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2章 支店

40杯目 戦争報告はメンヤのラーメンの後で

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「帰って来たわ」


族長の護衛兵士に任命されたワタシ、ペールンシャもミケミ族長に同意してヘトヘトです。
それと言うのも、戦いよりも帰って来てからの凱旋の宴とかで忙しかったんです。


「硬っ苦しい宴会料理よりも、あたいはやっぱりシュウマイが食いたいよ」
「ワタシは、ピリリと辛いエビチリが良いです」
「ほう、ペールンシャはそっち系かい?」
「はい、オーロラ殿の料理が早く食べたいです」


王都で店を開いていたロイロイ殿たちもなかなかでしたが、やはり森のダンジョンにおられるレイスのオーロラ殿が最強です。
ライオルド王子も来たがっていた中、ワタシとミケミ族長は報告の為に先に戻ると伝えて戻りましたが、それはひとえに本場のラーメンが食べたいからで、それが楽しみで帰って来ました。


「そうと決まれば、急ぐぞペールンシャ」
「はい族長」


集落に入らず、まずはメンヤ様に報告とばかりにダンジョンに入ると、いつもの料理の見本が並んでいてホッとしました。
しかも、なんだか増えたように見えますが、そこはメンヤ様なので当然とチラチラ見て店に入りましたよ。


「ただいまメンヤ」
「おうお帰りミケミ、それに護衛のペールンシャだったな、席に座ってくれ」
「お、おうそれは良いんだが」
「メンヤ様が厨房にお立ちになっている?」


今まで見た事は無かったんですが、どうやらラーメンを自作出来るようになったらしく、今まではすり抜けて出来なかったそうです。
それは是非食べてみたいと、ミケミ族長もワタシもお願いして、太麺のミソ鶏ガララーメンを注文して、サイドメニューを餃子とシュウマイとエビチリを頼んだんです。


「ミケミはとんこつ派だったのに、今日は味噌で良いのか?」
「ああ、旅から帰って来て濃い味が良いのさ」
「そう言う事か、それならチーユも加えるな」
「「チーユ?」」


メンヤ様は、良く分からない事を言って来ましたが、どうやら油を乗せる事の様で、出て来たミソラーメンには、白い油の塊が浮いていました。
これでほんとに美味いのかと思ったんですが、美味さが今までの比ではなく、とても言葉に出来ません。


「そんなに急がなくてもいいぞ、餃子も出来たからな」
「こ、これもメンヤ様が」
「ああ、今日は俺が担当するとオーロラに言っててな、みんなは厨房の奥で食べてるよ」


出てこないっと言う事は、それだけ美味くて止まらないのだろうと、ワタシは納得してしまった。
シュウマイもエビチリもとても美味しく、替え玉を貰って止まりません。


「それで、戦争はどうだったんだ?」
「ちょっと待ってくれメンヤ、もう少し食べてからだ」
「そ、そうか・・・それなら、さっぱり系のパインラーメンでも食うか?」
「「是非食べたいっ!!」」


叫ぶほどに賛成してしまったワタシと族長で、新たに出て来たパインラーメンは、シオ味風の味で確かにさっぱりとして甘くて美味でした。
エビチリの辛さとミソラーメンの濃い味を流してくれて、またミソラーメンが食べたくなって追加してしまいましたね。


「ふぅ~やはりここの食事が一番だね」
「まったくです」


食べ過ぎなほどに食べてしまったワタシとミケミ族長は、お腹をさすってやっと落ち着いたのは、7杯ずつ食べた後でした。
メンヤ様は笑顔でマタタビ茶を出してくれて、ミケミ族長の報告が始まったんです。


「そうか、やはりあっちは戦いになったか」
「そうだね、エレード国が参加して来ていたら、もう少し歯ごたえがあっただろうけど、そこはメンヤの作戦通りだったよ」
「それは良かった、今度そこの元王様が来るから、その時は歓迎してやってくれ」


国王から落とされた男がここに来るとなると、ワタシはかなり警戒したんだけど、どうやらメンヤ様は違うようです。
その為の準備を数日後にするらしく、さすがと思い世界の争いが収まり始めている事を伝えました。


「食料が安定して来たからかな?」
「そうだと思いますメンヤ様、このまま行けば隣の大陸に進軍と言う話も出て来るかもしれません」
「隣の大陸?」


そう言えば言ってなかったと、ミケミ族長がお話になり、そこは魔族が占領している地域で、情勢が安定すると必ず兵を向かわせていると伝えてくれました。
それはイヤだとメンヤ様も言って来ましたが、それは避けられないかもとミケミ族長は言い切りました。


「しかしなミケミ、戦いよりもまず話し合いだろう」
「そうだろうけど、言葉が通じないんだよ」
「それに、知性があるかも疑問ですよメンヤ様」
「そうなのか・・・もし、言葉が通じれば話も出来るかな?」


それは分かりませんけど、意思疎通が出来ればもしかしたらと言う考えはあり、メンヤ様は少し考え込んでいました。
ちょっと空気が重くなったので、ワタシはメンヤ様の調理のすばらしさに話を振ったんです。


「そ、そんなにすごかったかペールンシャ」
「それはもう、素晴らしいどころではなく、神の食事と言われてもおかしくありませんよメンヤ様」
「そ、そこまでか?」


奥で食事をしてるオーロラ殿たちも、メンヤ様にそんな事を言っていたらしく、今度の会議では是非出してほしいとお願いしました。
そこで問題になったのはメンヤ様の熟練度で、1日3時間しか持たないらしいです。


「まだまだ修行が足りないんだ」
「それでもすごいですよ」
「まぁ200食は作れるから問題はないと思うが、オーロラたちもすごく上達したんだぞ」


それも是非食したいので、今日の夕食を楽しみにして、その前にお風呂と言う事で入る事になり、それが久しぶりだったのもあってウットリしてしまった。
旅の疲れが吹き飛ぶ気持ちよさで、お湯が特殊なのが匂いで分かったよ。


「薬湯と言うらしいが、メンヤは食事以外も色々変えているんだね」
「ですね・・・最初は危険視していましたが、今ではその無意味さを痛感します」
「そうだね、メンヤのおかげでここの暮らしが一変した」


世界全域でもそうで、今では食料のほとんどをメンヤ様が管理していて、ここが世界の中心なんです。
だからこそ、世界でも初の全種族会議が開かれ、その場所がここに選ばれました。


「凄い事ですよね」
「そうだねペールンシャ、あたいが思っていた以上の事になってるわ」
「あれだけの食事ですから当然ですね」


世界に評価されるのは凄い事で、ワタシはとても誇らしかったです。
メンヤ様が場所によって最適な品を使ったのは、それだけワタシたちが集めた情報を使ってくれていて、それがとても嬉しかったんです。


「それだけじゃないけど、それがとても誇らしいですよ」
「そうだね、普通では無駄になるような情報でも、メンヤは無駄と思わず有効に使ってくれる」
「それに、楽しいですよね」
「ああ、話していて苦じゃない、それがとても心地いい」


ミケミ族長もそう思っていて、だからこそ信じられるのだと思ったわ。
それに、毎日美味しい食事が食べれるならそれで幸せなんです。


「そこが一番大きいわよね」
「ええまったくです、前は1日1食もぎりぎりでしたから、あれは辛かった」
「そうだね、森も豊かになったけど、狩りはダンジョンでも出来るし、その方が安定する」


強いモンスターとも戦えて、とても楽しい戦いも体験できる。
国同士の争いが無意味に感じる程、ワタシたちは平和を望んでいたんです。


「戦うのも楽しいけど、やっぱり平和だね」
「はい、親しい者がいなくなったら寂しいですからね」
「そうだね、王子にも言っておかないとね」


今度の会議前には来る事になっているけど、恐らくその時は国王と王女も同行して来るでしょう。
その時が楽しみだけど、失敗してしまう想像が出来ませんから、素晴らしい結果が楽しみでした。
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