【完】海賊王と竜の瞳を持つ皇女

hiro

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第7章

第45話 部外者

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 ジンの部屋で少し休憩をしたあと、宿舎の雑用仕事をした。


 宿舎にきたばかりのころは、なにも出来なかった。
 船員から掃除や炊事を教えてもらい、足手まといにならない程度に成長した。


 それでもまだ、街の子どもにも及ばない。
 覚えることはたくさんある。


 優しいガレットに教わりながら、出来ることは一生懸命やった。
 ジンに叱られながらも、めげずに仕事を覚えていった。
 


 宿舎の仕事を1時間ほどこなすと、王宮へと戻ったルーチェ。


 夕食の準備に訪れた侍女に疑われぬように、退屈そうに本を読む。


 夕食を終えると、レンがやってきた。

 明日の予定は、午前中の礼儀作法のみ。
 午後の予定を聞かれたため、本の続きを読むから邪魔をしないで欲しい、と伝えた。


 レンは深々と頭を下げると、部屋をあとにした。



 夜の城は警備も薄く、足音をたてなければ外に出られた。

 こっそりと抜け出す、ルーチェ。



 コキュートス川の橋を渡れば、《サラ》になる。

 《サラ》になって、ジンの顔を見たい。



 いつしか《サラ》は、夜にジンと会うのが習慣となっていた。

 宿舎につくと、相変わらず宴三昧の船員たちで賑わっている。


 入り口の扉をそっと開いたが、大賑わいで入りにくい。

 《サラ》はいつものように、ジンの部屋の窓から侵入した。


 部屋にいると、下で賑わう声がする。


(今日も楽しそう)


 《サラ》はふっと笑みをこぼした。

 様子を見ようと、そっと扉の隙間から顔を覗かせた。


 遠目でもすぐに見つけられる、黒い髪の男。
 その姿を見つけると、自然と頬がゆるんだ。



『例の件、どうするんスか船長』

 船員の1人は、笑いながら問いかけた。

『もちろん、変更はない。もう少しだ』

 不敵に笑うような、ジンの低い声。


『今回はそう簡単にはいかねぇからな。失敗したら、どうなるか……わかってるよな。心してかかれよ、野郎ども!』

『うぃーっ!』


 酒を大きくふりかざし、一斉に天井を仰いだ。



 《サラ》は小さくため息をつくと、扉を閉めた。
 下におりることはせずに、いつものようにジンの部屋で待つことにした。



 例の件。



 おそらく、自分が入ってはいけない会話。
 仲間として迎え入れてくれても、これ以上、深入りをしてはいけない。


 わかってはいるけれど、《部外者》といわれたようで、少し寂しい。



 もともと、オーディン地帯にいるあいだだけ、の約束だった。


 でも……自分の居場所を、ようやく見つけたような気になっていた。


 そんな自分が、惨めに思えた。
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