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2章 成長チート

29話 手紙が届いて

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「つ、遂に来たか」


オレは待ってましたと、カーリー殿から送られてきた荷物から手紙を取り出し開けた。
しかし、そこにはとんでもない事が最初に書かれていて、差出人がカーリー殿でない事が分かったんだ。


「リケイル殿から直に来ているのか」


何故リケイル殿から?っと先を読み始めるたが、やはりそうかと思う内容にちょっと胃が痛くなってくる。
戻って来てくれない、それは当然だがとても困った。


「これは、ハチミツ酒だけでも・・・おおっ!それは今後も支援してくれると言うのか」


手紙には、困るだろうから品物は少量でも送る事が書かれていて、その代わりと言う内容があったから、そこを読んであいつらを呼ぶことになった。
職員に連れてこられたアモスは、ボロボロに薄汚れていて前の面影はない。


「また随分ボロボロだな」
「仕方ないですよギルマス、この人たち結局ほとんど利益になっていません」
「そうだったな」


あの事件から3月、リゼたちが根を上げてから1月は経っていて、あれを入れなければ稼いだ額が微々で利益になっていない。
結局アモスの装備は、整備に出した際に壊してしまった事になり、アモスには金貨10枚が手渡され、残りをリゼたちが秘密裏に懐に入れ、そのおかげで技術者が開発に力を注いでいる。


「まぁそれもしばらく実現できないが、成功すれば良いと言う話だ」


オレはアモスたちを見下ろし、リケイル殿が見つかったことを伝えた。
勿論、謝罪の事を話したらアモスは嫌がったが、この為に生かしているわけだし、何としても技術を手に入れたいんだ。


「リケイル殿に謝罪し、そのまま奴隷となり力を戻せ」
「「「なっ!?」」」
「向こうのダンジョンで利益を得てこちらに送るんだ、お前たちにはもうそれしか道はない」


普通の装備では、3つ星クエストでもギリギリなのを説明し、いかにリケイル殿の指示が力になっていたかを分からせた。
どんなに嫌がられても、そこで命を取られても良いから行けと命令した。


「い、嫌よ、死にたくないわ」
「シューリ、このまま借金を返せなければ、どのみち奴隷に落ちるんだぞ、悪い主に当たれば死よりも苦しい生活が待っている」
「そ、そんな」


今奴隷になっていないのは王子の恩情で、本当ならあの時点で処刑されている。
それもこれも、リケイル殿を留める道具になるかと思われていたからで、ここで使えないのであれば処刑が待ってて、その道しかないと宣告した訳だ。


「自らいかないのであれば、このまま奴隷にしてから行かせるだけだ」
「い、嫌よっ!奴隷なんて」
「こいつだっ!ギルマス、こいつだけ奴隷にしてくれ」


リゼがアモスをワタシの方に蹴り飛ばしてくるが、何度も言うように連帯責任だ。
これは演技で、他の2PT同様心を入れ替え少しずつでも利益を納めていたが、その2人も主力が抜けてはいちからやり直すしかない。


「ギルマス、もう面倒ですよ」
「そうだな、奴隷にしてしまうか」
「「ちょっと待って」」


リゼとシューリが止めて来て、ナイス演技と思いつつ行くと言って来たのを了承した。
アモスは何も言わないが、ふたりに頭を押さえられて頷かされていたよ。


「分かった、準備して直ぐに行くんだな」
「「分かりました」」


3人が部屋を出て行き、職員のデートリマが良いのかと聞いて来た。
あの感じだと逃げるかもしれないのは予想出来るが、その時はアモスだけが処罰されるだけで、国の監視者が暗殺して終わりだ。


「そ、そうだったのですか」
「当然だろう、あいつが首謀者で装備を全て国に納めたから、借金はほとんど無くなっている、しかしリケイル殿との交渉材料になるなら、借金関係なく行かせるんだ」
「でも、リケイル殿に嫌な思いを抱かせるんじゃ」
「その為の奴隷契約だ、煮るなり焼くなり好きにしてもらうのさ」


鬱憤を晴らして貰い、今後の交渉に生かすしかない。
早速リケイル殿のお願いを王子に知らせる為、ワタシは手紙を書き酒と化粧品をデートリマに差し出した。


「デートリマ、これを王城に届けてくれ」
「分かりました」
「頼んだぞ、それが成功しないと支援が得られないからな」
「そ、そんなに重要なんですか」


隣の国との友好関係を強化し、ダンジョン都市ジュダルラの発展に協力する事を約束させる。
あそこは今、冒険者ギルドのマスターと領主が使えないらしく、リケイル殿の手紙に何とかしてほしいと、交換条件で要望された。


「ダンジョン都市なのにですか?」
「ああ、あそこは国自体が弱小でな、力のある貴族もそんなにいないのさ」
「でも、ダンジョン都市と言えば利益が得られることで有名ですよね」
「デートリマ、それには色々と条件が必要だ」


それはなに?っと分かっていないが、ダンジョンが何処まで続いているかによると教えた。
利益にするには、最低でも40階は欲しいが、あそこは20階も制覇していないダンジョンで、下手をするとそこで終わりと言う最悪な状況も考えられた。


「そこを懸念して、あの国は金を掛けていなかった」
「で、でも調査だけなら、強い冒険者を一度雇えば」
「まぁそうだが、初見で出来るだけ調査をしてほしいと依頼を出したら、上位の冒険者はかなり吹っ掛けて来るぞ」
「ああ~それは確かに渋りますね」


最低でも金貨100枚は欲しいと言われ、費用は全てこちら持ちで、あの国にはそんな上位の冒険者はいない。
他国から呼ぶとなると更に金がかかり、そこまでして20階で終わりだったらかなりの損失だ。


「だが、この国が注視したら、それだけで色々な所に手を回す事になり、財布のヒモも緩むんだ」
「リケイルさんって、ほんとにすごい方なんですね」
「ああ、こちらが断らないのが分かっているから、そんな無茶な要望もして来る訳だが、前金としてこれらが届いた訳から、それだけで前向きになるしかない」
「それって、お酒と石鹸ですか?」


ただの酒や石鹸ではなく、リケイル殿が特別に作った最高品質の石鹸と酒【精霊のハチミツ酒】だ。
化粧品も入っているが、それはデートリマにも言えないので、王子に酒を1本渡すようにデートリマに伝えたが、そんなに美味しいのかとジッと見て来たよ。


「な、なんだよ」
「そっちの1本、ギルマスが頂くのですか?石鹸はダメでもそっちなら」
「分かったよ、お前も飲みたいんだな」
「ありがとうございます、じゃあ行ってきますね」


ちゃっかりしているが、あの味を知ったらファンになるのは必然で、これがあるだけでこの国が助かったのは言うまでもない。
他の品も送ってくれる約束も書かれていたので安心はしたんだが、迅速にこなす為にも誰かを向かわせるべきと考えた。


「そうすると、デートリマを推薦するとして、冒険者はあいつらだな」


かなりの実力になったのを見せたいとも言っていたし、これで何とかると少しは肩の荷が降りたんだ。
デートリマもあの味を知ったなら、何も言わずに協力してくれるだろうと、酒を飲む時にお願いをしてみようと思った。
出来る事なら、1本全てを自分で飲みたいが、これもまた必要と諦めたよ。
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