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第2章
第8話 お嬢様はダンスがお嫌い
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屋敷に戻ったシア。
着いて早々に、想像を絶するような、膨大な量の稽古が待っていた。
歴史の勉強から始まり、礼儀作法、語学、ルードヴィッヒ家のしきたりと心得など…。
サボっていたツケがまわってきたのだ。
自分のせいだとわかってはいても、知識を一気に叩きこまれたシアの頭は、爆発寸前だった。
あたりはすでに、暗くなっていた。
時間感覚が鈍く、外の暗さで夜になったのだと気がついた。
頭を使い過ぎて、お腹はペコペコ。
難しい勉強ばかりだったので、頭もクラクラする。
まだ終わらない稽古に、嫌気が刺してくる。
自業自得とはいえ、こんなに稽古が溜まっていたのか、と酷く後悔をした。
ネオの縁談話が本当かどうか、確認する暇さえない。
シアの縁談は、父に聞いて確認をすればいい。
しかし、いま一番聞きたいのは、ネオの縁談話――…
雑念をふり払うように、頭を横にふった。
いまは、ネオから教わるダンスの時間。
ネオに手を引かれながら、音楽に合わせてステップを踏む。
「もっと優雅に、かつスピーディーに」
「優雅に……スピーディーに……」
「指先はなめらかに、そして笑顔を絶やさず」
「なめらかに、笑顔を――…って、ムリ!!要求が多すぎるわ!!」
復唱しながらダンスをしていたシアは、ネオの手をふり払った。
駄々をこねる子どものように、地団駄を踏む。
「お嬢様、品性に欠けるような行動は慎みましょう」
「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁーーい!!」
ただでさえ、知識を詰め込まれたあとの頭。
覚えたことが、溢れ出てしまいそうだ。
複数のことを同時に考えながら、臨機応変に対応するのがダンス。
不器用なシアにとって、複数のことに気をつけながらダンスをするのは、無理難題だった。
キッと睨みつける。
その表情に、おやおや、とわざとらしく両手をあげた。
「女性たるもの、笑顔は基本中の基本でございます。そのように目を吊り上げていらっしゃると、婚約者になりたいと名乗りあげる者は、1人もいなくなりますよ」
ネオは楽しそうに、くくく、と笑った。
ルードヴィッヒ家としての自覚を持つべきだというわりには、女らしさが欠けているシアを見ては、楽しそうにからかう。
…本心が、わからない。
シアは顎を引き、むむむ、と声をあげた。
「いるかもしれないわよ。こんな私でも、ありのままを受け入れてくれるような紳士様が」
「それは、いかがなものでしょう」
しれっという態度に、シアは眉をひそめた。
結婚をするために稽古をさせているのに、シアが結婚できるかどうか、というネオ。
矛盾する態度が、なんだかムカつく。
叫びたい気持ちを、渾身の力で抑える。
そして腕を組むと、ふふん、と笑った。
「私にだって、有力な婚約者が決まったそうじゃない」
「…有力な、婚約者?」
ネオが低く、声を潜める。
「どなたが、有力な婚約者だというんです」
眉をひそめ、まっすぐに見つめる。
真剣なまなざしに、いたたまれない気持ちになり、シアは床へと視線を落とした。
「…クライム、兄様」
ぽつりと呟く。
嘘ではないのだから、もっと堂々といえばよかった、などと少しだけ後悔する。
着いて早々に、想像を絶するような、膨大な量の稽古が待っていた。
歴史の勉強から始まり、礼儀作法、語学、ルードヴィッヒ家のしきたりと心得など…。
サボっていたツケがまわってきたのだ。
自分のせいだとわかってはいても、知識を一気に叩きこまれたシアの頭は、爆発寸前だった。
あたりはすでに、暗くなっていた。
時間感覚が鈍く、外の暗さで夜になったのだと気がついた。
頭を使い過ぎて、お腹はペコペコ。
難しい勉強ばかりだったので、頭もクラクラする。
まだ終わらない稽古に、嫌気が刺してくる。
自業自得とはいえ、こんなに稽古が溜まっていたのか、と酷く後悔をした。
ネオの縁談話が本当かどうか、確認する暇さえない。
シアの縁談は、父に聞いて確認をすればいい。
しかし、いま一番聞きたいのは、ネオの縁談話――…
雑念をふり払うように、頭を横にふった。
いまは、ネオから教わるダンスの時間。
ネオに手を引かれながら、音楽に合わせてステップを踏む。
「もっと優雅に、かつスピーディーに」
「優雅に……スピーディーに……」
「指先はなめらかに、そして笑顔を絶やさず」
「なめらかに、笑顔を――…って、ムリ!!要求が多すぎるわ!!」
復唱しながらダンスをしていたシアは、ネオの手をふり払った。
駄々をこねる子どものように、地団駄を踏む。
「お嬢様、品性に欠けるような行動は慎みましょう」
「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁーーい!!」
ただでさえ、知識を詰め込まれたあとの頭。
覚えたことが、溢れ出てしまいそうだ。
複数のことを同時に考えながら、臨機応変に対応するのがダンス。
不器用なシアにとって、複数のことに気をつけながらダンスをするのは、無理難題だった。
キッと睨みつける。
その表情に、おやおや、とわざとらしく両手をあげた。
「女性たるもの、笑顔は基本中の基本でございます。そのように目を吊り上げていらっしゃると、婚約者になりたいと名乗りあげる者は、1人もいなくなりますよ」
ネオは楽しそうに、くくく、と笑った。
ルードヴィッヒ家としての自覚を持つべきだというわりには、女らしさが欠けているシアを見ては、楽しそうにからかう。
…本心が、わからない。
シアは顎を引き、むむむ、と声をあげた。
「いるかもしれないわよ。こんな私でも、ありのままを受け入れてくれるような紳士様が」
「それは、いかがなものでしょう」
しれっという態度に、シアは眉をひそめた。
結婚をするために稽古をさせているのに、シアが結婚できるかどうか、というネオ。
矛盾する態度が、なんだかムカつく。
叫びたい気持ちを、渾身の力で抑える。
そして腕を組むと、ふふん、と笑った。
「私にだって、有力な婚約者が決まったそうじゃない」
「…有力な、婚約者?」
ネオが低く、声を潜める。
「どなたが、有力な婚約者だというんです」
眉をひそめ、まっすぐに見つめる。
真剣なまなざしに、いたたまれない気持ちになり、シアは床へと視線を落とした。
「…クライム、兄様」
ぽつりと呟く。
嘘ではないのだから、もっと堂々といえばよかった、などと少しだけ後悔する。
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