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1章 新たな人生
17話 新人なのに新人指導
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「あれ?今日は凄く人が多い」
カリーナたちとの食事会から1週間、いつもの様に冒険者ギルドに入った僕は、新品の装備を纏った冒険者が沢山いてちょっと驚いてしまい、そんな僕に走って近づくファーラさんの顔を見て、まずい状況なのを察したんだ。
僕の前で頭を下げて来るファーラさんは、助けてくださいと言って来て、仕方なく聞く事にしましたよ。
「何があったんですか?」
「それがですね、急に新人の冒険者が20人来てしまいまして、PTも組んでないのにダンジョンに入ろうとしたのを止めたんです」
「なるほど、だから僕に見てほしいんですね」
ファーラさんが頷き、泣きそうな顔をしてきます。
冒険者は命掛けの仕事だけど、さすがにこの人数が来て死んでしまうのは見てられないと、遂に泣いてしまったんだ。
「分かりましたファーラさん、だから泣かないでください」
「あ、ありがとうございます」
「でも、僕も1つ星ですから、自己紹介だけはしてくださいね」
「それは勿論です、では直ぐに集めます」
受付の前に新人を集めてくれて、僕の紹介がされましたけど、明らかに僕を見てガッカリしてきました。
それもそのはず、僕は彼らとそれほど差の無い1つ星ですからね。
「あいつ、オレたちと同じ1つ星じゃないか」
「もっと熟練者に教わりたかったわ」
「そこのあなたたち、彼は既に10階のボスを倒している実力者ですよ、1つ星と侮ってはいけません」
「「は、はいすみません」」
他の新人たちもボソボソッと何かを話しているけど、きっと信じていない感じの話をしています。
しかし、カリーナたちの成長が僕のおかげとファーラさんが宣言すると、どうやら誰なのかが分かったようで違う顔で見て来た。
「それでは始めてくださいリイル様」
「ありがとうございますファーラさん、では皆さん、テーブルを端にどかして場所を作りましょう」
「「「「「はい」」」」」
新人たちが椅子とテーブルを端に移動させてくれて、何をするのかと期待してきます。
でも、僕のする事はいたって簡単で、まずPTをこの中で組めるかを聞いたんだ。
「すみません、オレたちそう言ったのは考えてねぇんだ」
「それはどうしてかな?」
「そんなの決まってるだろ、取り分が減るからだ」
「取り分と言うけど、君は死にたいのかな?」
正直な所、彼らがカリーナたち程の強さなら、ここのダンジョンに1人で入るのは死にに行くようなモノです。
男子は怒って来るけど、死んだら報酬も何も無いと忠告しました。
「オレを見くびるなよ、落ちこぼれカリーナが活躍してるんだ、オレが出来ないわけがねぇ」
「そうですか、ではそこで素振りをしてみてください」
「はんっ!見てろよ」
どりゃー!っと男子が大剣を振ると、周りから歓声が上がったけど、僕はその素振りを凄いとは思わない。
それが何でなのかを伝える為、僕はアイテムボックスから同じような大剣を取り出し、コンパクトな素振りをして見せました。
「どうかな?今の違いが分かったかな」
「そ、そんな小さな振りでモンスターが倒せるかよ」
「そ、そうよ、大剣は大振りしてこそで、大打撃を与える武器よ」
「それは学校の教師が教えたのかな?」
当然と簡単に答えて来たけど、それも間違ってはいない。
だけど、時と場所によると言うのが答えで、学校ではダンジョンの中での振り方は教えていないと、ここではっきりと警告したんだ。
「ダンジョンは狭いからね、振った先で壁にぶつかったらそれこそ致命傷だ」
「そ、そんなのオレが失敗しなければ良いだけだろう」
「そうだけど、ずっと集中何てできないよ、君は一人で探索をするんだからね」
人は疲れるモノで、ダンジョンは周囲全てが敵なんです。
だからこそPTを組む必要があり、そこを指摘したけど、出来ると引きません。
「だったら、今から僕が君に攻撃をします、それを防げたら君を信じましょう」
「良いぜ、どんな攻撃でも同じ1つ星の攻撃なんて防いでやる」
「良い根性だね、じゃあ行くよ」
大剣を構えた男子ですが、僕は逆に大剣をしまい他の冒険者に視線を向けます。
みんなどうしてっと首を傾げて来たけど、別に変な事ではなく油断を誘っているんだ。
「おい、何処向いてんだ」
「いつ攻撃するかなんて言ってない、君はその間ずっと僕に注意していないといけないだよ」
「そ、そんなの卑怯だぞ」
「どうしてかな?ダンジョンではいつもこうだって言ったでしょ」
これが出来ない様では無理と即答して、僕は他の生徒に素振りをさせました。
魔法士の子は魔力を水の入ったコップに注ぐ様に伝え、変化を見たよ。
「あ、あの」
「何かな?」
「こんなことして何になるんですか?」
コップの水がユラユラと揺れているのを不思議に思った女子が聞いて来たけど、これで魔力操作の熟練度が分かり、更には訓練にもなると教えたよ。
素振りをしていた子たちには、身体のバランスを見る為に振って貰った事を伝えた。
「身体のバランス?」
「そうだよ、例えば君は走るのが苦手だね」
「な、なんでそれを」
「踏み込みが少し弱いんだ、それに振り下ろす時握り手が緩くなる、握力もちょっと弱いから、片手剣を両手で持つか、大剣に切り替えて鍛えた方が良い」
的確に指示を出し、そこであの男子が油断しているのを見て、コップの水を指に付けそれを男子に飛ばしました。
男子はそれを避ける事が出来ず、まともに受けて顔が水滴で濡れたんだよ。
「な、なにすんだ」
「君が油断したからだよ、ダンジョンではそれが命取りだ」
「そんなの分からねぇだろ」
「分かるよ、だって君はその位置で剣を振ろうとしたんだよ」
僕が指差したのは、男子の周りにいた素振りをしていた他の子たちで、気づかないうちに位置がずれていた。
その状態で剣が振れたのかと指摘すると、さすがに振れないと言ってくれたね。
「そうだね、仲間の位置もしっかりと把握しないといけない、これはダンジョン探索だけでなく普通の冒険者には大切な事だ」
「だからPTを組むんですね」
「そうだよ君、報酬も帰って来れなければ得られない、まずはそれが大切なんだ」
それがやっと分かり、PTを組む様に言ったけど、さすがにいきなりは難しいと全員が悩んでしまったんだ。
そこで考えたのがローテーションでPTを組むことで、まずは5人1組で僕が指名したメンバーで組んでもらった。
「な、何でアタシがこいつとなのよ」
「な、なんだと、オレのどこが嫌なんだ」
「だって、さっき失敗していたじゃない、ダンジョンでもヘマするでしょ」
僕に負けた男子は、組む事になった女子に忠告され、何も言い返せないでしょんぼりとしてしまった。
そこで、僕はクラーシュたちに言った教訓を教えたんだ。
「失敗は悪い事じゃない?」
「そうさ、反省して次に生かす、それが大事なんだ」
「でも、もし死んじゃったら」
「そうだね、それが一番怖い事だけど、彼はもうダンジョンで大振りはしない」
そうだよね?っと男子に視線を向けると、絶対にしないと答えてくれた。
これがみんなにも伝わり、ダンジョンでの歩き方が分かったんだ。
「じゃあ、みんなで行こうかダンジョン」
「「「「「えっ!?」」」」」
「何を驚いてるのさ、4組もPTがいるんだよ、交代でモンスターを倒せば疲れないで進めるよ」
数は力と言うけれど、新人でも20人いれば3つ星冒険者に勝る事があると宣言しました。
そして、ダンジョンに行く前に決めなければいけない事がもう一つあり、僕は皆を注目させてその事を伝え、確かにっと言葉を貰ったんだよ。
カリーナたちとの食事会から1週間、いつもの様に冒険者ギルドに入った僕は、新品の装備を纏った冒険者が沢山いてちょっと驚いてしまい、そんな僕に走って近づくファーラさんの顔を見て、まずい状況なのを察したんだ。
僕の前で頭を下げて来るファーラさんは、助けてくださいと言って来て、仕方なく聞く事にしましたよ。
「何があったんですか?」
「それがですね、急に新人の冒険者が20人来てしまいまして、PTも組んでないのにダンジョンに入ろうとしたのを止めたんです」
「なるほど、だから僕に見てほしいんですね」
ファーラさんが頷き、泣きそうな顔をしてきます。
冒険者は命掛けの仕事だけど、さすがにこの人数が来て死んでしまうのは見てられないと、遂に泣いてしまったんだ。
「分かりましたファーラさん、だから泣かないでください」
「あ、ありがとうございます」
「でも、僕も1つ星ですから、自己紹介だけはしてくださいね」
「それは勿論です、では直ぐに集めます」
受付の前に新人を集めてくれて、僕の紹介がされましたけど、明らかに僕を見てガッカリしてきました。
それもそのはず、僕は彼らとそれほど差の無い1つ星ですからね。
「あいつ、オレたちと同じ1つ星じゃないか」
「もっと熟練者に教わりたかったわ」
「そこのあなたたち、彼は既に10階のボスを倒している実力者ですよ、1つ星と侮ってはいけません」
「「は、はいすみません」」
他の新人たちもボソボソッと何かを話しているけど、きっと信じていない感じの話をしています。
しかし、カリーナたちの成長が僕のおかげとファーラさんが宣言すると、どうやら誰なのかが分かったようで違う顔で見て来た。
「それでは始めてくださいリイル様」
「ありがとうございますファーラさん、では皆さん、テーブルを端にどかして場所を作りましょう」
「「「「「はい」」」」」
新人たちが椅子とテーブルを端に移動させてくれて、何をするのかと期待してきます。
でも、僕のする事はいたって簡単で、まずPTをこの中で組めるかを聞いたんだ。
「すみません、オレたちそう言ったのは考えてねぇんだ」
「それはどうしてかな?」
「そんなの決まってるだろ、取り分が減るからだ」
「取り分と言うけど、君は死にたいのかな?」
正直な所、彼らがカリーナたち程の強さなら、ここのダンジョンに1人で入るのは死にに行くようなモノです。
男子は怒って来るけど、死んだら報酬も何も無いと忠告しました。
「オレを見くびるなよ、落ちこぼれカリーナが活躍してるんだ、オレが出来ないわけがねぇ」
「そうですか、ではそこで素振りをしてみてください」
「はんっ!見てろよ」
どりゃー!っと男子が大剣を振ると、周りから歓声が上がったけど、僕はその素振りを凄いとは思わない。
それが何でなのかを伝える為、僕はアイテムボックスから同じような大剣を取り出し、コンパクトな素振りをして見せました。
「どうかな?今の違いが分かったかな」
「そ、そんな小さな振りでモンスターが倒せるかよ」
「そ、そうよ、大剣は大振りしてこそで、大打撃を与える武器よ」
「それは学校の教師が教えたのかな?」
当然と簡単に答えて来たけど、それも間違ってはいない。
だけど、時と場所によると言うのが答えで、学校ではダンジョンの中での振り方は教えていないと、ここではっきりと警告したんだ。
「ダンジョンは狭いからね、振った先で壁にぶつかったらそれこそ致命傷だ」
「そ、そんなのオレが失敗しなければ良いだけだろう」
「そうだけど、ずっと集中何てできないよ、君は一人で探索をするんだからね」
人は疲れるモノで、ダンジョンは周囲全てが敵なんです。
だからこそPTを組む必要があり、そこを指摘したけど、出来ると引きません。
「だったら、今から僕が君に攻撃をします、それを防げたら君を信じましょう」
「良いぜ、どんな攻撃でも同じ1つ星の攻撃なんて防いでやる」
「良い根性だね、じゃあ行くよ」
大剣を構えた男子ですが、僕は逆に大剣をしまい他の冒険者に視線を向けます。
みんなどうしてっと首を傾げて来たけど、別に変な事ではなく油断を誘っているんだ。
「おい、何処向いてんだ」
「いつ攻撃するかなんて言ってない、君はその間ずっと僕に注意していないといけないだよ」
「そ、そんなの卑怯だぞ」
「どうしてかな?ダンジョンではいつもこうだって言ったでしょ」
これが出来ない様では無理と即答して、僕は他の生徒に素振りをさせました。
魔法士の子は魔力を水の入ったコップに注ぐ様に伝え、変化を見たよ。
「あ、あの」
「何かな?」
「こんなことして何になるんですか?」
コップの水がユラユラと揺れているのを不思議に思った女子が聞いて来たけど、これで魔力操作の熟練度が分かり、更には訓練にもなると教えたよ。
素振りをしていた子たちには、身体のバランスを見る為に振って貰った事を伝えた。
「身体のバランス?」
「そうだよ、例えば君は走るのが苦手だね」
「な、なんでそれを」
「踏み込みが少し弱いんだ、それに振り下ろす時握り手が緩くなる、握力もちょっと弱いから、片手剣を両手で持つか、大剣に切り替えて鍛えた方が良い」
的確に指示を出し、そこであの男子が油断しているのを見て、コップの水を指に付けそれを男子に飛ばしました。
男子はそれを避ける事が出来ず、まともに受けて顔が水滴で濡れたんだよ。
「な、なにすんだ」
「君が油断したからだよ、ダンジョンではそれが命取りだ」
「そんなの分からねぇだろ」
「分かるよ、だって君はその位置で剣を振ろうとしたんだよ」
僕が指差したのは、男子の周りにいた素振りをしていた他の子たちで、気づかないうちに位置がずれていた。
その状態で剣が振れたのかと指摘すると、さすがに振れないと言ってくれたね。
「そうだね、仲間の位置もしっかりと把握しないといけない、これはダンジョン探索だけでなく普通の冒険者には大切な事だ」
「だからPTを組むんですね」
「そうだよ君、報酬も帰って来れなければ得られない、まずはそれが大切なんだ」
それがやっと分かり、PTを組む様に言ったけど、さすがにいきなりは難しいと全員が悩んでしまったんだ。
そこで考えたのがローテーションでPTを組むことで、まずは5人1組で僕が指名したメンバーで組んでもらった。
「な、何でアタシがこいつとなのよ」
「な、なんだと、オレのどこが嫌なんだ」
「だって、さっき失敗していたじゃない、ダンジョンでもヘマするでしょ」
僕に負けた男子は、組む事になった女子に忠告され、何も言い返せないでしょんぼりとしてしまった。
そこで、僕はクラーシュたちに言った教訓を教えたんだ。
「失敗は悪い事じゃない?」
「そうさ、反省して次に生かす、それが大事なんだ」
「でも、もし死んじゃったら」
「そうだね、それが一番怖い事だけど、彼はもうダンジョンで大振りはしない」
そうだよね?っと男子に視線を向けると、絶対にしないと答えてくれた。
これがみんなにも伝わり、ダンジョンでの歩き方が分かったんだ。
「じゃあ、みんなで行こうかダンジョン」
「「「「「えっ!?」」」」」
「何を驚いてるのさ、4組もPTがいるんだよ、交代でモンスターを倒せば疲れないで進めるよ」
数は力と言うけれど、新人でも20人いれば3つ星冒険者に勝る事があると宣言しました。
そして、ダンジョンに行く前に決めなければいけない事がもう一つあり、僕は皆を注目させてその事を伝え、確かにっと言葉を貰ったんだよ。
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