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1章 新たな人生

20話 リイルの店に行ってビックリ

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「これがリイルの店か」


先頭のカリーナは、正面の2階建てのお店を見てちょっと勘違いしてて、わたしは信じられないと頭を押さえたの。
確かに正面の大きな建物はリイル君のお店なんだけど、それは隣に建っている建物もそうだったのよ。


「カリーナ、その両隣もそう」
「そ、そうなのかアミラ」
「うん」
「リイル君が言ってたじゃん、ちゃんと聞こうよカリーナ」


ジェシルとアミラはそれほどでもないみたいだけど、どうしてそんなに落ち着いていられるのかと言いたいわ。
商会を作ったと報告を聞いて来てみたけど、まさかこれほどに大きいとは思わなかったの。


「5つの建物って聞いたから、凄く小さいと思ったのに、これ全部とか信じられない」


どれだけの費用が掛かったのか、今のわたしでも分かってしまう程の金額で、店に入って更にビックリです。
ダンジョンで手に入る武器よりも上等な品が並んでいて、ほんとにビックリです。


「すげぇ、ミスリルナックルがあるぜ」
「魔法の杖も沢山」
「ほんと、凄いね」


流石のみんなも動揺して来て、隣のお店もそうなのかと騒ぎ始めたから止めました。
きっと同じだけど騒いだら迷惑なので、リイル君を呼んでもらうように店員に伝えたわ。


「あなた達が獅子の牙の方たちですね」
「ええ、聞いていたのかしら?」
「勿論でございます、他のお店4軒にもリイル様は伝えていました、どうぞこちらです」


奥に通されたわたしたちは、5軒のお店が裏で繋がっている事を知り、奥の部屋でリイル君が待っていたわ。
わたしたちは向かいの椅子に座り、どういうことなのかを聞いて、直ぐに納得したわ。


「商会を立ち上げたのはそう言う意図があったのね」
「うん、だからみんなも勧誘したくて呼んだんだ」
「嬉しい申し出だけど、わたしたちまだあなたに言ってない事が」
「それって、学校を退学した事かな?」


どうしてそれを知っているのか、それは学校を卒業した生徒たちを雇ったからだったわ。
でも、それなら余計会いたくないから断ったのよ。


「安心してよルーシェ、みんなはその時よりも強くなってて、彼らはそれを求めてここに来たんだ、恥じる事はないよ」
「そ、そうだったの?」
「うん、みんなが10階のボスを倒した噂を聞いたから、自分たちも倒せると思ったんだ」


でも、結果は何も知らない素人丸出しだったとリイル君が知らしめ、あいつらよりもわたしたちは強くなっていて、もうあの時とは違う事を教えてくれたの。
もし、彼らが良からぬことを言ったら、その時は解雇すると約束してくれたわ。


「君たちにはね、あの子たちを先導して欲しいんだよ」
「リーダーになれって事か?」
「そう言う事だねカリーナ、僕はこっちの指導もあるし、毎回は一緒にいてあげられない」


しばらくは一緒に行く予定ではあるようだけど、そうでなくなった時はわたしたちがリーダーになるそうです。
でも、たまに一緒に行きたいので、そんなでお誘いをしたわ。


「勿論良いよ、僕もダンジョンに潜るのは楽しいからね」
「良かったわ、それなら契約するわ」
「ありがとう、じゃあ商会の者である証のペンダントを渡すよ」


ペンダントを受け取り、わたしたちはリイル君の商会に入会して説明も受けました。
そして、商会の証が奴隷紋なのを聞いたのだけど、身体に刻まない奴隷紋は初めて見たし、みんなでペンダントをテーブルに置いてビックリです。


「こ、これでオレたちを縛るのか?」
「もしそのつもりなら、受け取った時点で離せないよカリーナ、強制力はなくてただの証なんだ」
「な、なんだよリイル、脅かすなよ」
「ごめんね、でも事前に言って体験しないと分からないでしょ?」


奴隷紋を刻む工程を思い返し、双方の同意が無くてはいけないのだからと、ペンダントを持って納得したわ。
首に掛けるのはさすがに怖かったんだけど、リイル君がペンダントの付与の話をして来て、凝視してしまったわ。


「「「「す、ステータスが3倍」」」」
「それだけじゃなく、疲れにくくてスキルは覚えやすいし、状態異常にもなりにくいね」
「そ、それってすごいじゃない」
「そうだけど、奴隷紋である事には変わりないんだよルーシェ」


リイル君は、何だかとても暗い顔をして来たけど、それだけでも相当な効果で持っていて損はありません。
更に経験値もアップしているらしく、わたしはペンダントを首から下げたのよ。


「ルーシェ」
「リイル君、奴隷紋であっても関係ないわそうでしょ?」
「ありがとう、もし嫌だったら言ってね、外すだけだからね」


その時は、商会から抜ける事になるし、今聞いた付与が無くなるので普通に考えたら拒否はしません。
納得したわたしたちは、宿舎になっている屋敷に案内されたんだけど、そこの広さにまたビックリです。


「な、なんて広さだよ」
「ほんと」
「凄いじゃん、流石リイル君」


みんなリイル君に注目して笑顔を貰っていたけど、リイル君が直ぐに顔色を変えて門の外に視線を向けました。
そこには太ったおじさんがガラの悪そうな男どもを連れていて、いかにも悪い雰囲気よ。


「お前だな、ドロップ品を独占している不届き者は」
「独占って、どういう事リイル君」
「僕に言われても分からないよルーシェ」


おじさんの言い分では、冒険者の卸すドロップ品が減ってしまったらしく、素材も武具も足りないそうです。
そんなのいつもの事だろうと、わたしたちが思っていた内容をリイル君が応えたわね。


「嘘をつくな、お前の店で売っているのが証拠だろうが」
「あれは僕たちが作っただけです」
「作るにしても素材が必要だろう、独占しているから出来るんだろうが」
「冒険者を沢山雇いましたけど、その子たちは新人で新たに来た人ですから、減る事は無かったはずです」


ドロップ品が減ったのは、ただ単に他の冒険者が卸してないだけで、わたしたちが10階のボスを往復しているから、その人たちが焦って失敗しているだけです。
リイル君もそう言ってるのに、おじさんはどうしても理解出来なくて、後ろの男たちが殺気を出し始めたわ。


「おいリイル、オレたちが手を貸そうか?」
「ありがとうカリーナ、でもこれは商会の長である僕の仕事だから、みんなはちょっと待っててくれるかな、直ぐに終わる」


リイル君が武器も持たずに歩いて行き、男たちはおじさんの前に集まりました。
暴力では解決しないとリイル君が言って来て、素材などの販売もすると交渉したのに、無償で寄こせとか言って来たわよ。


「タダでも良いですけど、その分あなたには働いてもらいますよ」
「な、何を言っている、働くわけないだろう」
「商人が働かないとか、そんなだから変化を見落とすんですよ、商人の鉄則でしょう?」


リイル君がちょっと悪い表情していたけど、タダで素材を奪おうなんて呆れてモノが言えません。
盗賊となんら変わらない行いなのに、リイル君は捕縛しない様で、男たちを倒して地面に放置です。


「ば、バケモノかお前は」
「失礼ですね、僕も冒険者なだけで、素材を多く持っているのもそのせいでもあります」
「そ、そんなバカな話があるか」
「そこまで言うならギルドで調べてもらってよ、僕は他の冒険者からは買っていない、自分で動き手に入れてるんだよ」


何なら、ダンジョンに入って証拠も持って来ると、リイル君は余裕です。
おじさんは、覚えてろとか言って逃げて言ったけど、ギルドに行ったら逆に処罰されるのはおじさんだから、きっともうこれません。


「やれやれだね」
「大変なのねリイル君」
「まぁ独占ってのは当たってはいるからね」


笑って返して来たリイル君だけど、それを可能にしたのはリイル君の頑張りがあったからで、おじさんは何もしなかっただけです。
あんな連中、捕まえて兵士に渡して終わりだろっとカリーナは怒ったけど、街の住民が減る事の方が嫌みたいです。


「でも、あの人は罰金払えれるのかしら?」
「まあ最悪、その噂を聞いて他の人が止めれば良いかな」
「そう言う事なのね」


事情が分かって他の人が思いとどまる事が狙いで、リイル君が最悪奴隷にしても良いと言って来たの。
そして、先ほどの付与は強制力の無い物だったけど、強制力があった場合の話をぽろっと言ったので、わたしたちはリイル君に注目してしまったわ。


「「「「ろ、6倍!?」」」」
「そうだよ?」
「そ、そうだよ?っじゃねぇだろリイル」
「そ、そうよ、6倍なんて尋常じゃないわよ」


強制力が付くからとか簡単に言ってきますが、つまりお店で働いていたあの子たちは、それだけの付与を持っているのが発覚したの。
お店を任せられるほどの教育が出来てて、文句を言って来たあのおじさんたちが勝てるわけがないと、哀れにしか思えなかったわね。


「あの人もお店が上手くいってないから焦ったのかもだけどさ、男たちを雇う程度には余裕があった」
「なるほど、だから見せしめに使うのね」
「そう言う事だよルーシェ、処罰として僕が口を出せたら、その時はちょっとお仕事を手伝ってもらうけど、しっかりと働いてもらうよ」


はははっと笑うリイル君は、とても黒い表情をしてて、一体何をさせるのかと心配です。
ちょっと問題もありましたが、わたしたちは屋敷に入って、思いもよらない大歓迎を受け、学校での事を謝って貰えたわ。

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まったりーです
おかげさまでお気に入りが1000人を越えました、多くの方にご愛読いただき感謝しています、ありがとうございます。
これを祝して、今日は追加で5話を投稿したいと思っております。
15時に準備が終わりますのでお楽しみください。
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