、だから失敗はしてはいけないと思っていたんだ、しかしそれは間違っていたようだ。


「でもでも、シンジ様は早く出来上がった方が良いんでしょ?」


ピャーンがまた馴れ馴れしい態度だ、しかも今度はシンジ様の手に掴まっている、我はさすがに引き剥がしたよ、それを見てシンジ様は優しい目をしていたな。


「それはそうだけど、無理して急いでも碌な成果はでないよ、急がば回れだよふたりとも」

「「はぁ~」」


ふたりで変な返事をしてしまった、シンジ様は良く分からない言葉を使う、コトワザというらしいが良く分からない、我らは首を捻ってしまったよ。


「深く考えないでよ、まずは餃子を完成させよう」

「「はいシンジ様」」

「良い返事だね、じゃあ包むよ」


我たちは餃子を作った、シンジ様は一人で出来るが我たちは体が小さい、ふたりでスプーンを持ち具を皮の上に乗せる、そして皮の端に水を少し塗り畳んで行く、最初はシンジ様の様に綺麗に包めず悩んでしまった、しかし次第に上手くなりシンジ様も喜ぶ出来になった、我とピャーンは真っ白になってしまったがとても楽しかった。


「「「「「いただきま~す」」」」」


我たちの作った餃子をヒューマンとキャット族の子供が食べて喜んでくれた、我は変わった感覚に見回れたよ、ピャーンも同じようだ。


「ギャランも感じた?」

「ああ、これは何なのだろうか、胸が熱くなる感覚だ」


シンジ様に喜ばれるのとはまた違う、どういう感情だろうか、我とピャーンはシンジ様に聞こうと見たのだが、子供たちの対応に急がしそうだ。


「変な感覚だが、悪い気はしないだろピャーン」

「そうだね、また頑張ろうって気持ちになる、これは良いかも」


我も同じ気持ちだ、シンジ様に褒められ頑張ろうと思っていた時の事を思い出せた、これなら良い物が出来そうだよ。
我たちは早速作業場に戻り、まずは材料から見直すことにした、そこでいままで出なかった問題点が溢れて来たきたんだ、その中で一番重大なのを洗い出したのだ。


「分析触手がダメだったんだねギャラン」

「ああ、我たちはいつも使っていたから気にしなかった、あれは魔力を吸ったり分析が主な使い方だ、しかし今回は流すだけの部分が多い、それならば他の素材が適している、スライム触手を使うぞ」


シンジ様に頼んで出来るだけの素材を貰った、そこから一番魔力が流れやすい物を選んだ、他にも装甲は柔らかい物を使った、その上から鎧を纏えば良いのだ、装甲自体を動かそうとしたのがいけなかった、我らの鉱鎧甲冑では駄目だったのだ、そして鉱鎧甲冑があればこその部分もある、それはコアに当たる部分だ。


「じゃあ早速乗ってみるよギャラン」


鉱鎧甲冑と同じ位置、胸の部分にピャーンが鉱鎧甲冑のままで入って行った、そしてスライム触手が鉱鎧甲冑にくっ付き動かせる、こうすれば鉱鎧甲冑の様に自在に操ることが出来るのだ。


「魔力の高くなった我らだから出来る事だがな、前ならばまず不可能だ、それほどの魔力量を使う」


量産や自動化はまだ出来ない、しかしそれも出来る様に工夫したい我はそう思ったよ、ピャーンが動かしているがなかなかうまくいっている。


「これでシンジ様も喜んでくれるな、良かった」


ミャオサーが帰って来る前に完成出来て良かった、正直シンジ様よりもミャオサーの方が怖い、主の為に頑張る気持ちは分かるのだが、もう少し余裕が欲しい。
前までの自分たちも同じだったんだと反省した、これでは成功する物もしない、それを教えてくれたシンジ様にはほんとに感謝だ、次の繁殖時にはシンジ様の情報を貰うべきだな。
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