お嬢様の執事は、夜だけ男の顔を見せる

hiro

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第5章

第21話 お嬢様は大人っぽい顔をする…?

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「クライム兄様に、ネオの代わりは務まらないわ」


シアの言葉に、首をかしげた。

「彼は、そんなに大きな存在か」

「……えぇ、そうよ」


いつものように強い口調なのに、声が震える。
寂しい気持ちに、溺れそうだ。


長い付き合いのクライムに対してだけは、本当の気持ちを見せる。



ネオの前ではいえない、本当の言葉。

一生告げることのない、自分の欲求――…
 


「いったでしょ? ネオがいる生活じゃなきゃ、私の日常じゃない、って」

「あぁ、そんなこともいってたっけ」

「いったわよ」
 

しれっとした顔で首をかしげる。
からかい半分のクライムに、口で勝てたためしがない。
 

頭の回転が速いのは、ネオもクライムも同じだった。
 
シアは反論することを諦めて、大きなため息をついた。
ため息とともに出るのは、悲しい気持ち。
 


「ネオに会いたい……」



ぽつりと床へこぼす。
会いたいと言葉にしても、気持ちがおさまることはない。
 

 
会いたい
会いたい
 
会いたい――…
 
 
誰に告げるわけでもなく。
ただその気持ちだけが、あふれる。


会って……
なにしてたのよ、って、責めるの。

私を1人にするなんて、酷いわ、って。



それから、頬に触れて……
寂しかった、って、伝えるの。


ネオは、どう思うかな。
困った顔を、向けるかな。



それとも、また私に……

触れてくれるかな……?

 


「会いたい……」
 


もう一度呟き、肩を落とした。


一瞬瞳を見開いたクライムは、一拍の後、くすくすと笑った。
 

なにがおもしろいのよ。

反抗を口にしたいが、下手なことをいうとまたからかわれる。
 

キッ、と睨みつけると、クライムはおどけたように肩をすくめた。

 
「なぁに?」

「いや、妬けるなぁ、と思ってね」

「からかわないで」


シアの言葉に、クライムの笑みが消えた。
真面目な顔。

こんなに真剣なクライムは、初めて見たかもしれない。

しかし、すぐに表情を戻し、にっこりと笑った。



「なぁ、シア」

笑顔のクライム。

それなのに、怖い、と感じるのはなぜだろう……。


クライムは、笑顔のまま、シアの頬に手を伸ばした。
指先が触れて、びくりと肩を揺らす。


優しい手つき。
花を愛でるように、そっと、頬を伝う。


ふっくらと柔らかな、唇に触れる。
指でなぞられると、背筋がぞくぞくした。


声が、出ちゃいそう……。


シアは、必死に耐える。

ネオに触れられてから、全身が敏感になってしまった。



「最近、大人っぽい顔をするようになったね。急に、どうしたんだい?」

「え……どういう……?」


質問の意図が読めない。



大人っぽい顔って、どういう顔?

いつもと、変わらないのに……。
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