お嬢様の執事は、夜だけ男の顔を見せる

hiro

文字の大きさ
上 下
13 / 28
第3章

第13話 お嬢様に必要なのは花嫁修行?

しおりを挟む
翌日。
眠っていたシアは瞳を開けた。
気だるげに瞼を擦ると、あたりを見渡した。


誰もいない、室内。


いつもなら、ネオが起こしにくるはずなのに……
どうしてこんなに、静かなのだろうか。



ベッドから立ち上がると、シアは口を開いた。

「ネオ」

呼んだら、すぐにやってくるネオ。
シアの言葉を聞き流しつつ、稽古の日程を告げるのが日常だ。



それなのに……
呼んだ声に、反応するものはない。


しん、と静まりかえった部屋が、虚しさを感じさせる。



コンコン、とノックする音。
扉が開くと、シアは口を尖らせた。


「呼んだら、すぐにきなさいよね。ネオ」


そこまで口にして、シアはかたまった。
部屋を訪れたのは、ネオではない。

執事長だった。



「申し訳ございません。シアお嬢様に、ご当主様よりご伝言がございます」

「……なに?」


当主ということは、シアの父親からの伝言。
珍しいこともあるものだ、と、シアは自嘲気味に笑みを浮かべた。



執事長は、淡々と口を開いた。


「本日より、お嬢様のお稽古事は休止といたします。そのかわりに、《花嫁修業》の項目を受けていただくことになります」

「お稽古が、休止……?」

「いまのシアお嬢様に必要なことは、淑女としての心得であると、ネオが判断して、ご当主様に提案したからでございます」

「どういうこと?」


突然のことに、頭のなかがパニックになる。
しかし、執事長は首を横に振った。


「シアお嬢様の《花嫁修業》の担当は、ネオがおこないます。ご当主様は、ネオに一任しておりますので、私からはなにも」

「……そう」


これ以上なにか聞いても、無駄だろう。
そう判断したシアは、ため息をついた。



「なにかございましたら、お呼びください」

執事長が深々と頭を下げると、部屋をあとにした。



お稽古事が、なくなる……?

淑女としての心得って、どういうこと……?


もやもやとした気持ちを抱えたまま、シアは再び、大きなため息をついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...