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2章

首席入学ですか!?

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今日は我が国の王城に来ています。
何故かって?
それは国王様に呼ばれたのだよ。
息子と一緒に合格発表を見に行かないかってね。
断ろうと思ったけど理由がなかったので付いていき、今に至るという訳だ。
「そろそろ行こうか。」
王子がそう言ってきた。
「あっ、はい。行きましょうか、ヴェルンハルト殿下。」
「堅苦しいのはよしてくれよ。従兄弟なんだから、ヴェルでいいよ。」
俺が敬語で言うとヴェルはそう言ってきた。
「えっ、でも……………僕まだ8歳で年下なんですけど………」
「構わないさ。平民の従兄弟は堅苦しいことはしないのだろ?」
「分かった、これからよろしく、ヴェル。」
そんなことを話していると何を考えているのかヴィクトール叔父さんが俺達を迎えに来た。
「それでは合格発表を見に行こうか!」
「あれ?もしかして叔父さん付いてくるつもりだった?」
「ダメなのか?」
「いやいや国王様とか公爵家当主とか来ちゃだめでしょ!パニックになるよ!」
何を考えているのだろうかこの大人達は…

街歩きをしたいというヴェルの要望もあって学園までは歩いて行く。
近いからな。
今日はヴェルの護衛はいない。いうもは馬車での移動のため必然的に護衛が付いてくるらしい。
うちは逆に護衛が足手まといになると言うことで5歳のときから既にいない。
ヴェルには俺がいれば護衛なんていらないだろうと言われた。
なんで俺の実力を知っているのか疑問に思ったが、ヴェルって魔法能力測定の時にいたんだよな。それにヴィクトール叔父さんから聞いていてもおかしくはないし。
護衛を連れずに初めて自由に街を歩いたヴェルは、開放感からかあっちへこっちへフラフラしながら歩いていたので、十分程で着く所を三十分以上も掛かって学園に着いた。
学園に着いた時、二人の手には串焼きが握られていた。
街歩きの途中で買ったものだ。
そして学園の合格発表の場所には
「おお、皆集まっているな。」
と串焼き肉を頬張りながら呟く王子様と
「そうだね~。」
と指に付いたタレを舐めている公爵家次男がいた。
うん、怒られるな。確実に。
食べ終わった串焼きの串をゴミ箱に投げ込んで、合格者が貼り出されている掲示板に向かう。ごった返す人混みを掻き分けて掲示板の前まで行く。え~と、俺の番号は…
「あ、あった。」
「私もあったぞ。」
二人とも無事合格したようだ。ヴェルとハイタッチをした後、合格者受付に並ぶ。ここで教科書と制服を受け取る。クラスもここで発表されるらしい。
列は意外とスムーズに進み、すぐ俺の番になった。隣の列ではヴェルが並んでいる。
「はい次の方。」
受付のお姉さんに受験票を見せる。
あっ、この人魔法能力測定の監督さんだ。
「はい、確認しま……あら?君がブレイド・フォン・ヴィトゲンシュタイン君ね?」
「あっ、はい。」
「ふーん、君が噂の公爵家の次男ね。はい、これが教科書です。これがリストだから確認して、もし抜けがあればすぐに言って下さい。それと、あなたの制服はこれです。事前に聞いた身体データを参照したのでサイズはピッタリの筈です。もし一部でもサイズが合わなければ必ず言って下さい。この制服には色々な防御魔法が付与されています。自分で直そうとか思わないで下さい。」
お姉さんの説明を聞いて制服と教科書を受け取る。
魔法の付与って何個もできるのかな?
出来そうだったら直してみようかな?
また書斎の本で調べておかないとな。
本が無かったら魔神タナトスにでも聞けば良いか。
いつもの様にどうでも良いことを考えているとクラスは『Sクラス』だと教えられた。
入学式の日取りや時間、入学式に持ってくる物を記載したプリントを貰って、ヴェルに「さあ帰ろう」と言おうとしたらお姉さんに呼び止められた。
「あっ、それとヴィトゲンシュタイン君は入試首席ですので、入学式で新入生代表として挨拶をして頂きます。ですので、挨拶考えておいて下さいね。」
耳を疑うフレーズが聞こえてきた。
「新入生代表……挨拶!?」
「はい。」
聞き間違いかと思ったが眩しい笑顔で肯定さてしまった。
いやいや、ちょっと待とうか。
「あの、今回の新入生にはラミッシュ王国第1王子のヴェルがいるんですよ?今回はどう考えても、挨拶するのはヴェルの方でしょう。」
代表挨拶なんて前世でも経験したこと無い。というよりまともに挨拶したことすらない。ヴェルには悪いが、ここは俺の代わりに犠牲になってもらうとしよう。
「おいおい、何を言っているんだい、ブレイド。この伝統あるラミッシュ国立学園において入試首席が代表挨拶をするのは学園始まって以来の伝統。それを私の我が儘で代表挨拶を奪ったとなれば、私にとって、いや王家にとって末代まで消えぬ恥となるであろう」
隣の列にいたヴェルが何か正論っぽい事を言っていた。
「大丈夫。僕が辞退してヴェルに譲るだけだから。」
それに対して俺が反論すると、
「ブレイド君、ヴェルンハルト殿下の仰る通りです。この学園には身分の貴賤は無く完全実力主義です。それは王家の方とて例外ではありません。現陛下御在籍の折りも代表挨拶は陛下では無かったと伺っております。」
ヴィクトール叔父さんが挨拶をしていればよかったものを。
誰だよ、叔父さんの代わりに挨拶やったの。
「しかし、僕まだ8歳で早期入学なんですよ!?それだと反感を買う可能性が…」
「早期入学で代表挨拶になるということは相当頭が良いと言うことだ。そんな奴に文句を言う人間はこの試験で振り分けられている筈だ。安心したまえ。」
完全に逃げ道断たれた。
「まぁそういう訳で、頑張って挨拶を考えてくれたまえ。早期入学で首席の君は素晴らしい挨拶をしてくれることだろうな。」
今までで一番良い笑顔を浮かべてそう言った。
ハァ、なんで首席取っちゃったんだろう…
「首席が辞退して次席に譲ると言うのは1度あったらしいですが王子はご存知なかったのでしょうか?」
受付のお姉さんのこぼした言葉は、ブレイドは落ち込んでいたからか聞こえなかった様だが、それを聞いたヴェルンハルトは口元を緩めていた。

________________________

ありがとうございます。
次回入学式となります。
作者がブレイドがまだ8歳ということを忘れかけておりました。
これからもよろしくお願いします。
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