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1章 開店

16杯目 予想外の鬼神

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さぁ新たな仲間の召喚をしよう。
そう言った俺は、50万Pを使って鬼神を1体召喚した。


「お、オーロラ、これって標準なのか?」
「どうしましたマスター?」
「いや、俺の想像していた鬼神ではなくて、ちょっとビックリだ」


そう、召喚された鬼神は紫色の着物を着た美人のお姉さんで、オーロラ同様に女性だった。
ムキムキでイケメンの鬼が出て来ると思っていた俺に、オーロラはオスならそんな容姿と教えてくれた。


「つまり、女性が召喚されたわけだよな」
「そうなりますわね」
「そうすると、オーロラたちもそうだよな?」
「そうですわね」


エビルプラントは分からないが、ゴーストも女性だった事になり、その確率は偏っていた。
オーロラはたまたまと言って来るが、ほんとにそうなのかと疑問が残ったよ。


「でもさ、彼女に家畜の世話を任せるのか?」
「その為に召喚しましたし、既に指示を出しましたわマスター」
「それもそうか、じゃあ名前だが、髪がピンクで綺麗だから、さくらにしよう」


鬼神の名前が決まり、飼育の様子を見たんだが、さくらはしっかりとこなしてくれた。
着物でしゃがむ仕草がとても綺麗で、俺は見惚れてしまったよ。


「辛かったら言ってくれよさくら」
「わかりました、優しい主様」
「ポイントが貯まったら、さくらの部下も召喚するからな」


さくらと約束をして、まずは歓迎会と言うことで、店に戻ってお昼も兼ねた食事会が始まった。
さくらはニャースラたちとも仲良く出来て、ミケミたちに世話の説明も出来る優秀さを持ち、これはオーロラ同様に優秀と思ったよ。


「やっぱりすごいんだな」
「マスターがいるからですわよ、普通はこういった間柄にはなりませんわ」
「まぁダンジョンだしな」


そういう事っとオーロラに言われて、戦うよりもこっちがいいと思った。
そんな思いのままで、他の種族の方はどうだったか聞いたんだが、ミケミは予想通りの展開と答えて来たよ。


「って事は、難しいのか?」
「そうだね、向かって来るなら戦うしかないよメンヤ」
「無理はするなよ、客が来なくなるのは寂しいぞミケミ」
「あたいたちは戦いを好む種族だよメンヤ、これは避けられないのさ」


最初に話し合いをしたのも戦う前準備で、この後は時間と場所を決めて戦う事が予定されていた。
場所は森の広場と決まっていて、数日後にそこに向かうそうなんだ。


「集落を攻めたりとかはしないのか?」
「あたいたちの戦いには決まりがあるんだよメンヤ、これは狩りとは違う」
「そうなのか」


何だか心配になったが、そう言う戦い方もあると納得はした。
しかし、俺が安心する為にも守りを固めたくなったな。


「3日後、あたいたちは戦いに向かう、子供たちを任せられるかなメンヤ殿」
「勿論だ、留守は任せてくれミケミ」
「もし、あたいたちが戻らなければ、その時は頼んだよ」


深刻そうだが、それだけでは俺の気がすまないので、それまでに準備をしようと決めたんだ。
今はポイントが足りないが、ミケミたちの戦いを穢さない様、ミケミたちが寝静まった夜にオーロラとさくらを集めたんだ。


「ふたりの意見を聞きたい、ミケミたちを助けたいんだが、外の守りに付けるならどんなモンスターが良いかな」
「それなら、植物系がよろしいですわ」
「オーロラ様の言う通り、森ならばそれが良いと思います」


ふたりの答えに、俺は納得してモンスターを決めたが、あくまでも守り重視とふたりに宣言をした。
問題はミケミたちの方で、戦うのだから被害は出ると言う事だ。


「普通なら、作戦を立てて出来るだけ有利に済ませるんだが、ミケミの話を聞く限り無理そうなんだ」
「それでしたら、負傷した者をすぐに治療しましょう」
「それは良いですわ、ミケミさんの話では、戦いの敗者は勝者の言う事を聞くモノらしいのですわよ」


戦いと言っても、どちらが上なのかを決める試合の様なモノとオーロラが教えてくれて、俺は両方の負傷者を治す事を決めた。
そして、治療した者は退場と言う形を取り、勝者を決める流れに持ち込もうと考えたんだ。


「ミケミたちが勝つことを信じての作戦ですわねマスター」
「まぁそうだが、森の集落でこれだからな」
「外に情報が流れたら、それ以上になるとお考えですか?」
「その通りださくら、その為にも森の中では強固な絆を持っておきたい」


外の情勢が分からない状態ではこれが一番、これは室井も言っていた事で、異世界では争いが絶えないと教えてくれた。
味方は出来るだけ多い方が良いから、俺も出来るだけモンスターを増やそうと考えていたんだ。


「とはいえ、俺が出せるのはモンスターだからな」
「ミケミさんたちに交渉を任せるしかありませんわ」
「一緒にも行けませんよね」


だからこそ、森では動ける様にしておく必要があり、仲間を集めておく作戦だった。
しかし、死人が生き返る方法は無いそうだから、そこはほんとに注意したいとボソッと口にしたよ。


「主様はほんとに優しいですね」
「当然ですわ、マスターは優しいお方なのですわよ」
「そんなんじゃないさ」


大切な人を無くす気持ちは、とても悲しくて苦しいものと知っているから言ってるだけなんだ。
室井が交通事故で命を落としてから、俺の心にはずっと穴が空いてて、悲しみはいつまでも抜けない。


「そんな気持ちをニャースラたちに持ってほしくないのさ」
「それが優しいと思います」
「言っておくが、ふたりにも言える事だからな、決して俺の為に死のうとか言うなよ」


ふたりは、俺の一言に身体を強張らせた。
きっと、外の戦いが激化したらそんな事を考えていたんだろう。


「室井が言っていたが、ほんとにそんな事を考えていたのかよ」
「ですが、マスターはワタクシたちが命を持って守らねばならないお方ですわ」
「そうですよ主様、この命は主様のモノなのです」
「それなら、俺の為に生きてくれよ」


俺だけが生き残るなんて絶対に拒否したかった、室井が死んで残された時に思っていた事だ。
ふたりが泣きそうなくらい嬉しそうだが、みんながいなくなったら、ラーメンを食べれたとしてももうダメだろう。


「だからな、共に生きてくれよ」
「わかりました主様」
「必ず、マスターの願いを叶えますわ」


ふたりに約束をして、室井の時に出来なかった誓いを立てる事が出来たんだ。
ポイントはまだ足りないが、モンスターの選定だけを進めたよ。


「エルダートレントとラフレシアかな?」
「ラフレシアは回復も出来ますし、エルダートレントは擬態もできます」
「そうですわね、それが良いと思いますマスター」


方針が決まり、戦いまでは準備の時間になったんだが、3日間は平和に過ぎた。
ポイントはミケミたちがいるので増えて行き、サクラの部下の召喚が優先されたが、ネームドモンスターと部下を召喚し外の守りも固まった。
そして、戦いの報告はエルダートレントの【ミキ】とラフレシアの【ローズ】によっていち早く聞く事が出来たよ。
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