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3章 商品チート

58話 聖女の失態

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これはとても困りました。
そう思ったワタクシは、問題の第3聖女【ミサエル・フォン・アスレーン】を呼び出したんですの。


「お呼びでしょうか、大聖女レイシャルト・フォン・アスレーン様」
「長旅ご苦労様でしたミサエル」
「いえ、いつもの巡礼なので、とても楽しい旅でしたわ」
「そうですか・・・一つ聞きたいのですが、どうして職人を買ったのですか?」


とても問題な行為で、謝罪の言葉が欲しかったのですが、ミサエルは誇らしく語って来て、リイル商会からの貢物と言ってきました。
ですが、お話の内容を聞く限り、そういった流れで渡されたわけではなく、どうしてあの6人だったのかと警告したわ。


「本人たちから立候補されたからですわレイシャルト様」
「それが問題なのですわよミサエル、あなたは契約内容を伝えてそれに立候補させたのですわよね」
「その通りですが、それがどうして問題なのですか?」
「あなたは、その契約内容に反してしまったのです、その意味が分かりますか?」


反していてもそれを交わした相手は既に奴隷と言って来て、更にまずい事が判明しましたわ。
契約内容を見れば、それが反故にされるのは誰でも分かり、直ぐにでも謝罪しなければなりません。


「まぁ良いでしょう、あなたは12番目まで降格です」
「そ、そんなレイシャルト様」
「あなたはワタクシの作戦を無駄にしたのです、最下級まで降格するだけにしたのは恩情ですのよ」
「り、理由を教えてください、あの奴隷たちを使えば、訓練なんて向こうに頼まなくても良いのですよ」


それが大きな間違いで、あの技術には先があるのだと、ワタクシはやさぁ~しく注意したのです。
これ以上話すのもイヤだから言ったのに、ミサエルはそれでも下がらず、降格は無しにしてほしいと懇願してきましたわ。


「はぁ~・・・良いですかミサエル、あなたはいつもの寄付がどうして成り立つのか理解していますか?」
「それは・・・ワタクシたちが聖女だから」
「そうなのですよミサエル、ワタクシたちは神に選ばれた人を超越した存在で、嘘を言ってはいけないのです」


世界各国の巡礼もその一つで、聖女の訓練をしながら浄化を行ってきました。
浄化は個人差がありますが、確かに浄化は行っていて、だからこそ寄付も集まるのです。


「でも、あなたは完全なる嘘の約束を交わしてしまった、元から奴隷の者を買えば良かったのです」
「で、ですがレイシャルト様」
「あなたは失敗したのですミサエル、それを良く考えなさい」


下がる様に伝え、やっとミサエルは部屋を出て行きましたが、表情は明らかに不満で一杯でしたわ。
これからどうするのか、良く検討しなくてはならなくなり、第1と2位の聖女を呼んだのです。


「「お呼びですかレイシャルト様」」
「お話は聞いたかしら?」
「「はいレイシャルト様」」


ふたりの答えを聞き、冷静でいるから安心しましたのよ。
これからどうするのかを聞いたら、第1位のレオン・フォン・アスレーンは会話の要求で、第2位のシャカルフォン・アスレーンは、謝罪するように言ってきましたの。


「こちらが悪いと言う事ですね」
「その通りですレイシャルト様、それは否定できない事実です」
「そうだぜレイシャルト様、ここは謝るべきだぜ」
「相手は小さな商会ですのよ」


それは関係ないと言ってきますが、話し合いも謝罪も相手からするべき事なのです。
聖法王国から行ってはならない、ふたりにはそう伝えましたわ。


「ミサエルを降格させたくらいじゃダメだぜレイシャルト様」
「シャカル、相手は対等ではないのですよ」
「そう言う問題じゃねぇ、善意があるかどうかだ」


それは分かりますが、たかが6人の市民をやり取りしただけなので、謝罪ではなく資金提供で話を纏めようと考えました。
シャカルにその6人を保護するように伝え、念の為に勇者を連れて来る事をレオンに命令したのです。


「レイシャルト様、勇者ミリガルは今、礼拝中ですよ」
「レオン、ワタクシが知らないとでも思ったのですか、早く礼拝と言う虐待を止めさせなさい」
「わかりました、直ぐに連れてきます」


万年発情期の勇者を使う時が来て喜ばしいのか、それとも最悪な事態なのか、とても悩ましい事ですが、うまく行けば全てを手にする事が出来そうで嬉しくなりました。
たかが一国の小規模商会が相手で、ワタクシはとても高揚していたのです。


「レイシャルト様、あまり相手を侮らない方が良いぜ」
「それは、あなたのいつもの勘かしらシャカル」
「その通りだぜレイシャルト様、とても嫌な感じがする」
「片隅に留めておきますわシャカル」


シャカルも下がって行き、ワタクシは新たに3位に上がった、元4位の聖女ミサナ・フォン・アスレーンを呼び、商会の長をここに招待するように伝えました。
ミサナも、3位に上がった事は喜んでいましたが、ミサエルの事は残念に感じていましたわ。


「彼女は焦っていたのですレイシャルト様」
「そうですわね、欲に純粋だったのですわね」
「そうです、ですので善きご判断をお願いしますレイシャルト様」
「ええそうですわね・・・でも、相手の出方次第かもしれません」


相手がつつましくあるのならば、ワタクシもそれ相応に対処しますが、そうでないのなら身分をわきまえさせなければなりせん。
その為になら、力でも何でも見せつける準備をしましたが、それから数日後に商会からの使者が来た事が報告され、ワタクシは驚いたのです。


「どうしてこんなに早く、相手はリイル本人ですか?」
「いえ、レイシャルト様も面識のある方で、クラーシュ様です」
「な、なんですって!」


商会の長ではなく、代表風情を寄こして来たのが分かり、ワタクシはもう話す気が無くなりましたわ。
でも、相手に宣戦布告をしなくてはなりませんし、会う事にしたのです。


「レイシャルト様、危険ではありませんか?」
「たかが小娘1人でしょう、何の問題もありませんわ」
「ですが、相手は未知の技術を持った相手です、護衛は必要です」


その為に、レオンに勇者を準備させていて準備万端です。
応接室に向かわせた代表には、しばらく待ってもらい、レオンと勇者が来るのを待ちましたわ。


「あのダメ勇者はまだ来ないのですか?」
「今、聖剣の準備をしています、もうしばらくお待ちくださいレイシャルト様」
「まったく、待たせて苛立ちを誘うのは、相手だけで良いのですよ」
「その間、お茶でもいかがですか?」


シスターにお茶を貰い、ワタクシは待つことにしましたが、レオンと勇者が現れたのは、それから1時間後でしたのよ。
いったい何をしていたのか、聞くのもイヤになる程に、一緒に来たレオンの首筋にその後が残っていたわ。


「まったく、ほんとに頼みましたよ」
「安心しろよレイシャルト様、俺の目に掛かればどんな女もイチコロだ」
「そう言う事の為に呼んだのではありませんが、最悪はそうして下さい」
「任せてくれ、成功したらあんたも相手をしてくれよな」


それは絶対にお断りだし、聖女に魅了の邪眼は効かないのです。
そう言っても、ミリガルは目の力を使うのを止めず、レオンに注意させましたわ。


「良いじゃねぇかレオン、妬かなくても後でまた相手してやる」
「それは良いから、しっかりお仕事をしなさい」
「ああ分かってる、褒美の相手頼むぜ」
「分かってるわ、シャカルを向かわせるわよ」


シャカルはずっと拒否していて、レオンも困っているのだけど、勇者の相手はそれだけ面倒だったのです。
シャカルは今だに誰とも相手をしていませんし、それが勇者のお眼鏡に叶った様で、いつもねだって来ていました。


「ワタクシはダメですが、成功させたらワタクシからも指令を出しますわ」
「やったぜ、それなら俄然やる気が出て来た」
「頼みましたわよ」


やっと話が決まり、応接室に向かったのですが、ワタクシの後ろではレオンと勇者がイチャ付いていました。
でも、この窮地を越えれば何事もなく終わるので、成功するのが楽しみでしたわ。
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