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1章 新たな人生

2話 戻って来たカーリーが激おこ

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「じゃあみんな、報告書しっかりと書くのよ」


1月のダンジョン攻略を終えた私は、新人であるPT【ファイアーエンブレム】に指示を出してクランの屋敷に向かって貰ったわ。
私は、途中に用があったので別れたんだけど、ちょっとウキウキしていたの。


「明日はリケイルの誕生日、喜んでくれるかしら」


毎回渡しているけど、今回はPTを組んでから10周年と言う事で、特別にお金を掛けた品を用意してて、リケイルに似合うミスリルの短剣を注文したの。
後衛のリケイルなら、きっと喜んでくれると楽しみだったのだけど、短剣を受け取りクランの屋敷に戻ったら、リケイルを追放したとかアモスに言われて、抱きしめてた短剣を落としてしまったわ。


「な、何を言ってるのアモス、冗談でも言って良い事と悪い事があるわよ」
「冗談でこんな事言うかよカーリー」
「カーリーあなただってその理由を聞けば納得よ」
「理由って、何があったのよ」


シューリが話してくれた内容は、リケイルがお酒の席でたまに冗談の様に言っていた事で、それが本当だったと3人は怒って来ました。
でも、その時のリケイルは強制力はないと言っていて、能力アップだけの利点しかない事を強調していたわ。


「だからアモスが決めて追い出したのよ」
「そんな!?」
「カーリーお前も早くあいつのネックレスを外せ、これからはこっちの紋章が家の証だ」


アモスが差し出して来たのは、剣がモチーフになっているネックレスで、ドラゴンの翼とは別物でした。
クランの名前はそのままなのにこれは合わないと思ったし、そもそもリケイルがくれたネックレスを外したらステータスアップが無くなるのよ。


「みんな分かってるの?弱くなるのよ」
「そんなの少しだけよカーリー」
「リゼ、あなた格闘士なのに分からないの、ちょっとじゃないでしょ」


ステータス欄は見れないけど、感覚で分かるはずなのに、3人は分かっていません。
ネックレスを外したら、リケイルが言っていたように3分の1になってしまい、6つ星どころか4つ星くらいに落ちてしまうと警告したわ。


「しかしな、既にクランにいた全員は壊してしまったぞ」
「そんな!?どうして壊してるのよアモス」
「だってイヤじゃない、あんな呪われた品」
「呪われたって、あなたたち重大さが分かってないわ」


呪いなんてモノは掛かってなくて、ステータスアップだけと言ってるのに3人は分かってくれず、早く私のネックレスを出すように言って来たわ。
壊すのが分かってるのに、私がリケイルから貰った品を渡すわけもなく、断ると同時にクランを抜ける事を宣言したわ。


「な、何を言ってるんだカーリー!」
「アモス、あなたこそ分かってないわ、後ろから指示を出していたリケイルがいなくなったのよ、あなたにはそんな事出来ないし、私だって無理よ」
「そ、そんな事は無い」
「それにね、クランの資金を支えていたのはリケイルよ、それも知らなかったでしょ?」


リケイルは、ギルドや商人たちと交渉して色々な魔道具やアイテムを作っていて、そのほとんどをクランに納めていたけどそれも無くなったの。
アモスたちは、逆にお金使いが荒く今から節約しないといけないの。


「あなた達にはそれが出来るのかしら?」
「そ、それは・・・出来るさ」
「あらそう?酒盛りも週一で、化粧品も控えるのよ」
「「それは無理」」


リゼとシューリが反対して来たけど、ふたりの化粧品が一番高いし、そもそもそれだってリケイルが作った品なのよ。
クランの他のPTにもカンパしてもらうけど、3つの内1つが新人で2つは3つ星だからそんなに期待できないし、人員増強も延期と指摘したのよ。


「し、しかし7つ星のクエストをこなせば直ぐだろう」
「だから、ステータスが下がってるんだから倒せないのよ」
「そ、そんな事は」
「じゃあ行ってみなさいよ、私は死ぬのはごめんだから抜けるわ」


7つ星になったのだって、リケイルの支援あっての評価で、私たちだけでは6つ星がやっとでした。
そこにステータスダウンが加われば、死にに行くようなモノで、恐らくギルドでも騒動になっているわ。


「冒険者ギルドだけじゃなく、商業ギルドに魔法士ギルドも文句を言って来るわよ」
「な、何でそんな事になるんだ」
「何も知らないのねアモス、彼はそれだけの事をしていたのよ」


奴隷紋の研究から出来た産物もあるけど、魔法の護符や付与の付いたアクセサリーなど、数えきれないほどの技術を提供していたの。
ドラゴンの翼をこれから大きくする予定も、彼の賛成があって支援を貰える前提の話だったのに、勝手に首にしてダメにしてしまったと怒ったわ。


「アモス、各ギルドに謝る準備をしておきなさい、じゃないと降格だけじゃ済まないわよ」
「な、何でオレが」
「あなたがリーダーでしょ、もう謝ってくれるリケイルはいないのよ」


このバカ!っと、最後に言い捨てて短剣を拾って部屋を飛び出しました。
私とダンジョンに籠っていた新人のPT【ファイアーエンブレム】がアクセサリーを手放す前に止める為で、何とか間に合ったのよ。


「どうしたんすかカーリーさん」
「あなたたち、一緒に来なさい」
「何処に行くんですの?」
「リケイルの所よ」


ここはもう終わりと、5人の新人を救う為に誘ったわ。
他の2PTは、止めろとか言って来るから、恐らく奴隷紋だけの内容を聞かされたのね。


「あなたたちよく考えなさい、リケイルがあなた達に強制した事なんてあった?」
「そ、それはないですけど、奴隷紋だったんですよ」
「それが何よ、胸に刻む奴隷紋じゃないし、護符やアクセサリーと何が違うのっ!」


クランの証だったネックレスはそれだけで特別なのに、それを奴隷紋と分かっただけで手放すなんてどうかしています。
奴隷の契約は、お互いに了承しなくては行えないし、本物はかなりの制限を付けられるから忌み嫌われてます。


「そのギリギリをリケイルは見つけて、私たちを強くする為に頑張ったのよ」
「で、でもクランリーダーが捨てるようにって」
「じゃああなた達はここにいなさい、行くわよリット」
「は、はいカーリーさん」


ファイアーエンブレムだけを連れて屋敷を出ると、そこに冒険者ギルドのギルマスが向かって来るのが見えたの。
その横には、手を縛られてる女性の職員がいて、一体どうしたのかと立ち止まって呼び止めたわ。


「カーリー殿、丁度良かった、お話を伺いたい」
「もしかしてリケイルの事かしら?」
「ええ、実はそちらのリーダーアモス殿の策謀で、この者がリケイル殿を冒険者ギルドから追放してしまったんです」
「なっ!?」


アモスがそこまでしていて、私はもうダメだと思ったわ。
ギルドマスターや責任者の留守中を狙ったタイミングだったそうで、アモスがそこまで計画していた事を縛られてる女性が全て話したそうです。


「それに加担した冒険者もいて、そいつらは捕まえて処罰を待っている状態です」
「それじゃあ、リケイルはもう」
「ええ、この街には既にいません、他のギルドでも大騒ぎで国に報告がされました」


私は当然と思ったけど、後ろのファイアーエンブレムは話しが大きすぎてタジタジね。
ファイアーエンブレムのリーダーである、剣士のリッドに馬車の手配を頼み、私は出て来たばかりだけどまた屋敷に戻る事にしたわ。


「1発ぶん殴ってやる」
「ええ、ワタシもそうしたいですなカーリー殿」
「ギルマス、今のうちに言いますけど、私はクランを抜けたから部外者だからね」
「分かっていますよ、あなたはリケイル殿の理解者でしたからね」


私がいればこんな事にはならなかったけど、アモスが計画的だったから止められなかったでしょう。
だからこそ悔しくて、さっきのリーダー専用部屋に入り、何か言って来たアモスの顔をぶん殴ったのよ。


「な、何をするのよカーリー」
「うるさいわよリゼ、じゃないと殺すわよ」
「カーリー殿、気持ちは分かるが殺してはダメだ、お前たち動くな、動けばワタシも容赦しないぞ」


ギルマスは元6つ星で、女性であっても相当出来る格闘家です。
自信のあったリゼが飛び出したけど、ギルマスに瞬殺されてシューリは黙ってうなずいていたわ。


「さてナナシュ、アモスの顔が歪んでしまったが、そいつで間違いないな」
「は、はい」
「良し、では縛り上げて連れて行くぞ」
「「な、何でよ」」


ギルマスは、アモスが犯した行いをリゼとシューリに説明し、リケイルを罠に嵌めて冒険者の資格をはく奪した事を伝えました。
リゼとシューリは、それの何がいけないのかと言って来て、私とギルマスのため息が揃ったわ。


「こんな奴らの為に、リケイル殿は頑張って来たのか」
「ギルマス、もう行きましょう、この人たちには分かりませんよ」
「そうだな、あまりここにいると、怒りで殺したくなる」


この人たちが行った事を思えば、本当にそうしたいのだけど、償って貰った方が苦しいので生かしておきます。
でも、私はそんな結果よりも、リケイルを追いかける方が先と思い、ファイアーエンブレムの5人と共に街を出ました。


「でもっすよカーリーさん、リケイルさんがどこに行ったか分かるんすか?」
「リット、そんなの分かるわけないでしょ、まずは痕跡を辿るのよ」
「痕跡って、誰かに聞くとかですか?」
「そうじゃないわシャニア、リケイルは姿も変えれるから、人に聞いても分からないのよ」


姿を変えていると聞いてみんながビックリだけど、それだけの研究をしてて、冒険者のカードもないとなると、残ったのは他ギルドの資金の流れだけです。
ダンジョン都市のリーダンで聞いても良かったのだけど、これから忙しくなるから調べてる時間が無いと予想したわ。
だからこそ、何処でも良いから他の街で調べる事にしたと、5人に伝えて馬車を走らせたわ。
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