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2章 コスで冒険

42話 良い人悪い人

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リンシャたちとの楽しいお買い物を済ませ、昼食の為に3人で孤児院に戻ると、食堂にメイド服の女性が座っていました、アルミクたちが対応してくれていたんだけど、僕を見るといきなり土下座をしてきたんだ。
どうなってるの?アルミクたちに事情を聞くこうと声を発すると、メイドさんが頭を床に付けたままで口を開き大きな声が響きます。


「お願いします!どうか飴を売ってください!!」


こんなに必死なのに、欲しいのは飴なんですねっと、カクっとコケそうになりました、でも顔だけを上げたメイドさんは本気です、真剣な目で僕を見てきました。
今日は朝から子供たちだけで屋台をやっていました、屋台は予想通り行列になり飴は直ぐに無くなったんだ、メイドさんは買えないと帰れない、だから僕が帰って来るまで待っていたそうです、そこまでされちゃ作らないわけにはいかないよね。


「でもその前に、みんなで食事にしましょう、お腹空いてるでしょ?」


メイドさんのお名前を聞き、一緒に料理を始めます、孤児院の台所にも驚いていましたが、料理の質にも同じ位驚いています、出来上がった料理を一口食べ何か決意した表情をします、ミーバルは僕を見ましたが今は食事中です、終わるまで待ってもらいました。
そしてその時は来ました、お茶をテーブルに置いて落ち着いて聞く体勢を取ったんです。


「それで何でしょうミーバルさん」

「あたいに料理を教えてくださいエリナさん!」


飴の件ではなかった、料理を気に入ってくれたのは良い事です、だけど彼女は何か焦っています。


「ミーバルさん、どうしてそんなに必死なんですか?」


子供たちもその焦りを感じています、教えるなら孤児院での作業になります、まずはそこを解決させない子供たちの教育に悪いです。
主人の為とミーバルさんは答えます、でも必死さが違う気がするんです、ミーバルさんは結局主人の為と言ってきたけど、それで何となく分かりました。
貴族とも言えない主人、それがミーバルさんの主人です、それは相当上の人だと理解したんだよ、そうと分かれば教えるしかありません、ここで断っても諦めるはずありませんし、力で強引に来る可能性もありますからね、もちろんそちらも注意します、分身たちを使って調査ですね。
協力するから孤児院に悪い事はしないでください、それが料理を教える条件です、もちろん飴の作り方もそれに入ります、ミーバルさんは了承しとても喜んでいますよ。


「ありがとうございますエリナさん、これで主人に良い報告が出来ます」

「良いんですよミーバルさん、これで安全が買えるなら安い物です、でもくれぐれもお願いしますね」


この言葉は警告とお願いが含まれてます、変な奴がここに来た場合、そいつの地位が高かったら僕たちは手が出せない、そこを助けてくださいって言ったんです、もちろんミーバルさんは分かったと頷きます、飴の作り方は教えましたが料理はまだまだです、それがある限り彼女の主人は助けてくれるでしょう。


「分かりました、必ず主人を説得いたします、まずはミウサさんですね」


最後に誰かの名前を呟き孤児院を出て行きました、それは本気の顔だったので平気そうです。
やっと嵐は去った、そう思って孤児院でお茶をしていると、更なる来訪者が5人訪れます、それはミーバルさんの様に優しくはなかったです、外で遊んでいたサーヤを人質に取り孤児院の中に押し寄せてきたんです。


「動くな!動けばこいつの命は無いぞ」

「「「「「サーヤ」」」」」


僕たちの声が揃ったけど相手は止めません、そして僕に同行するように命令してきました、それは拒否できないと奴らに近づき僕は縛られます、みんなは心配していたけど、僕のウインクを見て頷きました。
屋敷に連行された僕はここが何処かを鑑定で調べます、サーヤも一緒に連れて来たのは僕が逃げないようにです。
屋敷は区画管理者の仕事場用に使っている建物です、それは男たちに言われるまでもなく分かっている事です、でも僕はイライラが増してきました、ついに来たかとサーヤと頷き合ったんだよ。


「こいつら、僕の敵だ」


僕は小さく呟いたよ、孤児院の援助金を横取りしてる悪い奴らです、ほんとはお話を聞いて穏便にっと思ってたけど、その気は無くなったね。
話しを聞いたらはっ倒す、そう決めて縛られたままの僕たちは、応接室の椅子に座らされました、サーヤの後ろには男性がいて肩を掴んでいます、汚い手で触るな!そう叫びたいのを必死で抑えたよ。
怯えてるサーヤに目線で『まだだよ』っと、ニッコリ微笑んでみせます、そうサーヤは演技をしています、怯えたように見せてこいつらを倒すんだ。


「テメー何を笑ってるんだ?」


僕の態度が気に入らなかったのか、正面に座っていた男が立ち上がり、サーヤに向けていた短剣を僕のクビ元に付けてきました、丁度いいから短剣を奪ってやりましたよ。
男はあっという間に短剣を取られてしまい、手を握ったり開いたりしています、僕は短剣をヒラヒラ見せて言ったんですよ。


「こんなに簡単に取れるから余裕で笑ってるんですよ、サーヤに怪我をさせたら僕は本気を出します、よく考えて動いてください」


短剣を返して睨み合いをしてたら丁度その時、応接室の扉が開かれ男が3人増えました、一人は偉そうな若い男性、他は護衛で鎧も着ないで筋肉を強調させてます。
偉そうな奴は僕の向かいに座り、後ろに男たちが腕を組んで立ちます、僕と話していた男は短剣を引っ込め横に立ち偉そうな男に席を譲りました、どうやらこいつが雇い主みたいですよ。


「ふむ、肝が据わってらっしゃる、でもあまりおいたをすると後悔しますよ、綺麗なお顔に傷が付いたら大変でしょ?」

「お気遣いには及びません、酒場では日常の事です、それよりも本題に行っていただけますか?」


これでも忙しいんですよ、そう嫌味を追加して進めさせます、裏に誰がいるか聞かないと対策も警告もできません、まずは身を引いて情報を引き出させます。
向かいに座っている男は、横の男に紅茶をもらい飲んだ後、僕をドールゾ伯爵の屋敷で雇いたいと言ってきました、嘘だろ?そうおもいましたよ。


「おや?信じられませんかな」

「それはそうでしょう、雇うだけならもっと穏便にするはずです、こんな誘拐じみた事しません」


そう結論を出すと男性は笑っています、その態度を見る限り、このお誘いは非公式の物です、それをする目的は公にしたくない勧誘、体だけの関係を求めているんだ、それも誰にも気づかれないようにです。
区画管理者の建物でそんな事をして来た、それはつまり上の奴にそいつがいるって事です、そして思い当たる奴はいます。


「もしかしてドルソン様ですか?」

「知っていましたか、ワタクシはドールゾ伯爵の長男であるドルソン様の専属執事、サンバノと言います」


その長男は女あさりで有名です、王都の学園に在学していますが、そういった事件を起こし謹慎しているはずです、つまりは女に困って僕を指名してきたんです。
執事のサンバノが協力してるのは、恐らく孤児院の横領を掴まれ脅されてるんでしょう、孤児院の資金は月に銀貨3枚の少額です、でも増額をしようと思えば出来る、きっと建物の修繕とか理由を付けて増やしたりしてるんだ。


「主も主なら執事も執事だね、もう大体分かったので帰ります、ドルソンって長男に伝えてください、二度とこんな事するなってね」


そいつはお仕置き決定です、この後いつもの通りシノビに行きます、サンバノはそれを聞き笑ってます、そして右手を上げると男たちが武器を抜いたんだ、でもその武器は一瞬で奪われてしまいます、僕ではなくサーヤにです。
捕まえていた男は、いつの間にか手元から離れていたサーヤに驚き、そして捕まえ直そうとして、ボディーブローを受けて壁にめり込んでしまいました。


「なな、なんだそのガキは!?」

「演技だっただけです、前にも変な奴が来たんですよ、追い返したんですけど、探す羽目になって大変でした、だからその手間を省く為に芝居をうったんです」


おかげでこの後簡単にお仕置きが出来ます、もちろん今ここにいるサンバノたちはここでお仕置きです。
全員を壁にめり込ませ、サーヤを抱きしめます、強くても怖かったと安心させたんです。


「怖かったねサーヤ、もうだいじょうぶだよ」

「エリナ姉」


ぎゅっと抱きしめたまま部屋を出ました、後の始末はそこに入って来た人達に任せます、それが職員だろうとそうでなかろうと、あそこの話し合いは非公式のもの、僕にたどり着くことはないです。
孤児院に着いて僕の部屋でお着換えです、でもその前にサーヤに言います。


「これから悪い奴をやっつけに行くから、サーヤはみんなに伝えてよ、もう安心だってさ」

「エリナ姉、気を付けてね」


もちろんだよ、そう言って僕は忍者コスで孤児院を出ました、そいつはきっと警告を聞かない、そんな奴は鉱山行きにしてやる。
死ぬよりも苦しい思いをして貰う、僕の大切な子たちに怖い思いをさせた、その償いをしてもらう。
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