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1章 コスで生活

14話 新しい店員

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「ファースおばさん、この布ください」


サーヤの採寸を済ませ、早速布生地の調達です、あれから僕も結構コスを作りました、女騎士や武道家、踊り子や魔法使いと色々揃い始めています、ちなみに冒険者ギルドに行く時の男性服も自作でした。


「はいよエリナちゃん、いつもありがとね」

「いえこちらこそです、今度おいしいパンを持ってきますね」


布生地屋さんのファースおばさんは、ササピーさんにパンを分けてくれた人です、助けてくれた人のお店をできるだけ使うことにしてるんだ、他にも大工のロジーおじさんや鍛冶屋のヤグーさん、細工師のリンジャさんと王都の職人さんは助けてくれたんだ。
平民の人たちも分けてくれた人はいてしっかり把握してます、自分たちもぎりぎりだから毎日ではないけど助けてくれた、僕はその恩を返したいんです。
そして、当然ですが敵もいます、それは援助金を横領してる奴らです、1月半経って役人が誰も来ないから変だと思ったんだ、ササピーさんは仕方ないって言ってるけど、僕は許せない。


「月銀貨3枚もあれば、どんなに生活が助かったか、絶対!絶対許さない」


カゴを持つ手に力を入れ怒りを面に出します、孤児院に嫌がらせもないから良いですが、何かしてきたらただじゃおきません。
昼の市場で買い物をしながらどうしてやろうかと、いるかわからないやつらの対策を考えていると、いつもと違う視線を感じました、振り向くと1人の女性が顔を逸らしたんです。


「誰だろう?見たことないね」


殺気ではないので放置します、ただ見ているだけの視線ではありません、万能シスターの勘がそう言っています、なかなか近づいてこないので、僕は市場を出て小道に入りました、女性もついてきます、だから振り返り聞いたんです。


「僕に何か御用ですか?」

「ひゃっ!?どどど、どうしてわかったんですか!」


すごくびっくりしてフードを引っ張り顔を隠しました、でも顔はしっかり見たんです、王都でよく見る茶色髪の女性で、鼻の上にそばかすが見えたね。
僕が距離を詰めると、後ろに下がり転んでしまいました、僕はあわてて近づいて手を差しのべます。


「そんなに慌てないで、別に怒ってるわけじゃないよ、話を聞きたいだけなんだ」


女性は手をとり立ち上がれました、でもそわそわして困ってる感じです、僕が名乗ると知ってると言って来ます、どうして知ってるの?っと不思議です、有名になったけどそれだけじゃないのは分かるんだ、聞いても黙ってしまうんです、どういうことなのかわけが分かりません。


「まあ殺意はないみたいだから良いけど、もう尾行なんてしちゃだめだよ」

「あ!?待って、ください」


注意して帰ろうとしたら彼女は止めてきます、振り向くとフードを取ってしっかりとこちらを見てきました、そして謝ってきたんです。
気にしてないって伝えたら、なんと彼女は今日から酒場で働く事になってると言ってきたんです。


「同僚になるからって尾行はダメでしょ」

「すすすみません、どうしても知りたくて・・・どうしたらそんなに綺麗になれるんですか?どうしたらそんなに自信を持てるんです、教えてください」


どうやら、この子は自分に自信がないようです、僕も自信がないから分かるんだ、他人とは思えない気持ちが押し寄せてきました、僕はすぐにそう思ったよ。
僕の答えは簡単です、ほんとの自分を封印しキャラになり切ることです、それを彼女に言うと分からないって顔されました、異世界では当然かなっと、コスだけでもっと孤児院の僕の部屋に連れて行きました。


「ど、どうしてアタシをここに?」

「ウエイトレスの服もあるし、メイクするなら酒場よりも楽だからだよ、ちょっとそこに座って」


メイク道具はキャラコスを駆使し独自の物が完成しています、ここの化粧品を売りだしたら高い価値になるでしょう、それを使い彼女を変えます、そばかすを化粧で見えなくし髪をブラシで整え、隠していた顔の部分を見えるようにしつつ小顔に見える髪型にしました。
本当はもっと化粧をするのだけど、次に残し違いを分かってもらう為に軽めにしたんだ、鏡を見せて確認してもらうと、彼女は生まれ変わった自分を見てびっくりの表情です。


「気に入ってくれたかな?」

「こ、これがアタシですか?まるで違う人みたい」


化粧と髪型だけなのでそんなに変わってないと伝えます、変わるのは本格的なメイクをするここからです、さらに小顔に見えるお姫様メイクを施し再度見てもらうと、彼女はまたまたびっくりです。
人はこうして変われるんだと、肩に手を置いて後ろから耳打ちします、日ごろのお手入れも大切でお手入れの仕方も教えたんだ、彼女は真剣に聞いてくれました。


「でも、このメイクはやりすぎだからね、日常なら最初のメイクくらいが良いんだ、僕も今はそれ位なんだよ」


メイクは落とさないけど、ウインクして秘密だよっと伝えます、彼女はボケーっとした後笑ってくれたんだ、それからは仲良くなってお喋りの後、名前を聞くことが出来ました、彼女はリンシャといって15歳の成人者です。
13歳の成人から色々なお仕事をしてきたけど、顔が悪いとか笑顔が出来てないと言われ、クビになり続けていたそうです、だからどうしたら綺麗になれるのか、僕を尾行して見習おうとしていたんだよ。


「ごめんなさい、でもアタシ、どうしたらいいのか分からなくて」

「分かるよリンシャ、僕も覚えがある、自分を変えるなんて難しいよね」


それが出来れば苦労はないんだ、僕は常々そう思っているよ、中学と高校の担任には自分を好きになる事から始めようとか言われた、虐めをどうにかしてくれないのに、大っ嫌いでしかたない自分自身を好きになれとか言われてもね、だから僕は理想のキャラたちになりきるんだ、彼らは僕を裏切らないからだ、リンシャには難しいかもしれない、でも僕のマネをすればきっと上手くいきます。
それを伝えてウエイトレスの服に着替えて貰います、僕と同じように髪を後ろで縛りリボンをつけます、肩までしか伸びてないリンシャは少しリボンが上目になってますが、とてもかわいくなりました。


「しばらくはここで僕がメイクするけど、リンシャも出来るようになるんだよ」

「は、はい」


最初のメイクは、ここでもそれほど高価なメイクじゃないんだ、成分も変なのを選ばなければ心配ない、だからリンシャだけでもできる様教えます、やり方を覚えたら自分でもアレンジして自信をつけてもらうのが目標だ。
頑張ろうねと姿鏡の前で笑い合ったんだ、酒場に向かうと途中、道行く人たちは僕ではなくリンシャを見ていました、僕を見ているんだとリンシャは言ってたけど、いつも見られてる僕にはわかりました、それだけ綺麗になったんだよ。
お店に着くと、そこには他にも店員希望者がいたんです、僕はうれしくなっちゃいましたよ、マスターに睨まれてるふたりは怖くて縮こまってるけど、ジュロスさんは睨んでるわけじゃない、新しい人が来て緊張してるんだ、僕の時もそうだったと前に話してくれた、怖い顔に似合わずシャイなんです。


「来たかエリナ・・・後頼む」

「分かりましたよジュロスさん・・・じゃあ二人のお名前を教えてください、僕はエリナといいます、こちらはリンシャです、彼女はお二人と同じで今日から働くんですよ」


リンシャを先に紹介して、二人の名前を聞きました、女性のほうはウエイトレス志願でアマリスと名乗りました、対して男性は厨房の料理人志願でクレミルです。
クレミルは、少し前まで他の食事屋で働いていたそうです、アマリスも他の場所でウエイトレスとして働いていたらしいけど、どうやらリンシャよりもひどいみたいだよ、何でもすぐに足を引っ掻けて転んでしまうそうです、お皿を割ったりしてクビになり、更には弁償も加わって借金を背負ってるらしいよ。


「アマリスはクビになったんだね、じゃあクレミルはどうしてそこをやめたの?」


ここでは失敗よりも忙しさに耐えれるかが問題です、ドジッ子はフォローすれば良いんだ、リンシャとアマリスの事情は改善できます、でもクレミルは違うかもしれません、どう見ても彼は出来る男に見えるからです、マスターと調理の思想が違うと言われたら辞めてもらうしかないです、マスターに変えてもらうなんて出来ませんからね。


「俺は・・・喧嘩をしたんだ」

「喧嘩ですか、料理長とかですか?」

「いや客とだ、そこで働いていたウエイトレスの彼女を助ける為にな」


彼の彼女が僕の様にお客さんにナンパをされ、それをやめさせる為に喧嘩になったそうです、クレミルは悪くないはずなのに、その料理屋では問題になってしまいお店はクビです、問題の彼女さんとも別れたらしいですよ。


「あいつは、高級店で働いてない俺には価値はないって離れて行ったんだ、だから俺はここを選んだ、ここならうるさくないだろ?」


確かにっと僕は頷いたよ、これなら問題ないって採用を決めました、アマリスも問題ありません、借金は僕が肩代わりし、無理せず少しずつ返して貰う約束をしました。
そこまでしてくれるの?っとアマリスは不思議そうです、足手まといになると包み隠さず行ってくれたんだ、だけど僕には奥の手が沢山あります、それを使ってもなしえなかったのが人手なんだ、それにリンシャを変えた時鑑定を使って対策も増えました、コスの影響は他人にも付けられるんです、僕よりステータスが少~し低いけど、普通よりは格段に上がっていたんです。


《ステータス》(コスプレ中)
【名前】リンシャ
【年齢】15歳
【性別】女
【種族】ヒューマン
【職業】出来るウエイトレス
【レベル】4(20)
【HP】400(4400)【MP】200(1200)
【力】400(4400)【防御】400(1400)
【素早さ】600(6600)【魔法抵抗】200(1200)
【魔法】
(洗浄魔法レベル1)
【スキル】
掃除レベル2
(掃除レベル5)
接客レベル1
(接客レベル5)
調理レベル2
配膳レベル2
(配膳レベル4)


このように強くなります、スキルも僕とは違い別々に表示されてるので、その内あがるかもしれません、そして僕のある疑惑が発覚しました、自分のレベルは1のまま変わらないとずっと思っていたんだ、カッコのないレベルは1のまま、多分ですけど、コスをしないで戦わないとダメなんだと思います。
これのおかげで子供たちの対策もアマリスの対策もばっちりっと、コスをしない作戦は後回しです。
リンシャはクレミルの話を聞き、元彼女さんにプンプン怒っています、助けてもらったのに捨てるなんてひどいっと、クレミルの手を握って励ましてます。
クレミルは少し赤くなってたので、これは惚れたかな?っと見てました、アマリスは顔を隠して指の間から見てましたよ。


「じゃあお二人さん、お熱いところ悪いけどお仕事の話をしますよ、ついてきて下さい」


僕に注意され、やっと二人は手を放します、応援したくなるくらいの展開ですがそれは後です、今は仕事を覚えてもらいますよ。
酒場が始まるまで、僕は3人に指導をしてその日は始まりました、予想通りてんてこ舞いです、衣装だけのアマリスは、何もないところで転ぶんです、ここで分かったけど、どうやら僕の針子さんコスで手が加わった衣装じゃないと他人のステータス変化は無いようです、僕は市販の物でも良いんですけどね。
リンシャはと言いますと、ビールはしっかりと注げて料理は運べるけど、接客となるとオドオドしっぱなしで注文間違いがひどいです、でもコスのおかげか笑顔は絶やしません。
唯一何も問題がないのはクレミルです、酒場の料理をすぐに覚え何でも作れるんだよ、さすが高級料理店にいただけの事はあります、問題としてはマスターと一言も話さないことですかね。


「問題は山済みだけど、やる気がないよりは良いよ、お化粧も衣装も準備をすればいいんだ、がんばろ」


お客様にサービスしたり謝ったりと忙しい日でした、その中に不埒な人のお仕置きも入ってますが、それは僕の日常なので省きます。
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