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2章 コスで冒険

29話 行いの代金

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もう直ぐ新年祭だと、僕はウキウキしながらの準備を進めます、新年祭とは年の変わる日です、同時にみんなが1つ歳を取るモノなんだ、この世界では個別の誕生日は無いんだよ。
でもね、僕の準備はなかなか上手くいかない物が沢山あったんだ。


「なるほど、魔法の糸から特殊に加工するんですね」


魔法屋のおばあさんに特殊な服の情報を貰い、報酬の薬草をお渡しします、他にもミスリルの糸はドワーフ国の鍛冶屋でないと作れない事も聞きました、それはここに来る前に鍛冶屋さんで聞た事だけど、作れないって言われた時はけっこうショックでしたよ。


「いえいえ、糸自体も加工しますよ、ちなみに魔力を糸にするので基本となる糸も特殊なのよ」


僕はげっ!?と思ってしまいました、そんなに大変なんですねと、なんとか言葉にして答えましたけど、高価そうでお金の方が問題かもです、ミスリルは僕のダンジョンで手に入ります、新しく入れるようになった肉ダンジョンでは、食器がミスリルや銀製なんです、でも魔法糸の方はおばあさんが言うようにお金か掛かります、ミスリルも加工するとなるとお金がかかるかもです。


「ほっほっほ、嫌そうじゃねお嬢ちゃん、まぁ気持ちは分かるよ、ちょっとずつ作れば少しは安く済むかしら?知り合いに頼んであげるよ、任せておくれ」

「ありがとうございます、今度またお菓子を持ってきますね」


おばあちゃんは嬉しそうにニッコリしてました、お金ではない何かしか渡せないので、お菓子を出来るだけ作ってみんなに配っています、他の人たちにも時折渡して喜んでもらっているんだ、ササピーさんが助けてもらったお礼です。
おかげで王都でやる屋台は何を出すのか決まったんです、香辛料や塩は使いません、でもそれ以上に甘いモノが高いここでは、それはすごく希少な物でしょう、僕が作ろうとしているのは水あめです、フルーツを乗せて売るつもりなんだよ。


「出来れば魔法の糸で子供たちを彩りたかったんだけど、無理そうだね」


帰り道を歩きながら少し残念に思っています、ここではキラキラと光らせる行程は出来ません、普通の布も用意していましたけど、なかなか難しいですね、屋台ももう少しで出来ます、だけど時間は少しずつ無くなっていきます、布探しはここまでにして、次は違う問題です。
コスを忍者に着替え、僕は奴らの根城に向かいます、そいつらは王都の南西にいる悪党です。


「いるいる、呑気にしてるよ」


天井裏からイラっとしながら奴らを見ます、そいつらは違法に奴隷を売買しているラットという組織です、獣人の子供たちを何処に売るか話し合っていますよ。


「まったく、今年は厳重で困ったぜ、たかが学園に行ける歳になっただけじゃねぇか、王子様なんて気にしなければ良いんだ、リーダーもそう思いますよね」

「ああ、そうだな」


お酒を飲みながら愚痴を言ってます、自分たちが悪い事をしているとは思ってない、今に見てろっと、僕は違う部屋から降り立ちます。
降りた先には、お酒を飲んで油断していた男が2人椅子に座っていました、僕に驚き椅子を倒して立ち上がります、でも次の瞬間には体を硬直させたんだ。


「な、なんだ!?体が動かねぇ~!」

「忍法【影縫い】君たちにはしばらくそのままでいてもらうよ」


テーブルに置いてあった牢屋の鍵を拾い技名を伝えました、凄く悔しそうに体を動かしジタバタと抵抗しています、動けないから隠している僕の顔を睨んできました。
睨みたいのはこっちですよっと怒りを抑えます、そして牢屋のカギを開け中に入りました、中には子供たちが5人います、ボロボロな服を着て死んだように寝ていたんです、僕は忍術【影牢】に子供たちを入れました。


「しばらく我慢してね、今助けるから、もう少しの辛抱だよ」


声を掛けて怖くないと伝えます、子供たちは寝ているので気付いてませんが、ボロボロの子供を見て言わずにはいられなかったよ。
ここでまだやる事はあります、他に牢獄は2つあり同じ人数が捕まっています、その2つも動ける子供はいなかったので、声を掛けて影に入ってもらいました、僕の怒りは助ける度にどんどん上昇していきます。
そしてもちろん最後にはあそこに寄り道です、天井ではなくそのまま廊下を通り扉を蹴り破ったんだ、男たちの前に姿を見せるとお酒を吹き出しています、黒い服を着てる僕に男たちは驚き、立てかけてあった武器を掴んで抜きます。


「な、何もんだ!」

「そんなの知る必要はないよ、君たちはこれから国に拘束される、そしてしかるべき処罰を受けるんだ」


影縫いを使った奴らの事も伝えます、こいつらは影でロープを作り足を縛って転ばし、そのまま拘束を腕や腰にまで増やして動けなくしました、本当は一発でも殴ってやりたいよ、だけど聞きたいことがあるんです。
こいつらの上司の情報です、当然答えず暴言を吐きます、僕の怒りは既に頂点です、クナイで男たちの手足を刺し痛めつけます。


「いでぇー!」

「それは痛いでしょう、早く答えたほうが身の為ですよ、これからどんどん痛くなります、さぁ教えてください」


子供たちもいますから速やかに行います、クナイの痛みでは知らないの一点張りです、でも影を操りクナイの傷口から体内に入りじわじわ痛みを与えると、男たちは泣きだしました、ほんとに知らないとか言い出したので予定変更です。
諦めた感じを出し、僕はその場を後にします、男たちは影の拘束が外れホッとしています、それを天井で見ているとも知らず話し始めました。


「くそっ!何だったんだあいつは」

「リーダーそれよりも、奴隷共が取られちまいましたよ、どうするんですか」


男たちが雇い主の名前をそこで口にしました、状況を知らせる為に部下が部屋を走って出ていきます、それをしっかりと聞き、もう十分情報は聞けたとその場を離れます、準備していた小さな小屋着いた僕は、獣人の子供15人を影から出しベッドに寝かせます。


「みんなお腹も空かせてるよね、まってて」


収納からパンとスープを出し暖炉で温めます、分身を15体出し10体に外を守ってもらい、5体は子供たちのお世話です、僕は戻るけど1日ごとに新たな分身と交代です。


「んん、ここは」

「目が覚めた?スープを飲むと良いよ」


忍者服の分身が目を覚ました子供にスープを渡すと、子供は匂いを嗅いで一口飲みました、驚いた顔で獣耳をピクピクさせ勢いよく飲みだしたんだ、ゆっくり飲む様に言うと僕の顔を見てきます、片目しか見せてないのにジッと見てきました、その目は疑問が沢山って感じです。


「聞きたい事は沢山あるだろうけど、今はゆっくり休んでて・・・もう平気、君たちを虐める人はいないからね」


ごめんねっと最後に謝罪し、僕は丸い耳の子供を撫でました、ヒューマンの代表として謝ったんだ、ヒューマンが規則を破り獣人さんたちが被害を受けた、僕が謝っても正せないけど、口から自然と出ました。


「お家に帰れるの?」

「うん、ちゃんと送るよ、安心して良いからね」


乗合馬車は使えません、僕が分身を使い一人ずつ送って行きます、それまではここで過ごして貰うと説明しました、子供は太目の尻尾を振って嬉しそうです、顔はまだまだ不安そうでしたよ。
可愛いので撫でながらクッキーを渡し、本体の僕は元凶の貴族の屋敷に行き着きました、そこには何も知らないでワインを飲んでいる男がいたんだ。


「くふふふ、今年は危なかったが何とか仕入れる事は出来た、早く売り払いたいものだ」


天井の上で聞いてて、どうしてこういった人たちはこうなんだろうと、怒りがこみ上げ作戦を決行します、忍法【影人形】を使い、こいつには恐怖に怯えおののいて貰うんだよ。
扉を影で固定し、明かりも遮ります、男は急に暗くなって驚き立ち上がりました。


「な、何事だ!?」

「よくも~オレたちを~ゆるさな~い!」


男の後ろからそんな声が聞こえ、ビクっとさせて振り返ります、そこには影で作った獣人風の人形が立っていました、暗くて見えにくいけど、男は怯えます。
兵士を叫んで呼び、扉を開けようとノブをガチャガチャ動かします、でも扉は開かず扉を叩き始めました、そこに足を掴まれた感触がしたのか、男は下を見ます。


「くるし~い、た~す~け~て~」

「ひっ!?はは、放せ」


小さく声を震わせ、足を掴んでいた手を振り払います、足元の影はどんどんと男の体を登り、ついに顔の横まで行きました、いつの間にか周りには影が沢山立っていて男はその影にまとわりつかれます。
カチカチと歯を震わせ恐怖した男は「どうか助けてくれ」と許しの言葉を口にします、影はそれを聞き消えていきます、あっけなく消えて男はホッとします、でも力は出ず床に座り放心状態です、下を向いていると自分の影に頭が無い事に気づきゾッとしたんです。


「【二度はない罪を償え】・・・もも、もう止めよう、ワシが間違っていた」


頭の部分に文字が浮かびあがり読み上げて冷汗を出しました、男の言葉を聞くと文字は広がり頭の影に戻ったんです、それを見た男は落ち着きを取り戻します、そして一度反省したにも関わらず、獣人を有効利用してやっているっと言い捨てます、今の恐ろしい出来事も誰の仕業だと怒り始めました。
まだダメかと、影を操り男の見てる壁に文字を書きました、男はそれを見て膝を付いたんです。


「【いつでも見ている、容赦はしない】ははは・・・ほほ、ほんとに止めよう・・・うん、ワシは悪い事をしていた、もうよそう」


文字が効いたのか、いまだに男の頭の影が無くなっているから、ほんとに反省したみたいです、文字を書いた男の影は戻らず、男が改心の所業をしない限り消えたままです。
僕はやれやれと孤児院に戻って行きました、次の日からその貴族は獣人の支援を始めます、僕は子供たちを送りながら頑張ってと応援しましたよ。
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