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3章 支店

61話 お守りは大変

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「ルナ、ご飯だぞ~」

「あい~」


やれやれと言った感じで、あたしは光の方に四つん這いになって歩いているルナを見てるの、あれから街に帰って来て、それぞれ手続きを済ませたわ、あたしが結婚の手続きで光がギルドの就職活動よ、そして今日はいよいよ孤児院に行くって訳よ。
でも1日経って驚いたわ、ルナが立てるようになってたの、まだまだ危なっかしくて四つん這いのハイハイがメインだけど、少しなら喋れるのよ、それに柔らかい物ならもう食べれるわ、凄い成長速度よ。


「でも・・・1番驚いたのは光よね、何よあの間抜けな顔」


ルナがヨロヨロと光の所まで歩くと、光は抱き上げて麦粥をスプーンで与えてるわ、その顔がもう親ばかって感じ、最初は無関心で抱っこさせると嫌な顔をしてたのに変わり過ぎよ、ちょっと可愛いとは思うけどね。


「でもまぁ、仕事は受けて来たし、孤児院もこれから行けるから良いんだけど・・・子供が二人いるみたいな感覚ね」


あたしは、子供も産んでないのに老けた気分です、ルナはとても可愛いし、あまり手が掛からないので良いんだけど、これからが心配なのは変わらないわ。
宿を後にして、あたしたちは孤児院に向かいます、サラトンの孤児院は小さな教会って感じです、庭が広くて子供たちが遊んでるわ、人数は10人ね。


「ヒカウ、あのコたちたえ?」


ルナが抱っこしてる光に聞いてるけど、光は孤児院には始めて来たのであたしを見ます、仕方ないので一緒に暮らす子供たちだと説明したわ、ルナは分かったようで頷いています、頭が良すぎだけど、きっと神の子だから成長速度が違うんです、恐らくだけど直ぐに大人になるんでしょうね。
聞かれても良いように言い訳を考えつつ、あたしは孤児院の扉を叩きます、中から出てきたのは中学生くらいの少女でした、シスター服を着ているので彼女がここの責任者みたいですよ。
あたしたちはその場で名乗り説明したわ、依頼を受けた事が分かって少女は喜んでるの、そして名前を聞いて中で話をすることになったわ、話を聞いてビックリだけどね。


「依頼は取りやめる予定だった?」

「どういうことかしらユイさん」

「それがですね・・・そのお話は1年前から出していたんですけど、誰も来ないので諦めていまして、そんな時に領主様の支援が取り消しになったんです、知らせが来てしまって・・・それで、今日にでも取り下げようと思っていたんです」


タイミングが悪すぎねっと、あたしたちは顔を見合ってしまったわ、ルナはそれを見て首を傾げてるわよ、でもあたしの予定は変えるわけにはいかないのよ、それにチャンスよね。


「じゃあ経営はかなり大変じゃないかしら?」


あたしは探りを入れたわ、ユイは頭を深く下に向けちゃった、領主の支援を受けれるって1年も頑張っていたけど、結局来ないんじゃそうなるわね。
あたしたちが来たけど、それを聞いて止めてしまうとも思っていそうね、下をむいたままチラッとこっちを見てるわ、光もあたしがどう判断するのか気になってるみたい、月と遊び始めたけど、それ位は許すわ。


「安心してよユイ、あたしたちはここに住むのはやめないわ、これからは協力して暮らして行きましょ」


光がルナとハイタッチして喜んでるわ、正直あたしは領主の支援を宛てにしてないの、この世界の平均給与は銀貨3枚で、領主の支援はそれを基準にしているから当然なのよ、それは大人2人子供1人の家族が基準で、ギリギリ生活が出来るって感じです、子供がもう1人いる家では、ちょっと苦しくなるわ。
そして領主の支援は月銀貨3枚、子供とは言っても人数が11人の孤児院では足りないわ、しかもそれは貰えていない、この1年ユイが街の家を回り、食料を貰ったりしているのが想像できる。


「ほんとに良いのですかソラさん?ワタシたちといても大変なだけですよ」


ユイが申し訳なさそうです、でも考えは変えません、大変なのはどこも同じだもの、それなら協力した方が良いのよ。


「そうよ大変なの、だから弱い者同士協力しましょ、あたしたちは冒険者としてお金を稼ぐ、その代わりあたしたちが帰って来るまで、この子のお世話をお願いね」


手を差し出して提案しました、ギルドの訓練官になれば、教育をしていなくても銀貨5枚が約束されるわ、指導が無い時は外で依頼を受けても良いの。
もちろん、あたしも訓練官になる予定よ、もしここで暮らせない場合を考え、宿の引き払いはしなかったけど要らなそうです、これで銀貨10枚が約束されたの、ユイは考えた後握手をしてくれたわ。


「ありがとうユイ、これからよろしくね」

「はい!」


しっかりと握手をして、あたしたちは子供たちに紹介されたわ、子供たちは2歳から8歳までの子たちで、ユイはなんと17歳で1コ上だったわ、ここで暮らすのは正直大変だと思う、でも何だかあたし楽しくなってきました。
ルナの笑顔を見て思っていました、これが生きるって事なのかもしれないって、ショタ先生もきっとこれが言いたかったんだと思います。


「さて、これで心配事は無くなった、後は領主が何もしてこないことを願うわよ」


フラグだと思ってもあたしは口に出したわ、ここに定住するのを決めたのは、なにもルナの為だけじゃないわ、噂で戦争が始まろうとしているのを聞いたからよ、光との結婚もそう、優先的に駆り出されないようにした訳よ。
これが一生分考えたあたしの作戦、もう頭がパンクしそうだから、これ以上の揉め事はごめんだけど、支援を打ち切った領主が悩みの種、ショタ先生ならもっと良い案を考えるかもだけど、あたしにはギルドを味方に付けるくらいしか思いつかないわ。
きっとこれで大丈夫、そう思ってボアの報酬で買った食材を使ってユイと一緒に料理を始めました、そしてすごく長いテーブルに並べると、子供たちが嬉しそうにしているわ。


「さぁみんな、お祈りをして食べましょう」

「イタヤキマウ」


ユイが手を合わせ、神にお祈りをお祈りを捧げようとして止まります、月が拙い言葉でいただきますと言って食べ始めてしまったからなの、あたしと光は驚きよ、あたしたちからスプーンで食べさせないと月は食べる事が出来なかったの、でも今はパンを自分で持って食べてるわ。


「あ、あの・・・これってどういう」

「いただきますって言ってね、あたしたちの故郷でしてるお食事前の言葉なの、先に食べてしまってごめんね」


あたしは誤魔化すように言います、ユイが他の所を聞きたいって顔をしていたから、わざと違う事に答えたわ、そしてその言葉を聞いてユイも考え込んでいるの。


「作ってくれた人や食材に感謝ですか」

「ええ、見た事もない神様にお祈りするよりも、こっちの方が近くに感じない?」


誤魔化しが成功したと、あたしは話しを伸ばします、そしてユイも賛成してくれたわ、シスター服を着てるけど、それはここにあった残り物ってだけらしいの、だから今後はいただきますがあたしたちの食事のお祈りになりました。
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