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2章 支店

32杯目 人種族が来店

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「いやいや、遠い所を良く来てくださいました」


今日は、俺の店(ダンジョン)に初めて人種族が来店した。
それと言うのも、バージルと言う街の人たちがわざわざお礼を言いに来てくれたんだ。


「美味しい料理をありがとうございます、毎日美味しくいただいています」
「ボクたちは、暮らしが良くなったんだよ、幽霊の兄ちゃんありがとう」
「わ、ワタシは、働ける場所がもらえて助かっています」


それは何よりと返す俺は、店の中に招いてラーメンを出した。
そこからは、色々なラーメンとサイドメニューを出したんだが、この再会を実現してくれた商人には別の部屋で待ってもらっているから、食事が一息したのでそちらに向かった。


「お待たせしたね」
「いえいえ、お礼を伝えられて良かったですよ」
「ありがとう、俺はこの恩をどう返したらいいかな?」


その為に来たであろう商人は、まず名前を名乗って来て、俺もそれに返してこれからの事を話す為に向かいに座った。
商人【コウサル】は、食料の支援をしてほしいと裏もなく言って来て、俺は当然了承した。


「そんなに簡単に、メンヤ殿良いのですか?」
「当然だよコウサル、料理のお礼を伝えるために来てくれるなんて、俺にとって最高の出来事だ」


例え俺との交渉をしたかったコウサルの思惑があったとしても、そこに至るまでの努力は凄いし、何よりあの子たちの気持ちは嬉しかった。
あの子たちを不幸にするなら許さないが、コウサルならそんな事をしないで商売に回すだろう。


「マゼラントとは違うな」
「何か言いましたか?」
「いやこっちの話だ、それよりも輸送をどうするかだな」


ハーピーの様な輸送隊を送っても良いが、運ぶ場所が街となると問題がある。
そこでコウサルは、ここに来る途中にあった村までの輸送を依頼して来て、俺は何となく分かったよ。


「ここを探られたくないわけか」
「その通りですメンヤ殿・・・実は、隣の街マゼンダにいる商人が問題でして」
「ああ、そっちとは既に決裂してるよ」
「そうでしたか、通りで知っているわけですね」


その通りと、俺は思い出してイライラして来た。
その商人は、自分の利益しか考えず事、もあろうに俺の店舗を乗っ取ろうとして来た。


「それだけなら別に良いんだが、平民の食事まで奪おうとして来てな」
「浅はかですね、稼ぐ方法なんていくらでもあるのに」
「そう言う事だ、弱い者から絞り取るやり方を選んだから、こちらから拒絶した」


俺の指示で街に店舗を開いた、レイスのレインスターが作った料理を残したんだ。
それは何よりも許せず、絶対謝っても許さないと、俺はここで宣言したよ。


「あなたは、誇りある料理人なのですね」
「最初は違ったんだがな、みんなのおかげでそんな気持ちになった、だからコウサルの行いにもそれを感じたんだ」
「誠意には誠意と言う事ですね」
「そう言う事だ、だから何でも言ってくれ、叶えられる範囲でやらせてもらう」


コウサルと握手をして、俺は人種族にではなく、商人コウサルと手を組んだ。
途中の村も、良くしても良いと言う事なので、モンスターを派遣して立派にしようと考えた。


「これで、領主【ミサナ】様も喜びます」
「その人とのつながりを欲しかったんだろ?」
「分かりますか?」
「ああ、だからマゼラントを落としたかったんだよな」


情報は集まっていて、マゼラントもその人との婚姻を狙っていた。
そんな情報を貰えたのも、平民の人たちからの話だったが、噂話と言うのは何処も緩んだ空気の中でしか聞けない。


「ただなコウサル、俺はダンジョンマスターだし、注意しないといけないからな」
「分かっています、ですが有益で安全と示せば良いのです」
「それだけではダメだぞコウサル、根も葉もなく噂を作って来るかもしれない」


獣人の国を支援している俺が、コウサルと繋がっていると分かれば、良からぬ事を考える奴らはいる、いまの内の手を打っておけと伝えた。
その為の支援で、食料ならいくらでも流すと約束したよ。


「まずその村を発展させてからだが、食料以外もあるから良ければ見てくれるか?」
「それは喜んで」


コウサルに銀や金で出来た食器を見せると、それはもう驚いて来たよ。
それは料理に使うわけではなく、店の装飾品として使っていた店があったから、俺のスキルで交換出来たんだ。


「す、素晴らしい!?」
「後は、化粧品とか石鹸も良いかも知れない」
「そ、そんな物まで、是非取り扱わせていただきます」


室井が言っていた事をそのまま提案して通したが、守りを固めてからと固く言われたのも思い出していた。
コウサルが領主と仲良くなっても、まだまだ足りないだろうと仲間に取り込むために出したが、よく考えて使うように注意したよ。


「承知しています、これだけあれば必ず出来る事でしょう」
「それなら言い、無理はするなよコウサル」
「命が一番なのは分かっていますよメンヤ殿」


それではっと、コウサルが席を立ち俺たちは他の人たちと合流した。
ダンジョンの外に出たコウサルたちに手を振り、随分色々増えたと思ったよ。


「最初はニャースラたちだけだったのにな」
「マスターのお人柄が良いからですわ」
「まぁ本来はダンジョンだからな」


混乱なんてさせれないと思って手を振るが、食料などの供給は混乱を招く事もあるので、コウサル次第と思っていた。
そして、争いは起きるだろうと、問題の村【エンタ】がその中心になる予感だ。


「そうしますと、また部下を増やすのですか?」
「そうなるな」
「では、また強いモンスターを選びましょう」
「それなんだが、ちょっと俺に考えがある」


オーロラが不思議そうだが、室井が前に村の経営なら、やはりあれが良いと言っていた。
それは、力仕事ばかりの村で必要なモンスターで、数でそれを成せる者たちだ。


「そんなモンスターがいるのですか?」
「いなかったら言わないさ、調べたらこいつがいたんだ」
「ゴーレムですか?」


そう、俺が召喚するのは岩のモンスター【ゴーレム】で、ネームドにするのは大きなゴーレムではなく、レアゴーレムと言う俺たちサイズのオリハルコン製のゴーレムだ。
レアゴーレムを召喚して、早速名前を付けたんだ。


「君はレーアだ」
「ありがとう主」
「よろしく頼むよレーア」


村の話を伝え、悪い奴らが来たら倒すようにも伝えて、部下のゴーレムを100体出したんだ。
しかし、レーアもそうだが、100体のゴーレムまで女性の姿で、ゴーレムなのか?っと不安になったよ。


「どうして俺が召喚するとこうなんだ?」
「良いではありませんかマスター」
「気にしないでください主、容姿なんて関係ありません」


力は強く、必ず村を守って見せるとレーアは言ってくれるが、室井が言っていた事には使えそうもなくて困った。
室井は、ゴーレムを変形させて馬車や風車などで村を発展させる話をしてて、レーアたちはそれが出来そうもない。


「それでしたら、土魔法が使えますわよマスター」
「そうなのかオーロラ」
「ええ、ですので平気ですわ」


それなら良いかと、レーアと100体の女性ゴーレムに移動の準備をさせたんだ。
直ぐに食べれる食料や村で育てるタネと、追加の家畜を土の馬車に乗せてレーアたちの出発を見送ったんだ。
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