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2章 幸せ異世界生活

27話 戻って見て

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「そんなバカな!?」


戦場から5日を掛けて戻ったオレたちは、王都の旗が違う事が分かって愕然とした。
多々良の言っていた事は本当で、どうしてこんな事が出来るのかと信じられなかった。


「姫は、カーラは無事か!!」


馬を降りて、オレは自分の足で全速力で城に走った。
しかし、そこにはオレの知っている風景のままで、何も変わった様子が見られなかった。


「あら?イデミツ様、どうされましたの?」
「どうしたじゃないぞカーラ、あの旗はなんだ」
「ああ、あれですか」


カーラの話では、同盟を組んだ代償だそうで、旗を変えただけでこちらは何も払わないで良いそうなんだ。
だから、二つ返事で了承したらしく、国王のオレに判断を仰がなかったそうだ。


「だからって、オレがいない間は決めてほしくなかったぞカーラ」
「そうですね、申し訳ありませんイデミツ様」
「それはもう良いが、今後はどうなる?」


素直に謝って貰えて、オレは次の事に移ったが、食料に修繕とオレたち側に良い事だらけで怖くなったな。
カーラは、オレの力を恐れてると言って来たが、そんな感じを受けなかった。


「乗っ取られないか?」
「平気ですわ、イデミツ様さえいれば」
「そうか、それなら安心だ」


生徒のほとんどは、元の世界に帰るだろうがオレは違う、この世界でカーラと共に生きると決めてるんだ。
国王の後を継いだ時点で、オレは覚悟を決めてて、カーラもそれを知ってると思っていたが、どうやら愛が足りなかったらしい。


「カーラ、今後は下の名で呼んでくれよ」
「急にどうしましたの?」
「オレはカーラを愛してる、例え元の世界に戻れるとしても、オレはカーラと一緒にここで一生を過ごすよ」


しっかりとした告白をしたオレは、カーラを抱きしめた。
カーラは驚いていたが、ぎゅっと返してくれて、幸せを感じる事が出来たんだ。


「わたくしも愛していますゲンヤ様」
「ああ、これからも一緒に暮らそう」
「はい、何時までも幸せにいましょうね」


カーラもオレと同じ気持ちになってくれて、その日は長旅の疲れもあって一緒に寝るだけに終わった。
しかし、オレが目を覚ますと、身体は動かず、口には布が詰められていた。


「起きましたねゲンヤ様」
「んん、ん~」
「あらあら、何を言ってるのか分かりませんわね」


オレに声を掛けて来てるのは、さっきまで愛を確かめ合っていたカーラで、どうしてオレは縛られてるんだと口を塞がれても言ったんだ。
ほんとはカーラも分かっていた事だろうが、口を解放されて言わずにはいられなかった。


「どうしてだカーラ」
「どうして?それはこちらのセリフですわよゲンヤ」


カーラは、オレに様を付けずに話始め、オレが多々良を許していないことを言い当てられた。
そして、それが原因で戦争が始まる事も言ってきて、同盟を崩したくない事が語られたよ。


「オレよりも、同盟が大事なのかカーラ」
「そうですわよゲンヤ、あちらの支援は絶大です・・・そう、奪うよりも、あなたよりも魅力なのです」


そんなにすごい支援がされたのかと思ったが、カーラの気持ちは変わりそうもない。
だから、オレも本気で力を出して拘束を解く事にした。


「ふふふ、無駄ですわよゲンヤ」
「ぐぅ~どうしてだ、ただの紐なのにどうして切れない」
「ふふふ、あなたの首には既に奴隷の首輪が付けられています、気づきませんでしたか?」


首を触る事が出来ないオレだが、顎でほんとにある事が確認できた。
寝てる間にそんな物まで着けられ、更には拘束もされてしまっていたんだ。


「まさか!?食事に薬を」
「ふふふ、やっと分かりましたかゲンヤ、あなたは帰って来てからずっと騙されていたのよ」
「どうして、なんでなんだカーラ」
「さっきも言いましたけど・・・そうですね、一番の原因はあなたよゲンヤ」


オレが悪いと言われ、どうしてなのかが余計分からなかった。
カーラを愛していると告白し、みんなよりもカーラを取った、それなのにどうしてなんだと叫んだよ。


「まったく、うるさいわねゲンヤ、わたくしが欲しかったのは、貴方ではなく贅沢な暮らしなのよ」
「そんな!?それならオレが」
「あなたがそれをくれるのは、まだまだ先でしょゲンヤ」


同盟を組めば、それが直ぐに手に入るからオレを差し出したと、カーラ本人から言われてしまい、オレは力が抜けていくのを感じた。
そして、これからはカーラの奴隷としての暮らしが待っていて、オレにはもう選択肢は無かった。


「でも安心してゲンヤ、あなたの欲しかったわたくしは一緒にいるわ」
「オレが欲しかったのは、カーラとの明るい暮らしだ、奴隷関係じゃない」
「わたくしにとっては同じ事よゲンヤ」


オレを愛していなかったのが、カーラの言葉から伝わって来て、オレの何かが壊れた気がした。
それからは、もう何も言わず帰りたいという気持ちだけが込み上げて来た。


「日本に帰りたい」
「ふふふ、あなたが帰れるわけないでしょ、ずっとわたくしの奴隷よ」
「そ、そんな!?みんなだって帰るんだろ」
「あなたと他の人は違ったでしょ、あなたは向こうの提案を蹴って1人になったのよ、これはその結果なの」


意見を変えなかったのが原因と言われ、オレはもう何も返せなかった。
何もかもを失い、カーラの元にいられる幸せだけに身を任せるしかなかったよ。


「ふふふ、何を考えてるのか分かるわよゲンヤ、でもね、考える事はしなくて良いのよ」


カーラがオレの前に座り、手を差し出してお手と言って来た。
オレには、それに絶える事が出来ず、助けてくれと懇願した。


「ふふふ、もう遅いのよゲンヤ、ほらお手よ」
「うぅ~」


唸りながらも、オレはカーラの手にお手をしてしまった。
ほんとに人ではなくなった感覚に襲われ、涙が込み上げて来たよ。


「やっと折れたわねゲンヤ、これであの人の言っていた門が開くのを待つだけね」
「も、門?」
「そうよゲンヤ、あなた達の世界と繋がれば、わたくしの暮らしは盤上になるの」


それが無くても、多々良はより良い暮らしをカーラに与える事を契約したらしく、オレに勝ち目がない事が分かったんだ。
あの時、アイツの言う事を聞いていれば、オレの頭の中はその事でいっぱいになり、本当に何かが崩れていったんだ。
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