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4章 コスで救済

68話 トラウマ

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黒い雷が降り注ぎ僕はもうダメだ、そう思ったんだ、だけど痛みを感じませんでした、それは強すぎるダメージを受けたからなんだと、目をゆっくり開け自分の現状を見ました、どこも焦げ跡が無く変に思って前を見ます、そこには解体屋のコスを着た僕の後ろ姿があったんだよ。


「松なの?」

「そうだよ主、あいつが怖いのは分かる、だけど逃げてちゃだめだろ!」


分身の松の1が守ってくれたんだ、でも僕には無理です、あいつの顔を見ると怖くて仕方ない、心が折れてしまうんだよ。
今だって立ち上がれない、足を掴んでうずくまり、その場で丸まって動けないんだ、学校に行けなくなった時、ベッドの上でしていた体勢です、こうしてないとダメなんだよ。


「じゃまするなよゴミが、俺様の最大魔法を打ち消しやがって、タダじゃおかねぇぞ!」


黒田が手をこっちに向けたのを見て、僕は頭を抱えて目を瞑ったんだ、だけどまた衝撃は来なかった、地面に体が付いてない感じがするから松が運んでくれてると分かりました。
目を開けると、分身たちが冒険者たちも運んでいるのが見えます、何も出来ずあの場から逃げたんです、僕はみんなの本体なのに何も出来なかった。


「どうして松たちは平気なの?」

「それはね、主を守るって覚悟をしたからだよ、ほんとは足がガクガクしてる」


走りながらそれだけの差だと言います、確かに足は震えていました、だけど僕なんかよりも全然しっかりしてる、分身の経験や情報は解除しないと手に入りません、長時間の分身たちは、まだ解いてないさら情報はかなり後になるんだ。
それでも僕は情けないよ、男の姿でも平気な様になってきていたんだ、でもまた元に戻ってしまったと泣きました。


「ここに来て、僕は変われたと思っていた・・・だけど違ったんだ、もう嫌だよ僕」


あそこから逃げきった僕は、ある場所のベッドの上で1月震えて過ごしました、あれだけ少しずつ頑張って慣らしてきたのに一瞬で戻っちゃった、努力しても何も変わらなかった、積み上げて来た物が無くなったんだ。
布団をかぶって震えます、どうしようもなく怖いんだよ。


「諦めるのか主」

「諦めるしかないだろ松、僕は今までで一番頑張った、それは向こうで塞ぎこんでた時とは比べられないくらいだよ・・・だけど、もうだめなんだ」


ここでの生活はコスイベントと同じ位、それ以上に楽しかった、でもイベントは終わりが来る、このまま静かに終わりを迎えれば良いと諦めます。
膝を抱えて丸まり、頑張ってたのがバカみたいですよ。


「もういいんだよ松、僕は十分楽しんだ、このまま静かにしてるよ」

「気持ちはわかるぞ主、だけど良いのかよ」


何がだよ!布団の中で僕は叫びます、分身の松だって分かってるはずなんだ、もういいってさ。
努力が報われないのはよくあるんだ、これは僕のいつもの事なんだよ。


「ここで諦めたら、主はあいつの所に連れてかれるぞ、それにアルミクたちは幸せになれない」


子供たちの名前を言われ、僕は布団から出ました、自分の事なら布団から出ませんてした、でもあの子たちはなによりも大切なんだ。
それを分身の一言で教えて貰いました、僕はもう簡単に諦める事が出来ない、そんな事をするくらいなら、僕は自分が壊れても良いよ。


「あいつ、僕だけを狙ってるんじゃないの?」


松が頷いてホッとした表情をしたよ、僕にまだ戦う意思を見たからです。
あいつらは国に対して宣戦布告をしたんだ、アイツは弱いモノを虐める、それが分かってベッドから飛び出し状況を聞きます、少しは元気になったと、松は安心した感じで話てくれました、分身に慰めて貰うなんて、ほんと僕はダメです。


「山を保有してる領地から宣戦布告されたんだ、まだ戦いは始まってないけど、勇者とか言ってるあいつが相手だから、かなり慎重になってるみたいだよ」

「1つの領地が相手なのに?確かに黒田は強かったけど、国が動けば行けるでしょ」

「それなんだけど・・・何でも言い伝えが記された古文書にあるらしいんだ、他の世界から来た者がこの世界の王になるってのがあって、1つの国で対処していいのか悩んでるらしいよ」


降伏して被害を出さない方が良いと話をしてるそうだよ、問題は降伏の内容です、僕を引き渡すのと王になる事、それだけだったんだ、それなら降伏しても問題ないと上は思っているそうです、だけど黒田が世界の王になったらやりたい放題するのは確実だよ。
そんなの僕は絶対に許さない、あの子たちの為に僕は立ち上がるよ。


「目は生きてるな主、後は体って所かな」


松が僕の震える体を触ってきます、分身に触られたのに僕は怖がってベッドに倒れました、他人に触られたと丸まって固まったんだ、怖くなったんだよ。
前の様にもう嫌だって、何もしたくない、出て行きたくないと思ったんだ、だけど僕が行かないとあの子たちが守れない。


「こ、今度はあいつに立ち向かうよ」

「怖いのに?」

「この震えはもう違うよ・・・そうさ、もう決まったんだ」


やられた事をやり返す、ベターだけど恨みを返してやるんだ、みんなを守るのが第一だけど能力は最大限使ってやる。
僕がどれだけ嫌がっていたのか、分からせてあげるよ、そして二度と虐めなんて出来なくする。


「主・・・何だかやる気が出て来たみたいだな」


僕の顔を見て松が嬉しそうです、これは怒りの感情です、でも前はそれすらできなかったそれを力にみんなを守る。
ベッドから飛び起きて、僕は松と外に出ました、ここはドラゴンの解体屋です、イーザスさんたちもあの雷で負傷してしばらく使っていたそうです。


「おうリュウ君、立ち直ったか?」


お店に出ると、丁度イーザスさんたちがいました、軽い返事ですけど用もないのにここに通ってくれてたんだ、心の内では心配してくれていたんです、僕は元気になったと笑顔を見せます、もうオドオドなんてしません。
イーザスさんもそれが分ったのかニッコリです、すぐに真剣な顔に変わって本題です、この後手はあるのか、どうするのかを知りたいみたいです。


「相手は勇者を自称している、国王も貴族たちを抑えるのは限界らしいぞ」

「貴族は正直余裕です、地位を維持できるかどうかと気にしてるんでしょ?」


イーザスさんは頷きます、そこは材料の生産が済んだ、あれの存在をちらつかせばすぐにでもひっくり返ります、問題はアイツが勇者かどうかです。
きっと勇者は僕です、言い伝えになっている古文書を分身が読んで分かってるんだ。


「そこは言わないで置きたいけど・・・まず無理だろうね」


本体であるエリナの正体、それを隠す為僕は影で守って来た、それを国王陛下に話すんだ。
その後、あいつに僕が変わった事を教えてやる、あいつを同じ位震え上がらせてやる。
イーザスさんは、僕が良い顔になったとか言ってきました、僕自身どうしてかすごく頭がスッキリしてます、怖いとも思わないし怒りもない、あいつを困らせてやるんだ。
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