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2章 宣伝

32話 復讐

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「おうおう、集まってるなチビども」


4時間してついに奴らは来た、いつもは5匹から7匹で定期収穫に来ていた、だが今回は全員で来ているようだ、手間が省けて良かったと心内で喜んだぞ、一番前にいるあいつとの距離がどんどん縮まる、2メートルになると奴は止まり腕を組んでいる、約束のモノを出せと偉そうに言ってきたよ。


「これが今回の麦だ、持っていくがいい」


麦の袋10個を1つずつ頭上に持ち上げて奴らに投げつけた、リーダーのあいつには投げず、後ろの者たちに向かって投げたのだ、他の奴らは焦って受け取り睨んできたよ、奴も我の行動に機嫌を損ねている。


「どういうつもりだチビ!」

「どうもこうもない、もうお前たちの言いなりになんてならないぞ!」


あの者たちから授かった新たな剣を抜いたのだ、それはカタナと呼ばれ我たちの武器に似ていた、名前を【名刀ササニシキ】というらしい、その刀を構え時を待った、奴らに投げつけた袋には麦の他にある細工をしてある、20秒もすればそれが開戦の合図になるだろう。
あいつはそれも知らずに笑っている、後ろのやつらもだ、我はしめしめと闘気を溜め始めたよ。


「笑わせてくれるなチビども!忘れたのか?お前の大事な母様を食ったのをよぉー」


あいつから闘気があふれ出した、前の我ならこれに恐怖しただろう、絶対に勝てないと思うほどの差を感じてな、だが今は違う!奴の方が闘気は高く強いが勝てないレベルではない、それに不意も付ける予定だ、我は刀の刃先を奴に向け言ってやった。


「それがどうした!皆の者行くぞ!」


我の掛け声と共に皆がスキルを発動させた、全員でオーバーブーストを使い力を数倍にさせたのだ、これは数分間しか持たないのでここで一気に打ち倒す、さすがのあいつらもこのスキルにはひるんでいるよ、だがこれだけではない、後数秒でもっとひるんでもらうぞ。


「や、やる気まんまんって訳かよ、いいぜ掛かってこい、あの時の恐怖を思い出させてやる!」


やつが両の手から爪を出し、胸の前で交差させ戦いを宣言した、だがその直後、奴の後ろから大きな爆発が起きたのだ、やつも他の奴らも驚き後ろを見た、我らはその瞬間を待っていた。


「食らえ外道!」

「ぐぬぁぁー!?」


我はあいつの前に飛びカタナを振り下ろした、前の我の剣ならば強靭な毛に負け折れていただろう、だが今回は違った、あいつの片腕を切る事が出来たのだ、あいつは叫び痛がりながら下がっていく、他の者も我らの攻撃を受け深いダメージを負ったんだ。


「どうだ!これが我らの力だ、このまま押し切るぞ」

「させるかよ!グオオオォォォーーー!」


あいつが大きな雄叫びを上げた、最後の悪あがきだと思い我はトドメを刺そうと走った、しかし鉱鎧甲冑の力が弱まり速度が落ち始めたのだ。


「これは!?どういうことだ」

「くくく、オレ様の雄叫び【ライザーハウンド】はな、相手の使用しているスキルを強制的に解除するのさ、お前たちのさっき使ったスキル効果は消えたんだよ!」


あいつの蹴りを我はまともに受け後方に吹っ飛ばされた、幸いカタナで受けたのでそれほどダメージにはなっていない、だがまずいことになった。


「くっオーバーブーストの反動で動きが鈍い、奇襲を最大限成功させる為に使ったのに、このままでは」


周りを見ると奴らを倒している者もいる、だがダメージを与えても立ち上がっている奴らばかりだ、皆動きが鈍いままで剣を構えている、この状態で戦えば必ず負けてしまう、我は何とかしようと頭を働かせた、しかし良い策は浮かばない、その間にも奴が腕の止血をしている。


「オレ様の腕を切ってくれた礼だ、しばらくサンドバッグになってもらうぜ」


あいつがゆっくりと近づいてくる、我は立ち上がりフラフラになりながらもカタナを構えた、あいつだって右腕を失い満身創痍のはずだ。


「しばらくすれば出血で動けなく・・・どうして!?」


我は目を疑ったよ、あいつの腕からは血が出ていなかった、止血しても限度があると思っていた、しかし傷口が盛り上がり凝縮していた、おそらく特殊な止血をしたんだ。


「くくく、これくらいは戦いの基本だ、腕の1本なくても何ら問題はないんだよ!だがお前は違うよなっ!」


あいつが急に速度を上げ我を攻撃してきた、腹部にあいつの左フックを受け上空に飛ばされたんだ、鉱鎧甲冑の衝撃が伝わり痛みを受けた、その衝撃で顔を歪め意識が薄れかけたよ。


「だが、まだ行ける・・・これしきで負けるわけには」

「おいおい、これで終わりだと思うなよチビ」


我が鉱鎧甲冑の向きを変えあいつがいる下を見た、しかしそこにはあいつはいなかった、すぐ目の前にあいつの光る眼があったのだ、我は驚きカタナを振るが空振りに終わる、そして背中に痛みが走った、その後も腹部や腕と全体にダメージを受けた、あいつの連打を浴びていると分かって刀で防御した、名刀のおかげでそこからはダメージを受けなかった、しかしそれは奴を喜ばせるだけだった。


「ははははーーーー!なかなか硬いじゃねぇかよその剣、うれしいぜっ!」

「ぐあっ!?」


あいつの最後の攻撃を刀で受け下降し地面に激突した、なんとか起き上がろうと刀を杖代わりにしようとして倒れた、名刀が折れてしまったんだ、我は心が折れそうになったよ。


「ぐっしかしこんなことで負けるか、前の我なら10回は死ねるダメージだ、ここまで来て逃げるわけにはいかない」


鉱鎧甲冑の中ではバチバチと回路がはじける音がし始めた、我の本体もかなりのダメージを負って流血している、皆が苦戦しているのも見える、幸いなことに鉱鎧甲冑から引きずり出され食べられている者はいない。


「だが時間の問題かもしれない、我の策が仇になった・・・くそっ!」


普通にあのまま戦っていればこんなことにはならなかった、苦戦するだろうがここまでの差は出来なかっただろう、まさかスキルを解除するスキルがあるとは思っていなかった。


「ほう、まだ動けるのかよ、お前の代わりに折れたその剣に感謝するんだな」


バチバチと回路が弾け、甲冑がギシギシと音を立てるが我は立ち上がった、折れたカタナを構えたのだ、あいつは上空から降りてきて余裕の笑みを浮かべている。


「我は負けない!例え刀が折れても心は折れぬ!もうあんな悲劇は繰り返させないぞ」

「ふんっ!じゃあその折れた剣でかかって来いよ、あの時のチビの様に食ってやるぜ」

「きさまあぁー!?」


お母様の事をチビと言われ、我は頭に血が昇って突撃した、奴は笑いながらカタナを躱すと、そのまま体を回転させ左手で鉱鎧甲冑の腹部を貫いたんだ、そのまま我の本体を掴み甲冑から引きずり出した、我はあの時の様に腕を掴まれ高々と頭上に上げられた。


「は、放せケダモノ!」

「くくく、いいぜその表情、そそるねぇ~」


あの時の様に我の体を舐めて来た、だが我はあの時の様にはならない、腕を掴んでるやつの左手に噛みついてやったよ、だが奴は笑っている。


「最後のあがきか・・・無駄な事だな」

「無駄でも諦めない、我は負けない!」

「くくくく、そうかよ・・・あの音が聞こえないのか?」


何を言ってるんだと噛みついたままで睨んだ、奴の目線は我ではなく他を向いていた、噛みついたままでその方向を見たが土煙が起きていたんだ、それが何なのか我はすぐに理解した、噛みついている力だけでなく全身の力が抜けたよ、それほどの土煙が遠くの平原に見えるのだ。


「くくく、分かったか?オレ様の軍隊だ、さっきのライザーハウンドは仲間を呼ぶ為にも使うんだよ、いいかおチビ、戦いってのはな先の先を考えてするもんだ、これで貴様らはおしまいだな」


あいつが笑っている、もう一度噛みついてやりたいがその力が出ない、我はまたしても負けたと力が出ないんだ。


「安心しろ、今後の為にも数匹は生かしておいてやる、だがお前は授業料を払ってもらうぜ、ここで終わりだチビ助」


我の下にはあいつの口が大きく開かれている、奴が手を離し我は落下する、あの時の様に食べられそうだ、助けてくれた母様はもういないと泣きそうだよ。


「あの時の母様の様に我も・・・いや!母様は抵抗しなかった、あれは我たちの為だったんだ」


あの時の事を思い出し、我は力が沸き上がるのを感じた、母様はあの時、我の方を向いて何かをしゃべっていた、何を言っているのかその時はわからなかった、しかし今ならわかる。


「母様の為にも、我は生きる!」

「ぐっぎゃぁぁー!?」


母様はあの時、無抵抗に食べられた、それは残った我たちの為だった、あそこで抵抗していれば他の者たちも食べられてしまっただろう、被害を最小限にする為に自分が犠牲になったんだ。
奴の鼻に力の限りエルボーを浴びせ我はそう確信した、奴は無防備だった鼻を抑え苦しんでいるよ、我は地面落ち動けないが苦しんでる姿を見て笑ってやった。


「いい気味だ、もう何もできないがざまあみろっ!」


もう我はおしまいだ、母様の意思も継げないまま奴らに抵抗してしまった、これで一族を滅びの道を進ませてしまっただろう、奴は苦しんでいるがそれほどダメージはない。
母様は生きてくれと言った、しかし我らはこんな生き方は望まない、最後に苦しんでる姿を見れて満足だ、そう思って仰向けになると目から涙があふれて来たよ。


「あれ?止まらない・・・死ぬのが怖いのかな」


我の心は晴れている、でも涙が止まらなかった、母様の思いに答えられず悔しいのか、これから死ぬのが分かっているからなのかは定かではない、だが涙が止まらないよ。
あいつが我を見つけ、再度捕まれるまで空を見ることにした、きれいな空だと思ったよ。


「くそがぁぁー!よくもオレ様の自慢の鼻をやってくれたな!噛み殺してやる」


奴が鼻を押さえ近づいてくるのを感じた、もう動く力も残っていない、皆を見る為に頭を動かすくらいだ、なんとか皆を逃がしてやりたい、そう思って見ているんだ、しかしそこである事に気づいた、黒い影が奴の部下たちに襲い掛かるのが見えたんだ。
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