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2章 成長チート

37話 バーバルナさんの選択

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「ここですかなリイル殿」


僕は頷き、屋敷に作った地下室に降りて行きました。
そこには、一月前くらいに襲撃して来た子爵がいて、バーバルナさんに引き渡す事になったんだ。


「食事は最小限でしたので、きっと今頃は死んだ目をしてますよ」
「それは仕方ないですな、なにせ国王陛下に反抗しただけでなく、ベルーナ様を侮辱したのですからな」
「まったくですね」


自分の悪さが原因なのにと、バーバルナさんとため息を付きました。
牢屋に繋がる扉を開けると、加工石の明かりを付けて問題の男に視線を向け、かなりガリガリになっている子爵がいました。


「ハンダバル子爵、起きてください」
「うぅ~・・・貴様は、リイルっ!」
「まだまだ元気そうですね」
「何を、言うか、ここから、出せ」


出すわけがないと言いたいけど、バーバルナさんに引き渡すのでそうなるでしょう。
でも、その前にバーバルナさんが確認したい事がある様で、僕の横に来て子爵を睨んだよ。


「久しいなハンダバル子爵」
「誰だお前は」
「ワシの顔を忘れるとは、だからお主はこんなに落ちぶれるのだ」
「な、なんだと・・・お、お前はバーバルナか」


やっと分かったかと、バーバルナさんは奴隷商として出会っている事を説明したよ。
僕は横で聞いてて、お城の方ではないんだねっと思ったけど、子爵がそんな所に行けるわけないと黙っていたよ。


「たかが奴隷商風情が」
「そうかな?そなたと一緒にリイル商会を襲撃した者たちは、皆奴隷になって働いているぞ」
「な、なんだと」


子爵が僕を睨んでくるけど、せっかくの人手だから有効に使わせてもらっているだけで、子爵を捕らえていたのは貴族だからです。
バーバルナさんは、そんな子爵に処刑を言い渡したけど、当然子爵は命乞いして来たね。


「死にたくないか?」
「と、当然だ!頼む助けてくれ」
「それなら、ワシの奴隷となれ」
「そ、それは!」


かなり嫌がった子爵だけど、しばらく考えて了承して来たよ。
でも、僕はちょっと心配になったので、バーバルナさんに質問したんだ。


「バーバルナさん、良いんですか?反逆者ですよ」
「子爵程度ならどうとでもなりますわい、それよりもこやつの家を取り込んだ方がワシの為になる」
「元ギルマスの財産と同じですね」
「そうじゃな、新たにギルマスになったフォーミ殿も、そのおかげで助かっているのじゃったな」


商人の数名が逃げた話を聞いていますが、おかげで助かってもいました。
攻めてこないので放置していますが、どう動くのかは分かり切っていて、その為にも味方の地盤を固める方に重点を置いていたんだよ。


「さて、こやつはワシが貰うが、それで構わぬのだなリイル殿」
「勿論です、領主様もその方が良いと言いますよね?」
「そうじゃな、ベルーナ様にはまだ早いですな」


悪意などが分かる様に教育するのが僕のお役目で、学園にはそれに近い争いが渦巻いていると、バーバルナさんはとても心配していて、親の様だと思ったよ。
その気持ちが分かるから僕も賛成していて、学園までに教えようと考えていました。


「わ、ワシはもう終わりなのか」
「ハンダバル、そなたは領地で悪さをしていた時点で終わっていたのじゃよ」
「そんな事はない、ワシは領地を良くする為に」


税を取って他の事に回していたと言って来るハンダバル子爵は、全然反省していなくて、その為に村では餓死者が出ていたのにひどすぎると、僕は聞いてて怒りが込み上げて来たよ。


「そなたは口をきくな、リイル殿が不愉快になるではないか」
「ぐっ!」


バーバルナさんがハンダバル子爵を殴ってくれたから良かったけど、そうでなかったら僕はもっとひどく殴っていました。


「すまんなリイル殿」
「仕方ないです、奴隷契約はお店でないと出来ませんからね」
「そなたがしても良いのじゃが、そう言う訳にもいかんのだろうな」
「はい、僕にも嫌な事はあります」


それほどに怒りを持っているのは、商人たちから聞いた話があるからで、こいつは村人を奴隷としてとても安い値段で売っていたんだ。
奴隷として村人が落ちるのは、お金を村に残す為の最後の手で、そこまでさせた事にも怒りを覚えるのに、更にそれを値切らせたことが更に許せません。


「出来るだけ苦しめてくださいね」
「分かっておるよリイル殿、こやつの今の状態を見れば、そなたの怒りは分かる」


それだけギリギリの食事しか与えていなかったし、それでも元気なのはバーバルナさんに引き渡しが決まったからでした。
約束をしてくれたバーバルナさんを玄関で見送り、僕は姫様に何処までを教えようか考えてしまった。


「上流階級の派閥とか正直分からないけど、言葉と考えてる事が違うのは当然あるよね」


婚約などもそういった時に決められるわけで、僕は本音と建前の違いを考えました。
そして、発展し始めている国の事を知っているのかの違いを想定し、教本を作って行きましたよ。


「探りを入れて来る場合は、やっぱり世間話から入って来て、相手はコソコソっと来るよね」


その例題として、僕は自分の商品を使って姫様に当ててもらおうと決めたんです。
姫様も楽しくなるように、メイドさんとのお喋りも取り入れようと、お菓子も準備して見ました。


「メイドさんは僕をかなり警戒していたし、丁度良いかな」


毒味もしてくれるだろうし、きっと気に入ってくれると、アイテムボックスにしまって行きます。
偽物を当てた姫様ですから、きっと少しの教育でやり遂げると、かなり期待して次の日を迎え、僕はあれ~っと思ってしまったよ。


「おっかしいな、今の時間はランニングしてるはずなんだけど」


護衛の兵士たちが一緒のはずなのに、屋敷の庭には誰もいませんでした。
姫様と面会して4日が経っているので、もしかして止めてしまったのかと、バーバルナさんの部屋に向かいましたよ。


「バーバルナさん」
「おおリイル殿、丁度今奴隷契約が終わった所ですぞ」
「そんなのは良いんですよ、姫様の訓練が中断されてます、どういうことですか」
「ああ~それですか・・・姫様は飽きっぽいお方ですからな、もう止めてしまったのでしょう」


そんなに簡単に言わないで欲しかったけど、それなら僕にも考えがあるので、予定を変更してちょっと絡め手を使う事にしたんだ。
丁度お菓子もありますし、バーバルナさんに内容を伝えました。


「ご褒美作戦ですか」
「そうです、前の時もそれらしいことはしたんですが、今回は目の前に現物を見せます」
「なるほど、それは効果的ですな」


やってしまえと言う感じに見えるバーバルナさんの表情は、僕と同じに黒い笑顔に見え、僕は見ていろっと姫様の部屋に向かったんだよ。
そして、部屋の扉をノックすると、メイドさんが睨みながら少しだけ扉を開けて来たよ。


「何の用ですか?」
「すみません、ベルーナ様のお勉強に来たんですけど」
「そうですか、姫様は今ご機嫌がよろしくありませんから、しばらくお待ちください」


いきなりの先制攻撃に、僕は仕方ないと閉められた扉の前で調理を始める事にしました。
加工石はこういった時に有効で、見ていろっとニヤリとしたよ。
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