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1章 開店

7話 召喚された学生たち

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「うぅ~・・・ここは」


私が目を覚ますと、そこは知らない天井でした、ベッドの上だというのは、掛け布団の感触で分かります、でも家に帰って来た訳じゃないわ、私の知ってる木の板じゃないもの、それに体がだるくて動かないんです。


「目が覚めましたか勇者様」


私は、なんとか動かした手をおでこに当て、どうしてここにいるのかと考えを巡らせたわ、確か家庭科の調理実習をしていたはずなんです、そこまではいつも通りの学校行事をしていました。
頭で考えていると、横からそんな声がしたの、どういう訳か身体は起こせないので顔だけを向けると、そこにはメイド服を着た茶色髪の女性がいたんです、見た目中学生くらいね。


「あなたは?」

「ワタシはエイファと申します、勇者様の召使いをさせていただくことになっています、勇者様は今の状況をお分かりですか?」


私は分からないと頭を振ります、身体もだるくて動かないと伝えたわ、エイファさんはそのままでいる様に言ってくれたの、どうしてここにいるのかも説明してくれたわ、私はそれを聞いて混乱しましたよ。


「異世界召喚?」

「はい、女神アリーネイア様が魔王を倒す為、ここアルテナ国に異世界から5人の勇者を呼びました、その一人があなた様です」


そう言われても私は分かりません、魔王を倒すなんてゲームみたいだとは思いました、だけど実際戦う事が出来るわけありません。
そう思い、天井に顔を向けるとエイファさんの声が続きました。


「他の勇者様にもワタシの様な召使いが付いています、目を覚ましたらご説明する予定です、あなた様が最初でした」

「他の勇者・・・それは誰なのかしら?」


エイファさんに聞いたら、眼鏡を掛けた男女で男性は、短い髪なのに目元を隠せるほど前髪だけ長かったそうです、女性の方は長い黒髪を二つに分けて編んでいる女性、それと茶髪の髪を逆立ててる男性と赤い髪を肩まで伸ばしてる女性らしいわ。


「坂田君に小林さん、それに坂崎に森田ね・・・私のクラスメイトだったらだけど、きっとそうなのよね、他には来ていないかしら?」


エイファさんに聞くと頭を左右に振ったわ、私はそれを聞いてかなりまずいと思ったの、坂田君と小林さんは大人しいの、だから説明すればどうにかなると思います、でも坂崎と森田はきっと調子に乗るわ、担任が匙を投げたほどだもの、学校の成績だって、教師を脅して誤魔化していたの、唯一あいつらに屈していない安室先生がいればと思ったけど、ダメみたい。


「召喚されてから7日間、勇者様たちは眠っていました、それだけ召喚は負担だったと思われます、5人の勇者様が目を覚まし、体長が良くなったならば、国王様との謁見が控えています、その前にあなた様のお名前とステータスの確認をさせてもらってもよろしいですか?」


私は良く分からないけど頷き、吹雪って名前を言いました、エイファさんはそれを確認すると、水晶玉を変な黒いモヤから出しました、私はエイファさんの横に現れたモヤをギョッとして見ました、エイファさんは気にしない感じだけど怖いわよね、取り出した水晶に触るように言ってきたから、私すごく怖くて聞いたのよ。


「へ、平気なのよね?」

「もちろんですよフブキ様、さぁどうぞ」


エイファさんに笑顔で言われ、私は恐る恐る触りました、すると水晶が光りだし、ゲームで出てくるようなステータス欄が水晶の上に現れたんです。


《ステータス》

【名前】織田吹雪
【年齢】16歳
【種族】ヒューマン
【職業】知力の勇者
【レベル】1
【HP】1000【MP】10/1000
【力】500【防御】500
【素早さ】600【魔法抵抗】1000
【魔法】
火・水・風・土・氷(各レベル1)

【スキル】
なし
【ユニークスキル】
無限収納
異世界の英知

【称号】
召喚されし者
小さい物好き


「素晴らしいですね!?さすが勇者様」


エイファさんがステータスを見て、凄く喜んでいます、私は良く分からなかったわ、でもユニークスキルが発動したのか、情報が勝手に頭に流れ込んできたわよ。
急な負荷で、頭がグワングワンして気持ち悪くなったわ。


「うぅ~魔法の使い方が分かる様になったわ、それにこの世界の事も・・・これが英知ってやつなのね」


私が欲しいと思った情報がどんどん頭に入ってきます、一番欲しい戻る方法は入っていませんけどね。
私はちょっとガッカリしながらエイファさんに聞いてみたんですよ。


「エイファさん、勇者5人だけでは魔王には勝てないわ、戦力になる人を集める様に国王様に言ってちょうだい、それと国の戦力と出来れば周りの国のもお願いね」

「は、はい!」


異世界の英知では、そこまで細かくは分かりません、国の名前や貨幣など基本知識だけみたいなんです、どれでも幅広く分かると言う事です。


「私がどんどん知識を蓄えれば、それだけ勝利に近づくわ、戻る方法だって見つかるかもしれない、私はこんなところでのんびりしてられないのよ」


私には夢があります、それは病気のお母さんを治す事、それが今知識としてあります、私を向かい入れてくれたお母さんの為に私はいるのよ、もう後は作るだけと言う状態なの、じっとなんてしてられません。


「でも体は動かない、魔力ってのが無くなってるんだわ、エイファさんに指示を出す順番を誤ったわね」


食事を先にすれば回復が早まります、それを先にすればよかったと私は後悔しました、そしてしばらくして本を持ったエイファさんと軍服の人が来たんです。
私はそれを見てすぐに分かったわ、スキルが発動してなくても分かるわよね。


「知力の勇者フブキ様とはそなたか?」

「そうよ、寝室で失礼するわね、私はまだ動けないの、出来れば軽い食事を用意してくれないかしら?」


私がエイファさんを見ながら言うと、エイファさんが後ろに下がって部屋を出ました、位の高そうな軍服の男性が目配せしたみたいね。


「それで、国の偉い人が来たって事は、私に教えてくれますよね?」

「そうだな、俺はアルテナ国の参謀をしている、ボンザ・キキルー伯爵だ」


男性が握手を求めて来たので、私はなんとか手を出してそれに答えました、短い金髪がとても綺麗だと心の中だけで思います、もちろん顔もかなり美形だけど言いません。


「じゃあまず、両方の戦力を教えてくださいキキルー伯爵、正直私は敵の戦力も知らないし、死にたくないです」


当然の意見を言いました、伯爵も分かっているようで頷いています、そしてこちらの戦力は冒険者と言う傭兵が1000人と国の兵士が1万だそうです。


「ちょっと少なくないかしら?」

「これでも多い方だぞ?隣のボボルザークは3000しかいない、冒険者は5000人と多いがな」


キキルー伯爵が言うには、その国にはダンジョンがあり冒険者が集まるんだそうです、私はそれでも少ないと思いました。


「それで、肝心の魔王の戦力ですけど」


私は、そこをまずはっきりさせようとしました、でも伯爵は黙っています、そして出た言葉はただ一言「分からない」それだけです。


「どういうことですかそれ、私たちに死ねと言ってるんですか?」

「そうは言っていない、ただ今まで調べる必要が無かった、食糧難以外は平和だったのだよ・・・しかしアリーネイア様からの信託があり我々も慌てている、そなたたちが来たのが兆しだというのだ、だからこちらも準備を始めたばかりなんだ」


そう言われて私は納得しました、きっとアリーネイアって神様が戦いを予知したんでしょう、そして準備をする為に私たちが来た、それならと私も進めます。


「じゃあ魔王軍と戦っている国はありますか?どこかとずっと小競合いをしてるとか」


相手の情報を少しでも欲しいと私は聞いてみました、ハイヒューマンだけが大陸を渡り戦っているそうです。
私の知識でこの世界の大陸の状況はわかります、まず大陸は全部で5つ、小さな島はあるけど今は数にいれません、中心の一番大きな大陸を魔族が所有し、北大陸に獣人が住み、西がエルフなどの精霊族、東が問題のハイヒューマンです、私がいるのは残った南大陸という訳よ。
ハイヒューマンは自分たちの存在が上と見てて、大きな大陸を所有してる魔族を嫌ってるの、だから魔王軍といつも小競合いを起こしています。


「我々ヒューマンはあまり力を入れていない、ハイヒューマンだけが進軍にかなりの力を入れている、確か近々大きな作戦をすると聞いたな」

「なるほど、ハイヒューマンとの接触って」


私はそこまで言って止めました、伯爵の顔色を見てダメだと分かったんです、そして知識でも分かりました。
ハイヒューマンとは、この世界で誰よりも上の存在です、神に近いとまで言われ、各種族は毎月貢物を渡してます、だからこちらが要望なんか出来ないの、その倍を追及してくる人達だからね。


「分かってくれるか?」

「はい、私は戦争が始まるまで力を付けたいと思います、手伝ってくださいねキキルー伯爵」


私は笑顔で聞きました、キキルー伯爵はちょっと顔を赤くしたように見えたけど、直ぐに笑顔になり頷いてくれましたよ。
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