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1章 新たな人生

12話 訓練7日目

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「じゃあクラーシュ、この服をお願いね」
「はいリイル様」


私たちがリイル様に買われて9日が過ぎ、休日を挟んで訓練も7日目で順調です。
その中で、遂に本場となるお客様の品をリイル様が持ってきて、私たちは緊張して装備を直していきます。


「そんなに緊張しないで、いつもの様にすれば良いんだよ」
「そ、そうですよね」
「うん、リラックスだよクラーシュ」


深呼吸と言って来るリイル様ですが、肩に手を乗せて顔が近いリイル様が近くにいるから、それだけで私は緊張してしまいます。
助けてもらえた恩があり、何でも出来るリイル様はカッコいいんです。


「ごめんねクラーシュ、ちょっと近かったね」
「あっ・・・いえ」
「じゃあお願いね」


リイル様がサイザたちの方に向かい、ナックルガードの調整を見に行くと、私も落ち着くことが出来てローブを直していきます。
木で出来たロッドはリイル様とアリュシュが担当してるけど、ふたりとも真剣で近いのが羨ましかったわ。


「私も、さっきまであんな感じだったのよね」


恥ずかしくてダメだったけど、嫌じゃなかったのに失礼をしてしまったかもしれません。
次があったら、リイル様に失礼の無い様振る舞う事を決めて、深呼吸をして落ち着きました。


「うん、良く出来てるね、流石クラーシュ」
「い、いえ、リイル様の指導が良いんです」
「ありがとう、じゃあ渡してくるから、みんなは休憩しててね」


結局、私はリイル様に接する時は緊張してしまい、また失礼な態度になってしまいました。
リイル様はそんな私にも優しく素敵な方で、どうしようもなく好きなんです。


「クラーシュ、お茶入ったです」
「クラーシュ」
「ボ~っとしてる」
「ふぇっ!?」


3人にジッと見られてて、私は椅子から飛びあがっちゃったけど、その先にはアリュシュがいて、ジッと見られたわ。
でもね、みんなリイル様が好きだからか、同じとか言われて笑顔が絶えません。


「そうよね、みんな同じよね」
「それはそうです」
「うんうん」
「恩があるし、生活も良くしてくれた」
「やさしい」


テーブルを囲んでみんなでお茶を始めたけど、こんな事が出来るのもリイル様だからで、普通なら椅子に座る事すら許されません。
服だって上等な品だし、ほんとにリイル様の奴隷になれて幸せです。


「読み書きも教えてもらえて、技術まで頂いたですからね」
「そうねアルエル、あなたはポーション渡したの?」
「ですです、次の探索で使うそうです」


それを聞いて、ちょっと心配になったけど、リイル様が怪我をする想像が出来ませんでした。
何故ならリイル様は、何度もお一人でダンジョンに挑戦していて、ギルドには報告していませんが40階のボスを倒しています。


「武器が初期の物とか言って、どんどん壊して帰って来るですからね」
「そうね、私たちの訓練の為でもあるけど、ゴーレムロードを倒してるとか信じられないわよね」
「ですです、鉄装備でミスリル級の硬さを切るとか不可能です」


だから言っても信じて貰えないわけで、ランクが上がるまではアイテムボックスにしまっておくそうです。
その素材を私たちが使えるようになるまで、私たちがそこまでの腕になると期待されてて、それに応えるために頑張るんです。


「とはいえ、私たちのスキルはまだ1レベルだし、まだまだなのよね」
「そうなのです、次に行きたいですがさすがに早いです」
「リイル様の装備だけでは難しいと言う事よね」


だからこそ、お客を連れてきた訳ですし、彼女たちの装備もなかなか凄いので勉強になります。
何処かの学生が使う装備らしく、使いやすさを重視していて、作るならこれかと思っています。


「そう言えば、リイル様も作りたいと言っていましたね」
「ボクたちも言われた」
「早く作ってみたい」
「そう言ってくれると思っていたよみんな」


お茶が終わりそうになった時、リイル様が戻って来て早速作ろうと言ってきます。
流石に早いと思ったのですけど、みんなで力を合わせれば出来るとリイル様は自信満々です。


「で、でも私のスキルは裁縫ですよ」
「クラーシュ、別に手伝うのにスキルは関係ないぞ」
「それって、もしかして魔力ですか?」
「そう言う事だね、加工石をそれぞれ使って貰えば出来るさ」


みんなで力を合わせればっと前置きをして、それぞれの担当する加工石を指示され、私は鉱石のいくつかを結晶化する担当になりました。
火の加工石を使いとても精細な作業が必要らしく、私以外は出来ないと言われたわ。


「その素材を一つの加工石に纏めるのがアルエルで、更に加工石で温めてサイザたちに打って、その後にアリュシュが整えるんだ」
「で、出来るんでしょうか?」
「出来なくても良いんだよクラーシュ、これは失敗しても君たちの糧になる」


つまり訓練と言う事で、私たちは鉄のナックルガードを生成に入ります。
今までで一番集中出来たからな、作業に失敗もなく成功したんです。


「で、出来ちゃいました」
「それが今のみんなの実力だよ」
「そ、そうなんでしょうか?」
「うんそうだよ・・・だけどねクラーシュ、いつもそうとは限らない、今回は絶好調だったと基準として、失敗したら何がダメだったのかを皆で考えるんだよ」


失敗を恐れてはいけないけど、それを糧にするというのはそういう事とリイル様が教えてくれて、私たちは元気よく返事をしました。
その言葉の通り、次に作ったナックルガードは途中で失敗してしまい、みんなでどうしてダメだったのかを話し合ったんです。


「魔力の流れに引っかかりがあったです」
「そうすると」
「最初の結晶がダメだった?」
「わ、私なの!」


確かに、最初の時よりも変な感じだったけど、しっかりと出来ていた気がしました。
そこでみんなに注目され、私は泣きそうですよ。


「ちょっと待って皆、誰が悪いとかではなくてね、そうなった時どうやってフォローするのかを考えてほしいんだ」
「ん、それは大変」
「そうだねアリュシュ難しいよね、だから途中で声を掛けて慎重に作業が出来るようにするんだ」


その為にみんなで力を合わせる事が必要で、その為の訓練と言葉を貰いました。
生産の時にそれが出来ていれば、修理の依頼で壊さずに済む事にも繋がり、信用も得られると教えていただきました。


「だからね、今は何度も失敗して、素材がこんな状態だったなら、どうすれば成功に導けるのかを皆で探してほしい」
「だから失敗して良いと言う事なんですね」
「そうだよクラーシュ、だから君が悪いわけじゃなく、チャンスを君が作ったんだ」


そう言われると、何だか私は凄い事をした気になりますけど、その言葉でアルエルも変だったとか、サイザたちも叩く時上手く狙った所に行かなかったと言ってきます。
みんな言いにくかった様で、ここでみんなでダメな所を出し合い、次は途中で品物の状態を伝えて作業をすると、今度は上手く出来たんです。


「で、出来た」
「良かったね、今度のはみんなの頑張りで完成させられた、偉いよ」
「「「「「えへへ~」」」」」


皆でへにゃってなってしまうけど、リイル様はほんとに優しく褒めてくれて、私たちは心の底から嬉しかったんです。
それからは、5回に1回成功する感じで、みんなのスキルが上がるに従って良くなったんです。
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