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2章 支店
27杯目 人種族の街の異変
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「これで20本目っと」
枯れ枝を拾い、ワタシは背負いカゴの中に入れて息を整えました。
ワタシはジーシェ、この街パージルに住む普通の住民の子供です。
「おーいジーシェ、そろそろ帰ろうぜぇ~」
「分かったわよミルト」
隣に住む、大工をしてるミドさんの息子のミルトに返事をして、カゴを背負って走ったワタシは、今日の夕飯の事を頭に浮かべてため息が出ました。
いつも同じで、薄い味のスープと黒くて硬いパンが出てきます。
「たまにで良いから、もっとおいしい物が食べたいなぁ~」
中央地区の食事屋さんに入れば、とても豪華で美味しい食事が食べれます。
でも、そこまでは望んでなくて、宿の食堂でも良かったんです。
「具の沢山入ったスープに、お肉も入ってればもっと良いわね」
「な~に贅沢言ってんだジーシェ」
「一度は食べたいじゃないミルト」
そうだけどっと、ミルトも無理なのは分かっていて、一緒にため息を付きました。
拾った枯れ枝は、売る為のモノではなく家の暖炉に使う物で、途中で拾ったキノコも薄味のスープに入れるだけなんです。
「もっとお金があればなぁ~」
「それが一番無理だろう」
「そうだけど、ワタシたちが働けるようになれば、少しは違うでしょ」
お父さんもお母さんも働いてて、妹の世話はワタシがしているけど、妹が大きくなれば働けるんです。
ワタシが8歳で妹は5歳、13歳の成人にはきっと変わると信じているんです。
「甘いぜジーシェ、オレの家を思い返せよ」
「うっ」
ミルトは、お兄さんが2人いて既に働いてるけど、ワタシと同じくらい貧乏です。
そんな現実には戻してほしくなくて、ミルトを睨んで怒ったのよ。
「そんな顔するなよ」
「だって、人が夢を見てたのに、酷いじゃないミルト」
「夢を見てたら、それこそ辛いだろ」
「そうかもだけど、希望を夢見て何が悪いのよ」
朝起きて妹の世話をして、お母さんが帰ってきたら、門の外に出て枯れ枝を拾う毎日、生きてるのか分からない日々なのに、夢を見てて何が悪いのかと言ったわよ。
ミルトも同じ気持ちで辛いんだけど、言わずにはいられなかったわ。
「悪かったよジーシェ」
「ワタシも、少し言い過ぎたわ、ごめん」
無言で歩き、居住区である西通りを歩いていると、ミルトが我慢できなかったのか、ワタシを呼びました。
暗いままで返事をして、顔は向けずにトボトボ歩いたけど、ミルトはそのまま話を始めたわ。
「真夜中の幽霊?」
「ああ・・・何でもな、夜寝る前に家の外に割れたお椀を置いておくと、次の日にそれは無くなってるんだが、代わりにその夜良い事が起きるそうだぞ」
「良い事?」
「噂じゃあ、この世の物とは思えない程、美味い物が届くんだってよ」
何よそれっと、ワタシは夢以上に信じられなかったわ。
ミルトも信じてなくて、やったことが無いと笑ってた。
「第一な、割れたお椀なんて作ったら、親父のゲンコツが飛んで来るぜ」
「あはは、確かにそうかも、叔父さん怖いもんね」
「そうだぜ、だから試すにしてもワザとなんて出来ねぇ」
それこそ、奇跡でも起きなければっと、怒られない様にする方が難しいと笑ってたわ。
家も同じで、大切な食器をワザと割るなんて出来ません。
「でも、そんな噂何処で聞いたの?」
「ああ、雑貨屋のおっちゃんが言ってたんだ」
「それって、食器を売りたいだけじゃ」
「その可能性が高いだろうな」
つまり、噂はただの噂と言う事で、なぁ~んだっと、ふたりでガッカリして家に帰ったわ。
家に帰っても、ワタシは落ち込んだままで、お母さんと料理を作ったんだけど、いつものスープにため息が出たわ。
「どうしたのジーシェ、元気ないわね」
「お母さん、どうしたらお金って沢山持てるかな?」
「そうねぇ、難しいわね」
それは答えになってなかったけど、お母さんも分からないと思ったの。
分かっていれば、こんな惨めな生活はしてないわけだし、ワタシはイヤになりました。
「ジーシェ、あなたは今幸せじゃないの?」
「お母さん・・・幸せなわけないよ」
「そう?お母さんは幸せよ」
ワタシがいてお父さんがいて妹のジーミがいる、それがとても幸せだそうです。
それを聞いたら、ワタシも気にならなくなって、お母さんと笑顔で料理を進めたの。
「元気なジーシェが戻って来たわね」
「うん、お金なんて無くても、みんなでいれば幸せだよね」
「そうね」
お鍋を持ってお母さんがテーブルに運んだ行き、ワタシもパンのカゴに持って続きました。
ふたりでテーブルに並べていたら、ジーミもお手伝いがしたかったのか、お皿を持って歩いて来て、転びそうになったからワタシは支えたんだけど、テーブルにぶつかってしまいお椀が落ちちゃったの。
「あらあら、ふたりとも平気?」
「ごめんなさいお母さん、食器を割っちゃった」
「ふたりが怪我しなかったのなら良いのよ、ほんとに平気?」
ワタシは妹の確認をして自分も怪我をしてない事が分かったけど、割れたお椀がどうしても気になりました。
お母さんにもお話して、どうせ割ってしまったのだからと、試す事に賛成してもらえました。
「うふふ、夢のあるお話ね、楽しみだわ」
「でもお母さん、それを流したの雑貨屋のイーズさんなんだよ」
「あらあら、それじゃあ夢も希望もないわね」
あははっとふたりで笑って、丁度お父さんが帰って来て夕食を食べて寝たんです。
そして、朝になってそんな事を忘れていつも通り過ごし、お母さんと交代して外に出た時、お椀を置いた場所を見て思ったわ。
「無くなってるけど、きっとお母さんが片付けたんだよね」
誰かが持っていった事も考えられて、その程度にしか思いませんでした。
そして、いつも通りミルトと合流して門の外に出たんだけど、当然の様に話したのよ。
「って事は、今日の夜には分かるのか?」
「そうだけど、そんな事起きないわよ」
「んだよっジーシェ、夢を持ってたのはお前だったのに、そんな事言うなよ」
「だったら、ほんとに食事が届いたらどうするのよ」
ミルトに聞いたら、そんな見え見えの勝負はしないとか、結局信じてない事が分かったわ。
現実はそんなモノで、ワタシも信じてなかったけど、昨日よりは楽しく1日を過ごせたのよ。
「じゃあなジーシェ」
「うん、また明日ねミルト」
「おう」
いつもの様に別れ、ワタシは家に入ったんだけど、テーブルの上に大きな箱が置いてあったの。
お母さんが置いたのかと思って聞いたんだけど、箱を見てびっくりしてたわ。
「お母さん?」
「い、何時からここにあったのかしら」
「もしかして気付かなかったの?」
「ええ、今初めて見たわ」
お母さんの反応を見て、もしかして本当に?っと思ってしまい、ワタシはお母さんと一緒に箱の蓋を開けたの。
その箱の中には、大きなお鍋が入っていて、スープがたっぷりでした。
「これって、ジーシェが言ってた噂のやつよね」
「た、多分」
「もしかして、本当だったのかしら?」
もしかしなくても、スープがここにあるからそうだと思ったけど、味が気になりました。
お母さんも同じで、今日の夕飯はそれになり、みんなで一口食べて顔を見合ったわ。
「う、美味い」
「ほんとに」
「おいしいねぇ~」
野菜やお肉が沢山入っていて、高いお店で食べれるパスタも入っていました。
すっごく美味しくて、ワタシは夢が叶って嬉しかったわ。
ほんとに夢の様で、ベッドに入ってもその気持ちは収まらなくて、なかなか寝付けなかった。
「明日、絶対ミルトに教えなくちゃね」
なかなか寝付けないワタシは、次の日寝不足になったけど、ベッドから起きてお母さんたちに挨拶をして、テーブルに置かれたあのお鍋を見てびっくりしたんです。
「ど、どうしてまたあるのお母さん」
「それがね、朝起きたらテーブルに置かれてて、中身も一杯だったのよ」
その日から、ワタシの家ではスープが復活すると言う不思議な事が起きるようになり、朝晩あのスープが食べられるようになりました。
でも、食べてなくなったスープが復活するわけもなく、ワタシはその原因を偶然知って怖くなったんです。
枯れ枝を拾い、ワタシは背負いカゴの中に入れて息を整えました。
ワタシはジーシェ、この街パージルに住む普通の住民の子供です。
「おーいジーシェ、そろそろ帰ろうぜぇ~」
「分かったわよミルト」
隣に住む、大工をしてるミドさんの息子のミルトに返事をして、カゴを背負って走ったワタシは、今日の夕飯の事を頭に浮かべてため息が出ました。
いつも同じで、薄い味のスープと黒くて硬いパンが出てきます。
「たまにで良いから、もっとおいしい物が食べたいなぁ~」
中央地区の食事屋さんに入れば、とても豪華で美味しい食事が食べれます。
でも、そこまでは望んでなくて、宿の食堂でも良かったんです。
「具の沢山入ったスープに、お肉も入ってればもっと良いわね」
「な~に贅沢言ってんだジーシェ」
「一度は食べたいじゃないミルト」
そうだけどっと、ミルトも無理なのは分かっていて、一緒にため息を付きました。
拾った枯れ枝は、売る為のモノではなく家の暖炉に使う物で、途中で拾ったキノコも薄味のスープに入れるだけなんです。
「もっとお金があればなぁ~」
「それが一番無理だろう」
「そうだけど、ワタシたちが働けるようになれば、少しは違うでしょ」
お父さんもお母さんも働いてて、妹の世話はワタシがしているけど、妹が大きくなれば働けるんです。
ワタシが8歳で妹は5歳、13歳の成人にはきっと変わると信じているんです。
「甘いぜジーシェ、オレの家を思い返せよ」
「うっ」
ミルトは、お兄さんが2人いて既に働いてるけど、ワタシと同じくらい貧乏です。
そんな現実には戻してほしくなくて、ミルトを睨んで怒ったのよ。
「そんな顔するなよ」
「だって、人が夢を見てたのに、酷いじゃないミルト」
「夢を見てたら、それこそ辛いだろ」
「そうかもだけど、希望を夢見て何が悪いのよ」
朝起きて妹の世話をして、お母さんが帰ってきたら、門の外に出て枯れ枝を拾う毎日、生きてるのか分からない日々なのに、夢を見てて何が悪いのかと言ったわよ。
ミルトも同じ気持ちで辛いんだけど、言わずにはいられなかったわ。
「悪かったよジーシェ」
「ワタシも、少し言い過ぎたわ、ごめん」
無言で歩き、居住区である西通りを歩いていると、ミルトが我慢できなかったのか、ワタシを呼びました。
暗いままで返事をして、顔は向けずにトボトボ歩いたけど、ミルトはそのまま話を始めたわ。
「真夜中の幽霊?」
「ああ・・・何でもな、夜寝る前に家の外に割れたお椀を置いておくと、次の日にそれは無くなってるんだが、代わりにその夜良い事が起きるそうだぞ」
「良い事?」
「噂じゃあ、この世の物とは思えない程、美味い物が届くんだってよ」
何よそれっと、ワタシは夢以上に信じられなかったわ。
ミルトも信じてなくて、やったことが無いと笑ってた。
「第一な、割れたお椀なんて作ったら、親父のゲンコツが飛んで来るぜ」
「あはは、確かにそうかも、叔父さん怖いもんね」
「そうだぜ、だから試すにしてもワザとなんて出来ねぇ」
それこそ、奇跡でも起きなければっと、怒られない様にする方が難しいと笑ってたわ。
家も同じで、大切な食器をワザと割るなんて出来ません。
「でも、そんな噂何処で聞いたの?」
「ああ、雑貨屋のおっちゃんが言ってたんだ」
「それって、食器を売りたいだけじゃ」
「その可能性が高いだろうな」
つまり、噂はただの噂と言う事で、なぁ~んだっと、ふたりでガッカリして家に帰ったわ。
家に帰っても、ワタシは落ち込んだままで、お母さんと料理を作ったんだけど、いつものスープにため息が出たわ。
「どうしたのジーシェ、元気ないわね」
「お母さん、どうしたらお金って沢山持てるかな?」
「そうねぇ、難しいわね」
それは答えになってなかったけど、お母さんも分からないと思ったの。
分かっていれば、こんな惨めな生活はしてないわけだし、ワタシはイヤになりました。
「ジーシェ、あなたは今幸せじゃないの?」
「お母さん・・・幸せなわけないよ」
「そう?お母さんは幸せよ」
ワタシがいてお父さんがいて妹のジーミがいる、それがとても幸せだそうです。
それを聞いたら、ワタシも気にならなくなって、お母さんと笑顔で料理を進めたの。
「元気なジーシェが戻って来たわね」
「うん、お金なんて無くても、みんなでいれば幸せだよね」
「そうね」
お鍋を持ってお母さんがテーブルに運んだ行き、ワタシもパンのカゴに持って続きました。
ふたりでテーブルに並べていたら、ジーミもお手伝いがしたかったのか、お皿を持って歩いて来て、転びそうになったからワタシは支えたんだけど、テーブルにぶつかってしまいお椀が落ちちゃったの。
「あらあら、ふたりとも平気?」
「ごめんなさいお母さん、食器を割っちゃった」
「ふたりが怪我しなかったのなら良いのよ、ほんとに平気?」
ワタシは妹の確認をして自分も怪我をしてない事が分かったけど、割れたお椀がどうしても気になりました。
お母さんにもお話して、どうせ割ってしまったのだからと、試す事に賛成してもらえました。
「うふふ、夢のあるお話ね、楽しみだわ」
「でもお母さん、それを流したの雑貨屋のイーズさんなんだよ」
「あらあら、それじゃあ夢も希望もないわね」
あははっとふたりで笑って、丁度お父さんが帰って来て夕食を食べて寝たんです。
そして、朝になってそんな事を忘れていつも通り過ごし、お母さんと交代して外に出た時、お椀を置いた場所を見て思ったわ。
「無くなってるけど、きっとお母さんが片付けたんだよね」
誰かが持っていった事も考えられて、その程度にしか思いませんでした。
そして、いつも通りミルトと合流して門の外に出たんだけど、当然の様に話したのよ。
「って事は、今日の夜には分かるのか?」
「そうだけど、そんな事起きないわよ」
「んだよっジーシェ、夢を持ってたのはお前だったのに、そんな事言うなよ」
「だったら、ほんとに食事が届いたらどうするのよ」
ミルトに聞いたら、そんな見え見えの勝負はしないとか、結局信じてない事が分かったわ。
現実はそんなモノで、ワタシも信じてなかったけど、昨日よりは楽しく1日を過ごせたのよ。
「じゃあなジーシェ」
「うん、また明日ねミルト」
「おう」
いつもの様に別れ、ワタシは家に入ったんだけど、テーブルの上に大きな箱が置いてあったの。
お母さんが置いたのかと思って聞いたんだけど、箱を見てびっくりしてたわ。
「お母さん?」
「い、何時からここにあったのかしら」
「もしかして気付かなかったの?」
「ええ、今初めて見たわ」
お母さんの反応を見て、もしかして本当に?っと思ってしまい、ワタシはお母さんと一緒に箱の蓋を開けたの。
その箱の中には、大きなお鍋が入っていて、スープがたっぷりでした。
「これって、ジーシェが言ってた噂のやつよね」
「た、多分」
「もしかして、本当だったのかしら?」
もしかしなくても、スープがここにあるからそうだと思ったけど、味が気になりました。
お母さんも同じで、今日の夕飯はそれになり、みんなで一口食べて顔を見合ったわ。
「う、美味い」
「ほんとに」
「おいしいねぇ~」
野菜やお肉が沢山入っていて、高いお店で食べれるパスタも入っていました。
すっごく美味しくて、ワタシは夢が叶って嬉しかったわ。
ほんとに夢の様で、ベッドに入ってもその気持ちは収まらなくて、なかなか寝付けなかった。
「明日、絶対ミルトに教えなくちゃね」
なかなか寝付けないワタシは、次の日寝不足になったけど、ベッドから起きてお母さんたちに挨拶をして、テーブルに置かれたあのお鍋を見てびっくりしたんです。
「ど、どうしてまたあるのお母さん」
「それがね、朝起きたらテーブルに置かれてて、中身も一杯だったのよ」
その日から、ワタシの家ではスープが復活すると言う不思議な事が起きるようになり、朝晩あのスープが食べられるようになりました。
でも、食べてなくなったスープが復活するわけもなく、ワタシはその原因を偶然知って怖くなったんです。
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