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1章 新たな人生

3話 ダンジョンに入る為の準備

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「おかしいな、リーダンのダンジョンよりも冒険者がいない」


口調もちょっと子供風に直し、一人称を僕に変えてジュダルラの街を歩きました。
僕の容姿は15歳に見えるから、新人冒険者と思ってくれるはずで、まずはダンジョンと街の様子を見て回ったんだ。


「そう言えば、僕たちがリーダンを選んだのも、探索が進んでいたからだったね」


店の品も、リーダンより揃ってなくて、国が違うからか僕の作った品も流れていないのが分かりました。
これは、ダンジョンの探索に支障が出そうで、僕はちょっと悩んでしまったんだ。


「ギルドカードで降ろしたへそくり、金貨100枚分の銀貨1万枚が減らないのは良いけど、持ってる装備の整備が出来ないのは困るね」


新人からスタートする予定だから家を買う訳にもいかず、だからと言ってリーダンの様に商品を売り込むのも問題と思っていました。
ここは、他の手を使う事にして、その出費を計算したんだ。


「宿屋の宿賃が余計掛かって、1日銅貨10枚が6人分の穴あき銅貨6枚、10日で銀貨6枚かぁ~」


そこに食費となると銀貨4枚が追加で必要となるけど、作った品を売れば何とかなると答えが出ました。
奴隷を買い、その人たちを職人として鍛え、後にお店を開けば元は取れると思ったんだ。


「奴隷の主を探られるけど、お店を出すまでは平気だろうし、奴隷商にも話を持ち掛ければいけるね」


奴隷の教育をエサに交渉すれば良いので、僕が目立たず奴隷商が目立つ事にもなり、きっと上手くいくとニヤニヤしながら街を歩きます。
食料や材料を買うのに適していて、あまり高くない宿を見つけ僕はちょっと古い扉を開けました。


「いらっしゃ~いお兄さん」
「大部屋を借りられるかなお嬢ちゃん?」
「勿論空いていますよ、1日穴あき銅貨4枚です」
「ありがとう、しばらく借りるから30日分頼むよ」


銀貨4枚を渡してお釣りはチップに取ってもらい、これからよろしくと番頭の少女にお願いしました。
高いチップは今後贔屓してもらう為で、多少無理を言っても目を瞑って貰える。


「何でもアタシに言ってください」
「僕はリイルって言うんだけど、今後庭とかも使わせてもらうからよろしくね」
「分かりました、アタシはリマリーです、食事はどうしますか?」


早速の食事を進めて貰ったので、6食分の昼食と夕食をお願いし、更には部屋に持ってきてもらうようにも頼んだんだ。
本来そこまではしてくれませんが、更に銀貨を1枚渡した事で親と一緒に運んでくれる約束を笑顔でしてくれたよ。


「ありがとうリマリーちゃん」
「いえ、これからお得意様になるんです、これくらい当然ですよ」
「そう言ってくれると助かるよ、今日奴隷を買ってくる予定なんだけど、怖がらないで貰えると嬉しいな」
「えっ!・・・はい」


リマリーちゃんはちょっと驚いていたけど、その後は普通に返事をしてくれました。
奴隷を買うのはそんなに驚く事ではないけど、僕の年齢では早々買えないし、おまけに食事を頼んだ後だから、リマリーちゃんは5人も買うのかとビックリしていたんだ。


「じゃあお願いね」
「はい、お部屋は3階ですのでお待ちしています」


大部屋の鍵を受け取り、僕は宿を出て奴隷商を回る為に壁に向かったよ。
奴隷商の館は街の端にある事が多く、ここでもそうなのは最初に確認していました。


「ここはダメだ」


ボロい奴隷商の屋敷だと、僕の策略を理解してもらえないので、1軒目はスルーして2軒目の綺麗な館に目を付けました。
扉をノックすると、髭の似合うおじさんが出て来て、執事服を着ていましたね。


「何かご用ですかな?」
「初めまして、僕はリイルと言いまして奴隷を買いに来ました」
「お客さまでしたか、ではこちらにお入りください」


一言さんお断りと言われずに済んだけど、おじさんの顔は明らかにボッタクる気満々です。
本当に15歳の成人したばかりなら、そんな事も分からずにいるかもだけど、僕は違うのでソファーに座って早速交渉開始です。


「それで、どのような奴隷をお求めですかな?」
「最安値の奴隷をお願いします」
「ほう」


おじさんは、興味を持った様でジロジロ見て来たよ。
最安値と言えば、病気や怪我をしてて長持ちしないか働けない者で、そんな奴隷を求めると言う事は何かあるとニヤニヤです。


「何とか出来る伝手があるんですよ」
「それはそれは、今後もご贔屓にしてほしいですな」
「そう言っていただけると思いまして、ちょっとご相談です」


ここで、優れた教育を出来る事を伝え、奴隷の値段を引き上げる交渉に入ります。
最安値の奴隷はもちろん、他の奴隷にも教育が出来れば、最低でも3倍で売れると説明したんだ。


「ただですね、せっかく教育したのに壊される主には売りたくない、この意味分かりますよね?」
「ふむ、壊れたとか文句を言ってきそうですな」
「そうです、なので将来的にお店を自分で作って雇いたいんです」


壊さない主なら売ってもいいとも伝え、商売の匂いを漂わせました。
でも、ここで利益の計算を始めたのか、唸りだしたんだよ。


「教育の質が気になりますな、どれほどのスキルをどれだけの期日で教えられますかな?」
「1月で一人前の職人に出来る程ですが、見せた方が早いと考えています」
「ふむ、つまり見本を作って来ると言うわけですな」
「その通りです、作った品も売れるので、そちらも流してくれると助かります」


ほうほうっと、おじさんは目が金貨になり始め了承を貰えました。
ベルを鳴らして綺麗なメイドさんを呼ぶと、奴隷を連れてくるように指示を出し、メイドは頭を下げて退出したね。


「人数は5人を考えていますが、もしかしてもっといますか?」
「丁度5名になりますな、いやいや丁度良かった」


はははっと笑っていると、先ほどのメイドさんが台車を引いて部屋に入って来て、その後ろに4人のメイドさんと台車が並んでいました。
歩けない程の状態で運ばれてきたのは5人の奴隷で、僕はその中の1人から目が放せず、鑑定のスキルまで使ってしまったよ。


「この5人が最安値の奴隷です」
「病人が2人に欠損が2人・・・最後のその子はエルフですよね?」
「この状態で良くお分かりですね」


生きてるのが信じられない程の状態で、やせ細っているだけでなく欠損も酷かった。
おじさんの話では、臓器や血液等エルフは何処をとっても高価で売れるらしく、目や髪も無くなっていたんだよ。


「エルフ独特の長耳もないけど、そこも売れるの?」
「いえ、そこは悪い主に当たってしまった際、気に入らないと切り捨てられました」
「そうですか、ではこの子も連れて行きますけど、運ぶのを手伝ってくださいね」
「ほ、本気ですかな?」


冗談で連れて来たわけではないだろうけど、ここで僕が文句を言って来ると思っていたようです。
でも、僕の力を知るには丁度良いと、平民くらいの服も宿に持って来るように伝えたよ。


「宿は街の南にある緑の看板のヤードの宿で、そこの娘さんには言ってあります」
「あそこですか、分かりました」
「では、僕も準備がありますので、お願います」


おじさんに頭を1度下げ、僕は交渉を終了しました。
部屋を出る時、おじさんは自己紹介をしてくれて【バーバルナ】さんと言うそうです。
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