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Episode1 愛のこもったプレゼントでお近づき大作戦!
1-13 意外な才能
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リザミィは上を見上げた。岩壁と岩壁の間にある青空の中で、ヂョータが相変わらずぐるぐる旋回している。諦めの悪い鳥だ。
リザミィたちは割れ目を登らないことには地上へは戻れない。
この岩壁の高さなら、所々にある岩の突起を使えばリザミィとライジャーは上まで登ることが出来る。それからロープを垂らして、二人でボンボを引き上げれば全員割れ目から脱出できるはずだ。
しかし全員脱出したとしても、ヂョータが再び上空から襲ってくるだろう。結局割れ目に落ちる前と状況は変わらない。
何かいい方法はないか。
リザミィは腕を組んで思案しながら、あることを思い出した。リザミィは座って尻尾の先をいじっているライジャーを見下ろす。
「そういやあんた、さっき私にわけわかんない言葉叫んでたわよね」
地上で、ボンボに狙いを定めたヂョータを追い払おうとした時のことだ。
ライジャーが突然謎の言語を言い放ち、リザミィに指示していた。
「ああ、ゼック・ィーべか?」
「それ! 意味不明だったんだけど」
ライジャーは尻尾いじりを止め、肩を竦めた。
「咄嗟にザァル語が出ちまっただけだっつーの。距離の計測で使いやすいからな」
ザァル語というのは確か、リザードマンが使用する言葉だ。魔界では普段共通語が使用されているが、種族ごとの言語は今も残っている。
いや、そんなことよりも。リザミィはザァル語よりも引っかかることがあった。
「あんたまさか、ヂョータとの距離を目測で図ってたってこと?」
ライジャーはあの時と同じように片目をつぶってみせる。
「距離だけじゃねぇ。弓のサイズとオマエの体格を考慮した上で、急所を狙える角度を計算した」
さも当たり前みたいな顔して言っているが、あの一瞬で、しかも目測で全て計算するなんて普通出来ることじゃない。
こいつ、もしかして。
「実は、結構頭良かったりするの?」
「あぁ? 実は、ってなんだよ。オレが普段頭悪いみてぇな言い方だな」
「頭悪いっていうか……」
性格が悪いっていうか。ゆえに、そこからは想像がつかないというか。
余計なことを言うと騒ぎ出す気がしたので、リザミィはぐっと我慢した。
「計算するくらい、別に簡単なことだろ」
「そ、そうね」
そうでもないけど、ここは同意しておくことにする。話を膨らませるとめんどくさくなりそうだし。
「ライジャーくんかっこいいなぁ」
ボンボの純粋な眼差しを受けたライジャーは、どこか嬉しそうだ。
「当り前のこと言うなよボンボ。オレはかっこいいに決まってるだろ」
「はいはい」
適当な返事をしてリザミィはその場を流した。
リザミィがライジャーの指示通りに弓で矢を射れば、ヂョータを上手く追い払うことが出来るかもしれない。
しかしリザミィには懸念していることがあった。それを見透かしたようにライジャーが口を開く。
「けど、さっきはオマエの力量までは計算に入れてないからな。オマエがどんだけ弓が下手なのか知らねぇし」
そうなのだ。リザミィは残念ながら、ライジャーから指示を貰っても飛び回る相手を的確に射る技術は持ち合わせていない。
「でしょうね。ヂョータを足止めすることが出来たら、なんとかなると思うんだけど……」
「しゃーねぇなあ。ボンボを囮に使うか?」
「えぇっ!?」
ライジャーが冗談を言ってのける。ボンボは真に受けてしまったのか、体をぶるぶる震わせた。
「ダメよ。それは最終手段にとっておきましょ」
「ボ、ボク、最終手段なの!?」
最終手段を使わないためにも、良い案を見つけなければ。
リザミィはどうしたものかと考えながら、視線を周囲に泳がせた。
ごつごつの岩壁。石が転がる地面……。
「あっ」
いいものがあるじゃないか。これならなんとかなるかもしれない。
「ねぇ二人とも、私に作戦があるんだけど」
リザミィはライジャーとボンボに向かって、ニヤリと微笑んだ。
リザミィたちは割れ目を登らないことには地上へは戻れない。
この岩壁の高さなら、所々にある岩の突起を使えばリザミィとライジャーは上まで登ることが出来る。それからロープを垂らして、二人でボンボを引き上げれば全員割れ目から脱出できるはずだ。
しかし全員脱出したとしても、ヂョータが再び上空から襲ってくるだろう。結局割れ目に落ちる前と状況は変わらない。
何かいい方法はないか。
リザミィは腕を組んで思案しながら、あることを思い出した。リザミィは座って尻尾の先をいじっているライジャーを見下ろす。
「そういやあんた、さっき私にわけわかんない言葉叫んでたわよね」
地上で、ボンボに狙いを定めたヂョータを追い払おうとした時のことだ。
ライジャーが突然謎の言語を言い放ち、リザミィに指示していた。
「ああ、ゼック・ィーべか?」
「それ! 意味不明だったんだけど」
ライジャーは尻尾いじりを止め、肩を竦めた。
「咄嗟にザァル語が出ちまっただけだっつーの。距離の計測で使いやすいからな」
ザァル語というのは確か、リザードマンが使用する言葉だ。魔界では普段共通語が使用されているが、種族ごとの言語は今も残っている。
いや、そんなことよりも。リザミィはザァル語よりも引っかかることがあった。
「あんたまさか、ヂョータとの距離を目測で図ってたってこと?」
ライジャーはあの時と同じように片目をつぶってみせる。
「距離だけじゃねぇ。弓のサイズとオマエの体格を考慮した上で、急所を狙える角度を計算した」
さも当たり前みたいな顔して言っているが、あの一瞬で、しかも目測で全て計算するなんて普通出来ることじゃない。
こいつ、もしかして。
「実は、結構頭良かったりするの?」
「あぁ? 実は、ってなんだよ。オレが普段頭悪いみてぇな言い方だな」
「頭悪いっていうか……」
性格が悪いっていうか。ゆえに、そこからは想像がつかないというか。
余計なことを言うと騒ぎ出す気がしたので、リザミィはぐっと我慢した。
「計算するくらい、別に簡単なことだろ」
「そ、そうね」
そうでもないけど、ここは同意しておくことにする。話を膨らませるとめんどくさくなりそうだし。
「ライジャーくんかっこいいなぁ」
ボンボの純粋な眼差しを受けたライジャーは、どこか嬉しそうだ。
「当り前のこと言うなよボンボ。オレはかっこいいに決まってるだろ」
「はいはい」
適当な返事をしてリザミィはその場を流した。
リザミィがライジャーの指示通りに弓で矢を射れば、ヂョータを上手く追い払うことが出来るかもしれない。
しかしリザミィには懸念していることがあった。それを見透かしたようにライジャーが口を開く。
「けど、さっきはオマエの力量までは計算に入れてないからな。オマエがどんだけ弓が下手なのか知らねぇし」
そうなのだ。リザミィは残念ながら、ライジャーから指示を貰っても飛び回る相手を的確に射る技術は持ち合わせていない。
「でしょうね。ヂョータを足止めすることが出来たら、なんとかなると思うんだけど……」
「しゃーねぇなあ。ボンボを囮に使うか?」
「えぇっ!?」
ライジャーが冗談を言ってのける。ボンボは真に受けてしまったのか、体をぶるぶる震わせた。
「ダメよ。それは最終手段にとっておきましょ」
「ボ、ボク、最終手段なの!?」
最終手段を使わないためにも、良い案を見つけなければ。
リザミィはどうしたものかと考えながら、視線を周囲に泳がせた。
ごつごつの岩壁。石が転がる地面……。
「あっ」
いいものがあるじゃないか。これならなんとかなるかもしれない。
「ねぇ二人とも、私に作戦があるんだけど」
リザミィはライジャーとボンボに向かって、ニヤリと微笑んだ。
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