上 下
40 / 86
2章 宣伝

39話 知力の作戦

しおりを挟む
「どういうことですかなフブキ殿」


私はキキルー伯爵に坂崎さんと森田君が出て行った事を問い詰められています、私に言われてもって言いたいけど、それでは済まなそうです。
あの二人は、私や力の勇者である坂田君と治癒の勇者である小林さんとは仲良くなかったわ、それにお城での訓練もあまり積極的に参加してなかったの、きっと自分勝手に遊びたいのよ。


「どうもこうもありませんよキキルー伯爵、あのふたりは勝手に出て行きました、私にそれを説明しろと言われても困ります、あの二人を見つける事は出来ますか?」


私の質問にキキルー伯爵は困った顔をして無理だって答えたの、あの二人が相当な実力を持った冒険者か、貴族にでもならない限り見つける事は出来ないそうです。


「ギルドカードとかで探せないの?」

「ギルドカードは、その方のレベルや職業などを登録する物です、それにその者の経験も記録しています、なので犯罪などを犯した時調べる事が出来るのです」


私のスキルでもそれは分かります、だけどきっと裏技の様な物があると思って聞いたの、登録して経歴も記憶しているのならその可能性も高いと思ったわ、でもダメみたい、伯爵はかなり困った表情をしてるわ、これが演技だったら相当な策士ね。


「いそうな場所に兵士とかを向かわせるとか出来ないの?」

「出来なくはありません、ですが隠れられたりして見つからないでしょう」

「じゃあ諦めましょう、私がふたりの分も頑張る、ここには他にも勇者がいるわ、きっと平気よ」


キキルー伯爵に納得してもらったわ、元から国を反映させてから動く予定なの、まだその時じゃないからいても居なくても同じ、問題は命があるかどうかだけど、勝ってな事をしたのだもの、後は自己責任よね。
私は残った二人を集め話をするように伯爵に伝えたわ、ふたりが来るまでに何とか言い訳を考えておかないとね。


「そ、それで・・・ふたりはどうなったんですか織田さん?」

「正直分からないわ坂田くん、でもあのふたりは危険と承知でここを出たの、ここでは自分の行動には責任を持たないといけない、守ってくれる保護者はいないのよ」


坂田君と小森さんの緊張は見て取れたわ、ここにはモンスターもいて盗賊も少なくない、私は出て行ったふたりの事よりも今ここにいる二人を守る事が重要だと思っているわ、私の出来る事はそれだけだし、使える兵士には限りがあるわ、危険を実感してもらう為に使わせてもらうのよ。
今後そう言った独断行動は控える事を伝えたわ、そして訓練を少し本格的にする提案を話しました、私たちは村や街に向かい改善を図るのよ。


「それが訓練になるニョロ?」

「小林さん、語尾に変なのを付けない、私たちは最初にスキルの訓練をするの、ほんとはレベルを上げたいけど、ここにはモンスターはいないから仕方ないわ」


ほんとは、ふたりのスキルは上げる必要は無いわ、ほんとに上げたいのは基本ステータスの方です、だって私たちのスキルは、既に5だから熟練者並みなんです、5になるまでは普通だと数年は死ぬ気で訓練しないとダメなんですよ。


「まぁお城の人もそう言ってるしね、でもスキルの訓練って城でもやってるよね」

「坂田君、あなたも小林さんも本気を出してないでしょ、外なら本気を出せるから限界を見たり、もっと強めの武技も使えるでしょ」

「僕はそれほど強いのを使いたくないよ・・・だって怖いもん」


坂田君は下を見て暗いわ、彼は先生並みに小さくて大人しいから仕方ないの、それなのに力の勇者とかギャップが凄いわ、小林さんは魔法を使いたいって顔に書いてあるわね、私も出来るだけ強めのを使ってみたいのよ。


「工程は決まってるわ、坂田君が畑を耕して小林さんが治癒魔法で土を回復させる、そして私の魔法で雨を降らせたりするんです」


これは一石三鳥の作戦なの、国を建て直しふたりのやる気を上げる、そしてスキルの威力も確認できるって戦法よ、全てが利益になる、本当だったらここに森田君たちも入っていて必殺技の様な武技を見たり、上級の魔法も見れたはずなの、私の魔法は全属性1だからそれほどつよくない、それだけがマイナスに向かってしまったわ。
考えても仕方ないと、私はみんなを連れて近くの村に向かいます、付き人はエイファさんとキキルー伯爵とその騎士さんたちです。


「ここが実験をしてるアサトン村ですか」


坂田君が馬車の窓から顔を出して私たちに言ってきます、子供じゃないんだからはしゃがないって注意して肯定したわ、私たちの目的は畑なので村の先を進んでもらいます、それまでに二人に実験の事を話します。
この世界では食料を育てるのに魔力が要ります、魔石や魔法使いが土に魔力を流したりして栄養にしているんです、でも私はそれ以外も足りていないって思っているの。


「それって肥料とかって事ニョロ?」

「そうよ小林さん、だから森の土を畑に混ぜてもらったの、その結果があれね」


馬車を降りると、そこには葉っぱが凄く生い茂る畑が広がっていました、村人が水を撒いてくています、私たちに気付くと頭を下げてくれました、みんなで手を振って返事をして、葉っぱの下の白い野菜を確認します、ふっくらと良く育っています。
成功しているみたいだと、私はすごくうれしくなったわ、ふたりはそれを見てカブか大根だと思ってるみたい。


「これはてん菜っていうのよ、これを煮込んで砂糖を作るの」


ふたりにそこまでを説明して次の畑に向かいます、そこにはツルが生い茂る畑が広がっていました、ふたりはそれを良く知ってるみたいで植物の名前を口にしたの。


「ジャガイモだ」「ジャガイモニョロ」

「そうよふたりとも、これとさっきの砂糖を混ぜて携帯食を作るろうと思ってるのよ」


ここではジャガイモは悪魔の実として食す事が出来ません、ジャガイモは栄養があるし、生産性も高いから絶対今必要なのにです、私は形を変えて食料にしてしまおうって探して貰ったの、普通には売ってなくて大変でした、おかげでてん菜も見つけることが出来て良かったんだけどね。


「でもおかしいわね、私の情報ではジャガイモの花がチューリップみたいに咲いて、その中心に実が出来るって事だったんだけど、普通に土の中に出来てるわ」


少し土を掘り起こすとジャガイモが沢山育っていました、山で見つけた時、そんな風になっていたと報告がされたんです、私の知ってる育ち方じゃないから実験してるのにって不思議です。
上手くいっているから問題ないって、私は二人に畑を広げてもらう作業に入ってもらったわ、私の仕事はその後だから、もう一つの目的を探しに山に向かいました、でもやはりいません。


「獣が見えないのは広いからだとしても・・・川には魚が見えないわ」


森に入り近くの川に来て、エイファさんを介して兵士の人に魚を探して貰いました、でも予想通り1匹もいません。
養殖出来ないかと来てみましたが、無駄足になってしまいました、エイファさんに戻る事を伝え兵士の人たちを川から戻し帰り支度です、その間に森の音を聞きます。


「鳥の声も聞こえないわ・・・なんだか寂しい森ね」


木の葉がこすれる音がするだけですごく静かです、狩りつくしてしまうとこうなるのは当たり前です、それだけ食料が無かったのだから仕方ないけど、森が死んでしまったみたいでとても悲しいです。
動物も魚も復活させるには時間が掛かります、他から連れてきて少しずつ増やして行くと、私はエイファさんに伝えて村に帰りました。


「魚の骨を肥料に混ぜたりとかしたかったけど、全てが順調にいくわけないわよね」


少しだけガッカリしながらも、成功したモノもあると坂田君たちと合流して作業を進めました。
そしてその日の夜、村の村長と食事会が開かれたんです、今後の実験の話もあって村長はなかなか話の分かる人でした、私の言葉をよく聞いて理解してくれたんです。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

導きの暗黒魔導師

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:10

隠居勇者と聖女の契約 ~魔王を倒したその後のお話~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:434

立派な魔王になる方法

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:64

廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:304

黒髪の聖女は薬師を装う

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:2,579

処理中です...