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2章 支店
30杯目 廃墟の食事店
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「ここがそうです」
マゼラント様のメイドであるアタシ【ルームル】は、外からはボロボロに見える廃墟を指差して知らせたら、マゼラント様が悩んでいます。
ここでほんとに食事が出来るのかと思っているんでしょうけど、入ればここがどれだけ異常なのかが分かるんです。
「いったい何が待っているのだ」
「それがですね、あの廃墟は地下に深く作られてて、そこがお店になってるんですけど、凄いんです」
「ルームル、それでは説明になっていませんよ」
執事のセイバス様に注意されますけど、地下にお店があると言うだけでなく、とても綺麗な部屋に整っていて、マゼラント様の屋敷の応接室並みなんです。
平民の通う食事屋とは比べ物にならない装飾品に、地下とは思えない明るさで、凄かったとお伝えしたの。
「そこにあの美味な料理が沢山あると言うんだな」
「そうなんですマゼラント様」
「マゼラント様、これは予想よりも注意が必要ですね」
「その様だなセイバス」
おふたりが緊張しましたけど、アタシはそうでもなくて先頭でお店に入りました。
1階には、直ぐに地下に繋がる階段があって、アタシたちはその階段を降ります。
「ここがそうなのか?」
「もう少し先ですよ、ここまではほんとにボロボロなんです」
「カモフラージュなのでしょうな」
1階もボロボロで、こんなところに食事屋があるとか普通は思いません。
でも、平民たちは既に誰もが知っていて、それなのに行列が出来てないのは中が凄く広いからなんです。
「この扉か」
「はいマゼラント様、開けるとメイド服を着た子供が待っていまして、その子が個室に案内してくれるんです」
「ほう、全て個室なのかな?」
「そうみたいです、だから他のお客さんとは会いませんし、問題の妖精だか幽霊にも会えません」
おふたりが納得してくれて、だからこそ情報が少ないんです。
これも情報隠蔽の為なのかもしれないけど、モンスターが出て来るよりも安心出来ます。
「それでは行きますよ」
「料理は頼んだぞルームル」
「お任せくださいマゼラント様」
扉を開けて、子供に3人と告げると部屋に案内されて、ワタシは部屋に着いてそのまま料理も頼みました。
ワタシがここで頼むいつもの品で、シャキシャキの野菜が美味しいタンメンです。
「タンメン3人前とギュウザ3つですね、畏まりました」
子供が直ぐに部屋を出て行き、アタシは部屋の真ん中に置いてある椅子をマゼラント様とセイバス様に勧めます。
料理の名前を知らないお二人は、アタシを見て不思議そうに聞いてきますが、あのスープとはまた違った料理で美味しいと伝えました。
「それは楽しみなのだが、交渉をしに来たのだから呼んでもらわんとな」
「食事も気になりますけどね」
「料理の味は後でも確認は出来るだろうセイバス、まずは交渉だ」
マゼラント様の気持ちは分かりますけど、急ぎ過ぎてはきっとうまく行きません。
まずは料理を食べて、相手とお話が出来るようにしてほしいとお願いしました。
「共通の話題を作るわけだな」
「それにここの人たちは、あの料理を食事以上にスキなんです」
「何かあるようだな、良く分かったルームル」
マゼラント様は、なんとなくでも分かってくれて、きっと任せられると思って料理が来るのを待ちました。
子供が料理を運んできた時、アタシは責任者とのお話をお願いしました。
「責任者ですか?」
「はい、ちょっとお話がありまして、ダメですか?」
「分かりました、聞いてみます」
「よろしくお願いします」
ようやく進む事になったけど、マゼラント様とルームル様は、せっかくの料理の味が分かってない感じで、アタシはちょっと心配になりました。
そんな状態でここの責任者のレイスが部屋に来て、お互いに自己紹介をしたけど、レイスのレインスターさんは、残ってる料理を見てちょっと不機嫌です。
「それで、お話と言うのは?」
「そうですね、周りくどい事は致しません、自分と手を組みましょうレインスター度の」
「手を組むですか」
「はい、自分はこの街でも名の知れた商会を組織しています、あなたの扱う品が加われば更なる利益が期待できます」
マゼラント様は、ここがどんなところなのかを理解してなくて、どんどん悪い方にお話を進めて行き、遂にはレインスターさんに言ってはいけない質問を口にしてしまったんです。
その言葉は「いくら値段を上げても客は来る」でした。
「そうですか、それは凄いですねぇ」
「そうですよレインスター殿、だから共に商売をしましょう」
「お断りします」
レインスターさんの答えは即答で、マゼラント様はどうしてなのかが分かっていませんでした。
ここは、料金を払う事の無い場所だと告げられてしまったんです。
「そんな、ではここは」
「そうですよ、ここの料理は全て無料で提供しています」
「そんなバカな」
「変わりに情報を貰っています」
報酬が情報なのは、それがレインスターさんたちにとって一番欲しい物で、お金は要らなかったんです。
それを知らされ、マゼラント様が情報を集める事を約束したけど、そうなったらここの人たちが飢えて死ぬと怒ったのよ。
「この世界は食料が少なすぎます、それに大人数の情報の方がマスターは喜びます」
「マスター?」
「そうですよ、ワタシたちは平和に進めたいのです、苦しめる為にいるわけではないんです」
お金がないからタダで渡していたけど、その時にお話をしてくれる子がいたそうで、それがここまでになったと教えてくれたの。
それは、みんなが楽しそうに話してくれることで、ただ情報として得るだけじゃなかったんです。
「ですので、あなたのお話は断る一択なのです」
「そんな、それでは家の商売はどうなっても良いと言うのですか」
「平民向けにしなければ良いでしょう、どうせ売れないのです」
食事にお金を使わなければ、生活に余裕が出来て少しだけ贅沢をする様になる、そうなれば変わるとレインスターさんは言いますが、マゼラント様は納得しません。
貴族向けの商売に力を入れるべきと、マゼラント様は考えを纏めましたが、全ての住民がここに来る訳じゃないと、マゼラント様は苦し紛れに言ったんです。
「あら知らないのですね、ここには街の全員が入れる規模がありますわ」
「そ、そんな広さがあるわけ」
「あなたの心配はいりませんし、料理を残すあなたたちの事なんて知りません」
そう、マゼラント様は料理をしばらく口にしなくなっていて、しばらくしてレインスターさんが入って来ました。
料理をジッと見て、とても悲しそうな顔をしていたからアタシは分かったけど、空腹の苦しさを知らないのが心配だったんです。
「平民が苦しんでいるのにあなたは何もしなかった、今度はあなたが苦しむと良いですわ」
「お、オレのせいじゃないだろう、力の無い平民が悪いんだ」
「あなたも努力したんでしょうけど、ここで助けないのはどうかと思いますわね」
だから断られたと分からないのかとレインスターさんが怒って来て、もう話す事は無いと部屋の外に出てしまいました。
マゼラント様は怒っていましたが、お店の子供たちもアタシたちを睨んでいましたよ。
マゼラント様のメイドであるアタシ【ルームル】は、外からはボロボロに見える廃墟を指差して知らせたら、マゼラント様が悩んでいます。
ここでほんとに食事が出来るのかと思っているんでしょうけど、入ればここがどれだけ異常なのかが分かるんです。
「いったい何が待っているのだ」
「それがですね、あの廃墟は地下に深く作られてて、そこがお店になってるんですけど、凄いんです」
「ルームル、それでは説明になっていませんよ」
執事のセイバス様に注意されますけど、地下にお店があると言うだけでなく、とても綺麗な部屋に整っていて、マゼラント様の屋敷の応接室並みなんです。
平民の通う食事屋とは比べ物にならない装飾品に、地下とは思えない明るさで、凄かったとお伝えしたの。
「そこにあの美味な料理が沢山あると言うんだな」
「そうなんですマゼラント様」
「マゼラント様、これは予想よりも注意が必要ですね」
「その様だなセイバス」
おふたりが緊張しましたけど、アタシはそうでもなくて先頭でお店に入りました。
1階には、直ぐに地下に繋がる階段があって、アタシたちはその階段を降ります。
「ここがそうなのか?」
「もう少し先ですよ、ここまではほんとにボロボロなんです」
「カモフラージュなのでしょうな」
1階もボロボロで、こんなところに食事屋があるとか普通は思いません。
でも、平民たちは既に誰もが知っていて、それなのに行列が出来てないのは中が凄く広いからなんです。
「この扉か」
「はいマゼラント様、開けるとメイド服を着た子供が待っていまして、その子が個室に案内してくれるんです」
「ほう、全て個室なのかな?」
「そうみたいです、だから他のお客さんとは会いませんし、問題の妖精だか幽霊にも会えません」
おふたりが納得してくれて、だからこそ情報が少ないんです。
これも情報隠蔽の為なのかもしれないけど、モンスターが出て来るよりも安心出来ます。
「それでは行きますよ」
「料理は頼んだぞルームル」
「お任せくださいマゼラント様」
扉を開けて、子供に3人と告げると部屋に案内されて、ワタシは部屋に着いてそのまま料理も頼みました。
ワタシがここで頼むいつもの品で、シャキシャキの野菜が美味しいタンメンです。
「タンメン3人前とギュウザ3つですね、畏まりました」
子供が直ぐに部屋を出て行き、アタシは部屋の真ん中に置いてある椅子をマゼラント様とセイバス様に勧めます。
料理の名前を知らないお二人は、アタシを見て不思議そうに聞いてきますが、あのスープとはまた違った料理で美味しいと伝えました。
「それは楽しみなのだが、交渉をしに来たのだから呼んでもらわんとな」
「食事も気になりますけどね」
「料理の味は後でも確認は出来るだろうセイバス、まずは交渉だ」
マゼラント様の気持ちは分かりますけど、急ぎ過ぎてはきっとうまく行きません。
まずは料理を食べて、相手とお話が出来るようにしてほしいとお願いしました。
「共通の話題を作るわけだな」
「それにここの人たちは、あの料理を食事以上にスキなんです」
「何かあるようだな、良く分かったルームル」
マゼラント様は、なんとなくでも分かってくれて、きっと任せられると思って料理が来るのを待ちました。
子供が料理を運んできた時、アタシは責任者とのお話をお願いしました。
「責任者ですか?」
「はい、ちょっとお話がありまして、ダメですか?」
「分かりました、聞いてみます」
「よろしくお願いします」
ようやく進む事になったけど、マゼラント様とルームル様は、せっかくの料理の味が分かってない感じで、アタシはちょっと心配になりました。
そんな状態でここの責任者のレイスが部屋に来て、お互いに自己紹介をしたけど、レイスのレインスターさんは、残ってる料理を見てちょっと不機嫌です。
「それで、お話と言うのは?」
「そうですね、周りくどい事は致しません、自分と手を組みましょうレインスター度の」
「手を組むですか」
「はい、自分はこの街でも名の知れた商会を組織しています、あなたの扱う品が加われば更なる利益が期待できます」
マゼラント様は、ここがどんなところなのかを理解してなくて、どんどん悪い方にお話を進めて行き、遂にはレインスターさんに言ってはいけない質問を口にしてしまったんです。
その言葉は「いくら値段を上げても客は来る」でした。
「そうですか、それは凄いですねぇ」
「そうですよレインスター殿、だから共に商売をしましょう」
「お断りします」
レインスターさんの答えは即答で、マゼラント様はどうしてなのかが分かっていませんでした。
ここは、料金を払う事の無い場所だと告げられてしまったんです。
「そんな、ではここは」
「そうですよ、ここの料理は全て無料で提供しています」
「そんなバカな」
「変わりに情報を貰っています」
報酬が情報なのは、それがレインスターさんたちにとって一番欲しい物で、お金は要らなかったんです。
それを知らされ、マゼラント様が情報を集める事を約束したけど、そうなったらここの人たちが飢えて死ぬと怒ったのよ。
「この世界は食料が少なすぎます、それに大人数の情報の方がマスターは喜びます」
「マスター?」
「そうですよ、ワタシたちは平和に進めたいのです、苦しめる為にいるわけではないんです」
お金がないからタダで渡していたけど、その時にお話をしてくれる子がいたそうで、それがここまでになったと教えてくれたの。
それは、みんなが楽しそうに話してくれることで、ただ情報として得るだけじゃなかったんです。
「ですので、あなたのお話は断る一択なのです」
「そんな、それでは家の商売はどうなっても良いと言うのですか」
「平民向けにしなければ良いでしょう、どうせ売れないのです」
食事にお金を使わなければ、生活に余裕が出来て少しだけ贅沢をする様になる、そうなれば変わるとレインスターさんは言いますが、マゼラント様は納得しません。
貴族向けの商売に力を入れるべきと、マゼラント様は考えを纏めましたが、全ての住民がここに来る訳じゃないと、マゼラント様は苦し紛れに言ったんです。
「あら知らないのですね、ここには街の全員が入れる規模がありますわ」
「そ、そんな広さがあるわけ」
「あなたの心配はいりませんし、料理を残すあなたたちの事なんて知りません」
そう、マゼラント様は料理をしばらく口にしなくなっていて、しばらくしてレインスターさんが入って来ました。
料理をジッと見て、とても悲しそうな顔をしていたからアタシは分かったけど、空腹の苦しさを知らないのが心配だったんです。
「平民が苦しんでいるのにあなたは何もしなかった、今度はあなたが苦しむと良いですわ」
「お、オレのせいじゃないだろう、力の無い平民が悪いんだ」
「あなたも努力したんでしょうけど、ここで助けないのはどうかと思いますわね」
だから断られたと分からないのかとレインスターさんが怒って来て、もう話す事は無いと部屋の外に出てしまいました。
マゼラント様は怒っていましたが、お店の子供たちもアタシたちを睨んでいましたよ。
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