11 / 28
第2章
第11話 お嬢様の執事は平静を装う
しおりを挟む
そっと手をのばすと、唇に親指をそえる。
つぅっ、となぞる指。
その感覚に耐え切れず、びくりと肩を弾ませた。
「……こういう、卑猥なことのどこが、お稽古なわけ……?」
睨みつけると、くくく、と笑う。
「お嬢様の口から、《卑猥》という単語が出るとは。――…興奮しますね」
「――っ、んンっ!」
再びふさがれた唇。
シアは現実から目をそらすように、ぎゅっとまぶたを閉じた。
噛みつくように触れる激しい口づけ。
なにもかも、吸いつくされそうなほど、深く口づける。
シアは眉をひそめた。
ずっと、ずっと、大好きだったネオ。
家族愛のような、友情のような、なくてはならない存在。
そのネオとキスができて、嬉しいはずなのに……。
こんなはずじゃなかった。
思いが通じ合っているわけでもないのに、キスなんかしたくなかった……。
心から喜べないのは、冷たい瞳のせい。
瞳から感情が消え、事務的に唇が触れている――…
ネオのせいだ。
「ん、んーっ、……やぁっ」
わずかな隙をついて言葉にする。
こんなキス、欲しくない……。
「嫌? どこがです。こんなに胸を高鳴らせているくせに」
「ち、ちが……、きゃぅっ!」
握り潰されるかと思うくらい強く、小ぶりな胸をつかまれた。
痛みと緊張が走る。
包みこむ手に、シアの鼓動が伝わる。
「離し、て……」
「いいえ、離しませんよ。シアお嬢様に勉強を教えている最中ですから」
抵抗してネオの胸を強く叩く。
「――っ、っ!」
悲しみが一気に襲う。
胸を叩いた手。
伝わった心音が――…
規則的に鳴り響く、平静な音だったから……。
シアにとってキスは特別な行為だった。
思いを通わせ、幸せを確かめる行為だと。
互いの愛を与え合う行為だと。
――…そう、思っていたのに。
ネオにとっては、ただ肌が触れ合うだけの行為なのか。
…しょせん、二人はその程度の関係だ。
つぅっ、となぞる指。
その感覚に耐え切れず、びくりと肩を弾ませた。
「……こういう、卑猥なことのどこが、お稽古なわけ……?」
睨みつけると、くくく、と笑う。
「お嬢様の口から、《卑猥》という単語が出るとは。――…興奮しますね」
「――っ、んンっ!」
再びふさがれた唇。
シアは現実から目をそらすように、ぎゅっとまぶたを閉じた。
噛みつくように触れる激しい口づけ。
なにもかも、吸いつくされそうなほど、深く口づける。
シアは眉をひそめた。
ずっと、ずっと、大好きだったネオ。
家族愛のような、友情のような、なくてはならない存在。
そのネオとキスができて、嬉しいはずなのに……。
こんなはずじゃなかった。
思いが通じ合っているわけでもないのに、キスなんかしたくなかった……。
心から喜べないのは、冷たい瞳のせい。
瞳から感情が消え、事務的に唇が触れている――…
ネオのせいだ。
「ん、んーっ、……やぁっ」
わずかな隙をついて言葉にする。
こんなキス、欲しくない……。
「嫌? どこがです。こんなに胸を高鳴らせているくせに」
「ち、ちが……、きゃぅっ!」
握り潰されるかと思うくらい強く、小ぶりな胸をつかまれた。
痛みと緊張が走る。
包みこむ手に、シアの鼓動が伝わる。
「離し、て……」
「いいえ、離しませんよ。シアお嬢様に勉強を教えている最中ですから」
抵抗してネオの胸を強く叩く。
「――っ、っ!」
悲しみが一気に襲う。
胸を叩いた手。
伝わった心音が――…
規則的に鳴り響く、平静な音だったから……。
シアにとってキスは特別な行為だった。
思いを通わせ、幸せを確かめる行為だと。
互いの愛を与え合う行為だと。
――…そう、思っていたのに。
ネオにとっては、ただ肌が触れ合うだけの行為なのか。
…しょせん、二人はその程度の関係だ。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる