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2章 宣伝

37話 霧のスライム

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「探せ!必ず見つけるのだ!」


アタシは茂みから追いかけて来た村の大人たちを睨んでいます、震える弟を抱きしめてです、しばらくして大人たちが他の場所に移動し始めました。
アタシは弟を立たせて言います「もし、アタシがいなくなっても真っすぐ希望の村に行きなさい」と、弟が頷いたのを見てアタシは先を進みます。


「姉ちゃん」

「しっ、静かに進むのよサチト、もう直ぐ森を抜けるから見つかりやすいわ、その先は草原だから姿勢は低くするのよ」


サチトが頷いたけど、森を出る所に大人たちがいたんです、アタシは直ぐにしゃがんでやり過ごそうとしました、でも大人たちはどんどん増えて行き、出る事が出来なくなってしまったの。
アタシが迷っているとサチトが服を引っ張って来たわ、仕方ないからもう少し遠目の場所から森を出ようと考えたの、でもそこで小枝を踏んでしまい大人たちがこちらに気付いてしまったのよ。


「いたぞ!逃がすな」

「にに、逃げるわよサチト!」


サチトを引っ張って森を戻ります、大人たちの声がすぐそこに聞こえアタシは必至で走ったわ、でも現実は厳しいわ、大人との距離がどんどん詰められてしまったの、もうダメだと思っていると周りが白い霧に覆われていったんです、チャンスとばかりに茂みに隠れます、大人たちはアタシたちに気付かず走って通り過ぎたわ。


「よ、良かった~」

「姉ちゃん疲れたよ、少し休もうよ」


ずっと歩いていて、最後に走ったからサチトに賛成したの、食べ物が無いけど水場を探す事にしたわ、ちょっと休憩してからね、でもそこで変な事が起きたのよ。


「ね、姉ちゃんあれって」

「そうねサチト、村の大人たちが同じ場所を走って来てるわ・・・これはもしかしたらまずいかも知れないわね」


霧のせいだと、アタシは直ぐに思ったわ、サチトは大人たちが何度も同じ道を走って来るから笑ってる、でもアタシはかなり不安です、だって霧のせいだとしたらアタシたちも同じようになるのよ、もうアタシたちはここから出られないかもしれないわ。


「ど、どうしよう、霧が晴れるまでここにいた方が・・・でも喉は乾いたし食べ物も無いわ、大人たちも疲れて歩き始めてる」


大人たちも変だと思っているようで、歩いては周りを確認しているわ、そして止まって話し合いを始めたの、アタシはその話に耳を傾けました。


「ど、どうするだ!このままじゃオラたちは村に帰れないだよ」

「まぁ落ち着け、周りが見えないだけだ、しっかりと方向が分かれば迷わないだろう、誰か木に目印をするのだ」


大人たちがナイフで目印を付け始めたわ、そしてゆっくり歩いてるの、でもその作戦は失敗に終わります、目印がある場所なのに同じところを歩いているんです。
これはまずいと大人たちもアタシも思ったわ、このままじゃほんとに生きて帰れないわ。


「せめて家から持ってきたパンが残ってればなぁ~」

「ね、ねぇ~姉ちゃん」


アタシは逃げている最中に食べてしまったパンを思い浮かべます、あれが最後の食事になったとアタシはかなり暗くなったわ、サチトが服を引っ張ってるけど、ため息を付くばかりよ。
アタシが反応しないから、サチトは服を引っ張るのを止めたけど、その後直ぐにアタシの口に何かを入れてきたの、アタシはそれがパンなのを少しして気付いて我に返ったわ、その後アタシは驚いてサチトを見たの。


「さ、サチト!どうしてそんなにたくさんのパンを持ってるのよ」

「やっと気づいたね姉ちゃん、そこにまだあるんだよ」


サチトの指の先には、カゴに入ったパンが山盛りでありました、さっきまで無かったのにどうしてとサチトに聞くと、目の前がユラユラし始めてパンが出現したと言うんです。


「そ、そんな得体のしれない物をアタシにって!?サチトも食べてる!」


両手に沢山持ってるから食べるとは思ったけど、そんな美味しそうに食べないでよっと叫びました、そしてすぐに口を塞いだの、だって近くに大人たちがいたはずなのよ、恐る恐る振り向くと大人たちはウロウロするだけでした、これも霧のせいなのかと少しホッとしました。


「姉ちゃんもしかしてさ、この霧大人を迷わせるのかもよ、オイラたちは関係ないんだよ、逆にパンをくれたじゃん」


呑気にサチトが言ってきます、アタシもそう思いたいけど、そんな都合の良い話があるわけないわ、アタシはそう言ってサチトの頭をコツンと叩いたわ、現実を見なさいってね。


「サチト、世の中はそんなに甘くないの、このパンだってそうよ、もしかしたら毒だったのかもしれないの、パンに見えて違う物なのかもしれないわ」

「痛いなぁ~じゃあ試してみようよ、オイラね~一度で良いからお菓子が食べたいんだ、お願いだよ霧さん」


サチトが何処に願うわけでもなく言い出したわ、アタシはそんなこと言ってもダメよと思っていたんだけど、さっきサチトが言ったように正面の一角がモヤモヤし始めたわ、そしてそこにお皿に乗ったクッキーがしっかりと見えたの、サチトが喜んでお皿を取って食べたけど、アタシはそれよりもその先に注意したわ。


「やったよ姉ちゃん!やっぱり出てきた」

「サチト、あれが運んで来たのよ、これは奇跡じゃないわ」


よく見ると、霧の先に小さな球体が動いていたの、それはスライムだったわ、モンスターと分かってアタシは後を付ける事にしました。
この霧がモンスターの仕業だと思ったからです、あいつに付いて行けば霧から出れると思ったんですよ。


「姉ちゃん平気かな?」

「多分ね、スライム位ならアタシでも」


後を付けながらサチトを安心させたわ、どんなに変わった事をしていてもスライムです、そこら辺の棒で叩いても倒せます、でも着いた場所にはプヨプヨした大きなスライムがいたわ、下にはさっきのスライムも一緒なの、それはアタシがどうにか出来る大きさじゃなかった、家よりも大きくて巨大なんです。
逃げなくちゃって振り向くと人型のスライムがいました、球体のスライムに乗ってアタシたちを見下ろしてるわ、咄嗟にサチトを抱きしめて守ったけど、そこで驚きの出来事が起きたんです。


「あらら~まさかここまで来るとはおもわなかったなぁ~」

「「え!?」」


なんとスライムが喋ったのよ、顔を見ると兜をしていて分からなかったわ、でも後頭部を抑えて困ってる感じ、襲ってくるようなそぶりはしないわ。


「あの、あなたは?」

「オレかい?俺はスライム騎士の変異種、スライム錬金術士だ、ここではビッグスライムの実験をしてるんだ」


すらすらと話てくれますが、アタシは全然頭に入りませんでした、何かの実験なのは分かりましたね。


「そ、それで、どうしてアタシたちに食べ物を?」

「それも実験の一環だよ、何処までなら気付かれないのか調べていたんだ、結局見つかっちゃったね」


兜の下で笑ってるみたいです、そしてそのまま実験の結果を話しています、今度はしっかりと聞けたんです、何でもこの霧はビッグスライムが発生させていてその結果を調べているそうです、それと同時に沢山いるスライムに、アタシたちが欲しい物を持って待機してもらい、それを願うと出していたそうなんです。


「離れてると気付かれないけど、拾ってもらわないと意味ないからね、今後はもう少し注意するよ」

「そうだったんですか、ありがとうございます」


食べ物を貰ったのでお礼を言いました、スライム錬金術士さんは気にしないでと言って更に続けます、この霧は標的を惑わす魔法を掛けているそうです、だから大人たちは迷ってしまい、もう二度と出る事は出来ないそうですよ。


「そこまでしなくても」

「君は優しいね、でも俺は許せない!要らない子供は見捨てるのに君たちは捕まりそうになった、それはどうしてか分かるよね」


頷いて返事をしました、アタシたちは奴隷商人に売られるところでした、それが嫌で今噂の村に逃げようとしたんです、それが見つかり追いかけられていました、スライム錬金術士さんはそれを見て両手をあげて怒ってます、子供を売るよりも他にやれることがあるって、村を開拓して広くして作物を育てたり、森の土を畑に加えたり出来るって、アタシには分かりません。


「でも、さすがに命は」

「ダメだったらダメだよ・・・いや待てよ・・・村に戻して村ごと霧に・・・うん、良いかもしれない」


何だかすごく危ない事を思いついたみたいです、アタシは怖くなってサチトを抱きしめました、痛がったけどサチトも同じ様に怖いみたいです、それを知ったスライム錬金術士さんは咳ばらいをしてアタシたちを見下ろしてきたんです。


「そんなに怖がらないで、別に命を取るわけじゃない、君たちを追いかけ回した罰として、ちょ~っと実験に協力してもらうだけさ、君たちは目的の場所に向かうと良いよ」


そう言われてアタシたちはたくさんのスライムに運ばれます、こんなにいたんだと驚いていると、食べ物をスライムが持ってきてくれたんです、それもお肉や野菜が調理された物でアタシたちは幸せな時間を過ごしました。


「まるで夢みたいね」

「そうだね姉ちゃん・・・でも村の人達平気かな?」

「アタシたちに酷い事をしたのだもの、少しくらい罰は必要でしょ、それよりも希望の村にはいつ着くのかしらね」


希望の村、それは夢の様な場所だと噂されています、食べ物が沢山あって病気もない、とても素晴らしい場所、誰もが逃げだす時そこを目指します、そして平和に暮らすんです。
疲れていたアタシたちはスライムの上で眠りに付き、起きた時にはその村の前にいました、そしてその村の状況を見てビックリしたんですよ。
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