【完】海賊王と竜の瞳を持つ皇女

hiro

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第6章

第43話 昼間に堂々と

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 宿舎に戻った2人は、居間で寝転ぶ船員たちを避けながら部屋に入った。


「サラちゃんおかえりー」

「あ、ただいまです」

 声をかける船員たちは、全員頬が赤かった。

 まさか、と彼らの手を見つめると、手には酒。
 体と一体化しているかのように、握りしめていた。



「なぁ、サラちゃーん。俺らと一緒に飲まない?」

「飲みません。っていうか、休肝日をちゃんとつくってください、っていいましたよね」

「……そうだっけ?」

「なんのことだ? サラちゃんがそんなこと、いうわけないよなぁー?」

「サラちゃん、朝から酔っ払ってる? 介抱してあげるからこっちおいで」

「抜け駆けか? 俺の膝にこいよぉー」


 我も、我も、と詰めよる船員たち。

 困りながら笑みを向けていると、そばにいたガレットが全員の頭をバシッと叩いた。


「お前らは酔いすぎだ。サラちゃんを見てみろ」


 頬を引きつらせたままの《サラ》の顔を見ると、あはは、と笑った。

「悪い悪い」

「また今度な」


 今度があるのか、と《サラ》は苦笑いをした。
 前を歩いていたはずのジンに瞳をうつすと、もう階段をのぼりきっていた。


 部屋はもう目の前。


 《サラ》は置いていかれまいと、慌てて追いかけた。



 その後ろ姿を興味津々に見る船員たち。
 ひそひそと、なにか話している。


 なんだろう、と首を捻りながら、ジンの後ろをついていく。

 ぴたりと部屋の前で立ちどまった。




「お前、なんでついてきたんだよ」

「え? なんでって、なんで?」

 一緒に部屋に入ろうとする《サラ》に視線を向けると、きょとんと目を丸くしていた。


 酔い潰れた集団の中にいる勇気はない。
 そのため、いま一番安全と思われる、ジンについてきたのだが……。


 眉間に皺が寄せたまま、《サラ》を見つめた。


「ガレットの手伝いでもしてやれ。そろそろ夕飯の仕度だろう」

「ガレットさんだったら、居間でくつろいでいたわ。夕飯の仕込みが終わったんじゃないかしら」


「じゃあジェイス」

「ジェイスさんだったら、ようやく航海日誌をつけ終わった、っていっていたわ。あと伝言で、つぎの航海からは自分で書け、って」


「……ディンセント」

「しばらくこなくていい、っていわれたわ。医療の知識ないから、あまり手伝いにならないんだもの」

 提案をすべて断られて、ため息をつく。

 ジンの横を抜けようとする《サラ》。
 阻止しようと手をのばしたが、届かない。


 《サラ》はジンの部屋へと入った。

 

 さすがに昼間から堂々と部屋に入るのは、他の船員がいる手前……まずい。


 そんなジンの気苦労など知らずに、見慣れてきた部屋のベッドに腰をかけた。

 にこりと笑う少女に観念したジンは、部屋の扉を閉めた。
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