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2章 異変

62話 ケイトが来ない

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「はぁ~終わった終わったー!」


今日の授業がやっと終わり、俺は伸びをして解放されてホッとした。
学校の授業は、大人になれば必要だからと言われてる、ただ覚えるだけのつまらないモノで、世界の終わりが迫っているのに覚える気がしてねぇ。


「俺にとって、部活の方が大切だ」
「ルナ」
「部活行こう」


そんな大切な文芸部で一緒に戦う双子、雪と美樹が教室の外で俺を呼んだ。
小学校では、名前と俺の性格が合ってねぇとか、散々言われケンカになった事はあったが、俺だって自分で思ってないわけがなかった。


「月なんて名前、合う訳ねぇ」


この性格も変えられねぇし、こんな奴が文芸部とか絶対思われてる。
だが、俺にだって事情ってのがあるから、仕方ねぇんだ。


「おう!早く行ってムツの報告を聞かねぇとな」
「ん」
「今日はそれが大事」


今日は、そんな大切な戦いよりも、重要な事が待ってて、俺達は急いで部室に向かったよ。
ムツとケイトのデートがどうなったか、聞かねぇと夜も眠れねぇ。


「それにしても、いいよなぁムツ」
「ほんと」
「羨ましい」


雪と美樹もそう思ってて悔しそうだが、ゴールデンウイークの強化合宿で勝利したご褒美だから、俺たちも何も言えねぇ。
ケイトに勝利するなんて、ほんとに努力した結果だから、俺たちの努力不足だったのがいけないんだ。


「だけどなぁ」


それなら、その前のテストで赤点を取らなかった事のご褒美が欲しかったと、俺は叫びたい。
島での遊びがそうだったんだが、今回の様な特別な物が欲しかったんだよ。


「無理やり約束したのに、ケイトは叶えてくれるんだ、欲しいよな」
「次は勝つ」
「うん、絶対膝枕貰う」


雪と美樹もやる気で、お互いの腕を交差させて気合を入れてる。
でも今のままじゃ無理だ、精進して強くならないとまず捕まえる事なんて出来ねぇ。


「俺たちとも同じ位連携が出来ねぇとな、今日はそれを練習するか?」
「うっ!?」
「それはちょっと」


雪と美樹は嫌がったが、それが出来ないとケイトには勝てない。
この二人の息ぴったりな攻撃が、俺とでも出来ない限り無理なんだ。


「ゴールデンウイークの特訓を思い出せって」
「でも」
「難しい」
「出来るようになったら、ふたりのお願い(膝枕)くらい、啓斗ならしてくれるだろ」


そう、ゴールデンウイークの訓練で浮き彫りになった俺たちの弱点、それを乗り越えれば叶えてくれる。
ケイトはそれだけ優しいから、俺の単調な攻撃も改善出来れば、俺ともデートをしてくれるだろう。


「それは」
「うん、魅力的」
「だろ、俺も頑張るぜ」


2人が頑張れば俺にもつながり、デートが近づくんだが、それが簡単ではないから問題だ。
悪魔を倒すよりも難しいそれは、やりがいがあり俺たちの楽しみなんだ。


「おっし!じゃあ、シミュレーションボックスで10体倒すまでな」
「うげ!?」
「それはちょっと」


また二人が嫌そうな顔でシンクロしてきたが、それ位出来ないとケイトを捕まえるなんて出来る訳がなかった。
マジックバトラーでの訓練は、俺たちの連携に最適で、魔法少女の必殺技が使えないが経験値になってる。


「何言ってんだ!30分で10体も倒せたら、それこそ啓斗が喜ぶだろ」
「そうか!」
「確かにいけるかも!」


その場で言えば、きっとふたりのお願いは叶う、ケイトなら絶対許してくれる。
俺のデートは無理かもしれないが、それが可能なのかをムツの結果を聞いて確かめたいんだ。


「だから部室に急ぐぞ」
「うん」
「絶対倒す」


やる気が上がった俺たちは、急いで部室棟に向かったんだが、その途中でケイトに会ったんだ。
文芸部の顧問をしてるトオルンと一緒で、何やら深刻そうな顔をしてた。


「おっす!啓斗にトオルン、ここで何を話してんだ?」
「ルナにユキミキ、丁度良かったよ、僕は今日部活を欠席するから、みんなに言っておいてよ」
「もしかして、あれか?」
「うん、じゃあ行きますね先生」


ケイトがやけに急いでるから、俺達は直ぐにあれと思って見送った。
トオルンは出来れば行ってほしくなさそうだが、ケイトにしか助けられない事だから仕方ない。


「それでトオルン、今度の場所は何処なんだ?」
「トンネルの崩落事故よルナさん」
「崩落事故かよ」
「ええ、今もかなり危険らしくて、レスキュー隊が近づけないらしいわ」


テレビでの情報だがトオルンは深刻そうで、ほんとに危険なのが伝わって来た。
クラストマンのケイトなら平気だろうが、俺たちも心配になったよ。


「平気なのかよ先生」
「啓斗君が問題ないって言ったのよ、なんでも自分で穴を掘る方法があるらしいわ」
「ケイトがそう言ったなら、ほんとに平気なんだろうけどよ、心配だな」


ケイトは、俺たちが魔法少女になる以前から、一人でクラストマンとして活動してる偉い奴だ。
だから、救助はほんとに出来るんだろうが、クラストマンを良く思ってない連中が何を言うのかが心配だ。


「ほんと心配よね」
「ああ、この前の船の難破もそうだったからな」


救助をして助けてるのに、被害が出たのをクラストマンのせいにする奴がいる、それが俺達は許せないんだ。
確かに薬で全員を助けられるし、国に技術を渡せば暮らしも楽になるだろうが、それ以上に問題も出て来る。


「だから、みんなからも言ってあげてね、彼は頑張り過ぎるから」
「ああ分かってる、ケイトは悪くねぇよ」
「うん」
「あれが最善」


被害者には悪いが、俺達にはケイトの方が大切だ。
クラストマンの救助活動は、それだけ批難されやすく、俺たちの手伝いまで拒否してくるほどだ。


「そうね、きっと落ち込んで帰って来るから、慰めてあげてね」
「うん」
「帰ってきたらハグする」
「それよりも、今はあの話が優先だ、急ごうぜトオルン」
「そうねルナさん、何せ啓斗君と二人きりでデートをした睦美さんが待ってるものね」


トオルンもかなり聞きたそうで、俺たちの前を速足で歩きだした。
俺たちとは少し違う興味で気になってるんだろうが、同じ気持ちではある。


「セイヤも、ご褒美を貰ってから少し変わってたしよ、あれは何かあったんだぜ」
「見れば分かるわよねルナさん」
「ああ、ケイトは普通だから、意識してるセイヤが少し可哀そうだけどな」


見ていて少しいたたまれないが、俺たちだってケイトが好きだから、気持ちが凄く分かるんだ。
相手にされてないあの感じ、痛い程分かるから同情するぜ。


「今回の結果でそれもどうなるのか決まる、だから気になるんだよな」
「そうね、みんな啓斗君が好きなのよね」
「ああ、誰か1人が勝ち取るなら、勝者になりたい」


全員が思ってるが、そのスタートラインに立ってない感じなのが、ケイトの態度で分かるんだ。
だからこそ、直球で立ち向かったムツが気になってて、俺達は急いでるんだ。
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