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3章 商品チート

50話 聖女の裏の顔

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「今頃、クラーシュたちはラインハット国を出たかしら?」


ワタシは、リケイルの隣に座って馬車の外を眺めていました。
学園のお祭りも終わり、直ぐに帰路についたんだけど、色々な事が凄い速度で動いてるのが伝わって来たわ。


「ねぇリケイル、またいなくならないわよね?」
「カーリーどうしたの突然」
「ワタシたちが7つ星になった時って、色々な事が変わったじゃない、今の状態に似て怖いのよ」


あの時とは違う事は沢山あるし、違うのは分かっているけど、どうしても気になってしまったわ。
そんな不安な気持ちを抱いたワタシは、リケイルに肩を寄せられ抱きしめてもらって落ち着いたのよ。


「約束するよ、いなくなることは無いよ」
「本当に?」
「うん、僕には大切なモノが出来たからね」


前はそうではなかったと、不安だったことを聞いたわ。
確かにそうだったのは、昔の事を思い出して納得はしたけど、それでも心配になったのよ。


「まだ心配そうだねカーリー」
「それはそうよ・・・ダンジョンに入っている間にいなくなってたのよ」
「まぁそうだね・・・どうしたら不安が無くなるのかな?」


そんな質問が困った顔のリケイルから来て、ワタシはあるお願いをしました。
それを聞いて、リケイルは凄く赤くなってしまい、あまり言う事じゃないとか注意して来たわ。


「こんな事リケイルにしか言わないわよ、分かるでしょ」
「そ、そうかもだけど、そういったお誘いはちょっと」
「そう言うけどねリケイル、あなたがいつまでも子供を持っていないから、クラーシュたちも困ってるのよ」
「うぇっ!?」


変な声を上げて驚くリケイルは、真っ赤になって否定してきます。
でも、これは本当の事で、主よりも先にとか考えてないそうです。


「もしかして、結婚とかの申請が無いのって」
「そうよリケイル、好きな人はいるみたいだけど、先に子供を作らない為に待っているの」
「そ、そんな事しなくても良いのに」
「みんなはね、あなたを想っているのよ」


慕われていて、リケイルの幸せを皆が願っていると伝えたわ。
最初の奴隷メンバーは、好きな人はいないらしいのだけど、他の人からは相談されているのを聞いていたわ。


「だからねリケイル、子供を作りましょうよ」
「こ、子作りって、ちゃんとしてるじゃないか」
「それにしても少ないわ、だからもっと本格的にしましょうよ」


7日に2回くらいで、正直我慢しているのが分かっていました。
忙しいのもあるけど、ワタシに無理をさせない為だから、これからはそうしましょうとお願いしたわ。


「カーリーの不安もそう言った事が理由なんだね」
「そうね、ずっと一緒だったとは言っても、あまり冷めてるとね」
「分かったよカーリー」


戻ってからと言うのが決まり、ワタシはとっても嬉しかったのだけど、ジュダルラに戻ったワタシたちを待っていた人がいて、応接室で対応する事になったのよ。
それが無ければ、直ぐにでもお風呂に入ってベッドに行ったのにっと、ワタシは同席してイライラしていましたよ。


「それで、僕にどのような御用ですか?」
「まずは名乗りましょう、ワタクシは【ミサエル・フォン・アスレーン】です」
「アスレーンと言いますと、もしかして聖女様ですか?」
「ご名答です、ワタクシは今いる聖女の3位にいます」


聖女でも順位を付けていて、1位の女性が大聖女に上がるそうなんですけど、それとは関係なく、凄く嫌な気配を受けていたわ。
そして、問題のお話の内容ですけど、職員の引き抜きでした。


「数名の引き抜きですか」
「はい、ワタクシたちの国で職人として頑張ってもらいます」
「どうして引き抜き何ですかね?」


隣で聞いていて、ワタシも確かにっと思ってしまったわ。
商会の店を建てると言う手もあり、その方が友好関係も築けて後々楽だろうとリケイルが伝えたのよ。


「簡単です、そこまでする気が無いからですわ」
「それは、職人から情報を聞き出すだけと言う事ですか?」
「さぁどうでしょうか」


その答えで、聖女がそのつもりなのが分かったわ。
そんな答えを聞いて、リケイルが了承するわけもなく、断ってくれたわ。


「あなたが断っても、本人たちは了承しましたわよ」
「なっ!」
「ここに来たばかりの数名らしいのですが、給金が10倍と聞いて喜んでいました」
「お前、そんな事して良いと思ってるのか」


リケイルがとても怒ってしまい、殺気が聖女に降りかかりますが、流石は聖女と言う事なのか、余裕の態度でイエスと答えて来たのよ。
そして、人は神の為に生きていて、聖女に尽くすのは当然とか言って来たわ。


「だから、捨てるってのか」
「それが宿命です」
「そんな言葉で済ませるんじゃない」


リケイルはそう言ったけど、聖女は席を立ちもう決まった事と勝ち誇っていました。
聖女が部屋から出ると、リケイルはとても落ち込んでいて、誰が抜けようとしているのかをサイザを呼んで聞いていました。


「そうか、村から来た人達か」
「はい、止めたけど、ダメでした」
「何か不満でもあったのかな?」
「いえ、大金に目が眩んでしまった様です」


リケイルがそれを聞いて、目先の大金に誘われてしまって、とても悲しそうでした。
サイザに脱退する6人を呼んでもらったけど、その人達は嬉しそうで、向こうでも頑張ると言って来たわ。


「君たち、考え直す気は無いかな?」
「どうしてそんな事を言うんですか?」
「君たちはまだまだ伸びるんだ、だからここでもっと腕を磨いてほしいんだよ」


リケイルの言っている事は本当だったけど、給金は変わらないのだから拒否されたわ。
職人としての腕を上げれば給金は上がるけど、10倍は貰えないから当然ですけど、それにしても罠なのは言うまでもないのよ。


「向こうは、君たちが欲しいんじゃない、君たちの情報が欲しいんだよ、捨てられてしまう」
「何を言ってるんですかリイルさん」
「そうっすよ、聖女様がそんな事をするわけないでしょ」
「いいや、彼女の国はそうするよ、現にラインハット国とも友好関係は築いてない」


聖法王国は信じてはいけないと伝えると、彼らは怒りだしてしまい、ペンダントを床にたたきつけて部屋を出て行きました。
それだけ聖女に説得されていたようで、もう助けてあげられなかったんです。


「リケイル、仕方ないわ」
「奴隷になってないから、彼らは自由に商会を抜けられる、そこを突かれてしまったよカーリー」
「そんな事は無いわ、だって他の人たちは残ってるじゃない」


冒険者の方も勧誘はあったはずだし、村人からの職人の全員は取られていません。
お金に目が眩み分かっていなかったと、その日は泣いているリケイルと一緒に寝たのよ。
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