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一章 0歳から始まる
NPCモンスターが赤ん坊に転生した
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俺は知らないゲームの知らないモンスター。
毎日毎日変な闘技場らしき場所で仁王立ちし続けて、人が来たら「来たか...」と言って過去の話をする。その後全く知らない人と剣と魔法をぶつけ合い、大抵負ける。死んだと思ったらまた俺は仁王立ちして、同じことを繰り返す。
自我がなかったからつらいとも思わないし、つまらないとも思わない。
[モンスター名:プラチナム・リザード・ドラゴン
二足歩行型の中ボスで何故か敵なのに独自ストーリーを持っているキャラ。独自ストーリーは40%泣けるが、二週目からは基本スキップ。スキップボタンを連打して経験値を戴く。変則的な攻撃パターンと魔力無限という特徴を持っているが、パターンは覚えれば簡単だし魔力無限も押し切れば関係ない。]
それが俺。
え?そんな自我がない奴がどうやって「昔話」をしているかって?俺は終わったのさ。
具体的にはゲームのサービスが終了した。いつも通り仁王立ちしてたら急に誰も来なくなったのだ。そしたら俺の脳内に残り4:90:45という数値が出てきた。まあでも俺はNPC。アップデートの時と同じ感覚だったので変わらずに仁王立ちを続けていると...世界が暗黒に包まれた。真っ暗になったのだ。上も下も黒黒黒。自分が立っているのかもわからない。
落下している可能性アリ
俺は自我を持っていないので従順にその判断に従い、落下ダメージを無効にする技を放つプログラムを起動した。勿論その結果その技を暗闇で一人したことになる。
でも運がいいのか悪いのか。この行動が何かしらの鍵となって俺に自我が芽生えた。恐らく落下している可能性があるというゲームではあり得ないことに対応できたから自我が芽生えたのだろう。
俺は暗闇の中で自我が無い頃の俺に呆れていた。何してたんだか...。
暗闇の中でそう思い、目を瞑る。今更自我なんて芽生えても意味なんてない。俺は恐らく一生この暗闇に耐え続けるんだな。
でも...なんだか暖かいような気もする。
---
あれからどれくらい時間が経過しただろうか。多分数日は経過した。俺は目をゆっくりと開けた。
おや?
目を開けるとそこはベッドだった。
俺の目の前には人間が俺を見下ろしている。いやこのサイズ。巨人族だろう。それも女だ。リザード・ドラゴンの俺は身長二メートルを優に超えている。このサイズなら十メートルはあるだろう。
「あ、目を開けられるようになったのね!」
?なんだこの巨人!
巨人は俺を抱き上げた。
なにをする!やめろ!まさか食べる気か?!
「真広ちゃん...私のかわいい子...」
そう言い巨人は俺を大事そうに抱えた。まるで俺が子供みたいな。
俺はやむを得ないと思い、片手を掲げて魔法を唱えようとした。だが俺の視界に入ってきた手はいつも俺が見るようなゴツくて尖った手じゃなかった。
赤ん坊だ。
その手は人間の赤ん坊の手だった。ドラゴンとは思えないほど小さくまだうまく力も入らない。っとなると...この女は俺の母親?そんなわけがない。俺はゲームのキャラクターだ。でも...あのゲームに生殖機能はなかったはず。
これはアップデートか!そうかそうか!新規要素が追加されてバグが発生しているのだろう。
俺はそう自分に言い聞かせて落ち着かせた。落ち着いて考えてみた。
転生
考えてみるとこの単語が浮かんでくる。転生と言えばゲームでレベルが上限に達した時によくやるあれか?現実的に考えたらあり得ない。だが俺はゲームのキャラクターだ。ゲームのキャラクターが自我を持つという非現実がもう既に起こっている。
じゃあ言語は?この母親らしき人は言語「日本語」で喋っている。一様俺がいたゲームはユーザー数も多かったから12か国語俺は理解できる。そしてこの言語は日本語だ。黒髪でこの言語。間違いないここは日本だ。
母親はお休みと言って俺をベッドに戻し、部屋を出ていった。
---
俺が転生してから何日か経過した。
どうやら俺の名前は成瀬真広と言うらしい。感覚でわかる女だ。
首がまだ座ってないので何とも言えないが、感覚この体は健康だ。母親の母乳もちゃんと飲めるし体も健康に動かせる。
心配なのは父親だ。俺は今まで一度も父親と会ってない。出張とかなら仕方がないが、普通自分の息子の出産日って家にいる物だろう。
「そうなの。全然泣かないのよ。心配で...
そうそう。病院に行った方がいいのかしら。」
ドアの向こう側で母親が誰かと会話しているのが聞こえる。まさか父親か?父親なら俺の顔を真っ先に見に来いよ!
そう期待していると、ドアが開き母が入ってくる。母は俺を撫でながら板に向かって何やら話をし続ける。
「やっぱりそうなの?病院の予約とかしとかなきゃ...」
何をしているんだ?そんな板切れに俺のことを相談しても意味はないと思うが。ってそんなことより病院!嫌だ嫌だ。もしかしたら異端児として排除されるかもしれない。せっかく転生したのにそれはあんまりだ。とはいえ俺はまだ喋れないので家族サービスで笑顔をプレゼント...
ダメだ表情筋がぎこちない。魔力を使うか。
筋力強化 発動
...
何も起きない。まさか魔力が0なのか?確かに魔力は体力と同じく体に依存するから生まれたてはそうなのか。
こうなったら意地でも笑うしかない...
二カァ
そんな効果音が入るような笑い方をした。ほとんど口元しか動いてなくて「イ」の口だがしょうがない。
「あ、やっぱり大丈夫みたい。心を開いてくれたわ。今笑ってくれてる。」
「うぅあぁ」
おっ声が出た。
「きゃ!今声出した?声出せたの?」
普通は生まれた瞬間声は出せるのだがな。驚くポイントが違うぞママン。
母親が出ていったあと俺は考え出した。
ヒトの人生は約40年から60年。ふり幅が大きいのは時代によって寿命が違う生き物だからだ。しかしこの世界の人間の寿命は恐らく高い。時代によっては俺が想定している60年を超える時代もあるだろう。
俺にとってその年月は長いようで短い。そんな限られた一生をドブに捨てるなんてゴメンだね。俺は上に立つ人間になる。NPCで文字通り脳無しだった俺はこの人生で駆け上がって見せる。
どうやら会話を聞いた話から予測するにこの世界にも魔法と言う概念はあるし、モンスターだっている。レベルなんていう概念も存在するようだ。
それに俺はドラゴンの精神を持つ。魔力が無限からゼロに?鉄の壁も貫く筋力がゼロに?関係ない。
白金の精神で俺は生き抜いてやる。
毎日毎日変な闘技場らしき場所で仁王立ちし続けて、人が来たら「来たか...」と言って過去の話をする。その後全く知らない人と剣と魔法をぶつけ合い、大抵負ける。死んだと思ったらまた俺は仁王立ちして、同じことを繰り返す。
自我がなかったからつらいとも思わないし、つまらないとも思わない。
[モンスター名:プラチナム・リザード・ドラゴン
二足歩行型の中ボスで何故か敵なのに独自ストーリーを持っているキャラ。独自ストーリーは40%泣けるが、二週目からは基本スキップ。スキップボタンを連打して経験値を戴く。変則的な攻撃パターンと魔力無限という特徴を持っているが、パターンは覚えれば簡単だし魔力無限も押し切れば関係ない。]
それが俺。
え?そんな自我がない奴がどうやって「昔話」をしているかって?俺は終わったのさ。
具体的にはゲームのサービスが終了した。いつも通り仁王立ちしてたら急に誰も来なくなったのだ。そしたら俺の脳内に残り4:90:45という数値が出てきた。まあでも俺はNPC。アップデートの時と同じ感覚だったので変わらずに仁王立ちを続けていると...世界が暗黒に包まれた。真っ暗になったのだ。上も下も黒黒黒。自分が立っているのかもわからない。
落下している可能性アリ
俺は自我を持っていないので従順にその判断に従い、落下ダメージを無効にする技を放つプログラムを起動した。勿論その結果その技を暗闇で一人したことになる。
でも運がいいのか悪いのか。この行動が何かしらの鍵となって俺に自我が芽生えた。恐らく落下している可能性があるというゲームではあり得ないことに対応できたから自我が芽生えたのだろう。
俺は暗闇の中で自我が無い頃の俺に呆れていた。何してたんだか...。
暗闇の中でそう思い、目を瞑る。今更自我なんて芽生えても意味なんてない。俺は恐らく一生この暗闇に耐え続けるんだな。
でも...なんだか暖かいような気もする。
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あれからどれくらい時間が経過しただろうか。多分数日は経過した。俺は目をゆっくりと開けた。
おや?
目を開けるとそこはベッドだった。
俺の目の前には人間が俺を見下ろしている。いやこのサイズ。巨人族だろう。それも女だ。リザード・ドラゴンの俺は身長二メートルを優に超えている。このサイズなら十メートルはあるだろう。
「あ、目を開けられるようになったのね!」
?なんだこの巨人!
巨人は俺を抱き上げた。
なにをする!やめろ!まさか食べる気か?!
「真広ちゃん...私のかわいい子...」
そう言い巨人は俺を大事そうに抱えた。まるで俺が子供みたいな。
俺はやむを得ないと思い、片手を掲げて魔法を唱えようとした。だが俺の視界に入ってきた手はいつも俺が見るようなゴツくて尖った手じゃなかった。
赤ん坊だ。
その手は人間の赤ん坊の手だった。ドラゴンとは思えないほど小さくまだうまく力も入らない。っとなると...この女は俺の母親?そんなわけがない。俺はゲームのキャラクターだ。でも...あのゲームに生殖機能はなかったはず。
これはアップデートか!そうかそうか!新規要素が追加されてバグが発生しているのだろう。
俺はそう自分に言い聞かせて落ち着かせた。落ち着いて考えてみた。
転生
考えてみるとこの単語が浮かんでくる。転生と言えばゲームでレベルが上限に達した時によくやるあれか?現実的に考えたらあり得ない。だが俺はゲームのキャラクターだ。ゲームのキャラクターが自我を持つという非現実がもう既に起こっている。
じゃあ言語は?この母親らしき人は言語「日本語」で喋っている。一様俺がいたゲームはユーザー数も多かったから12か国語俺は理解できる。そしてこの言語は日本語だ。黒髪でこの言語。間違いないここは日本だ。
母親はお休みと言って俺をベッドに戻し、部屋を出ていった。
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俺が転生してから何日か経過した。
どうやら俺の名前は成瀬真広と言うらしい。感覚でわかる女だ。
首がまだ座ってないので何とも言えないが、感覚この体は健康だ。母親の母乳もちゃんと飲めるし体も健康に動かせる。
心配なのは父親だ。俺は今まで一度も父親と会ってない。出張とかなら仕方がないが、普通自分の息子の出産日って家にいる物だろう。
「そうなの。全然泣かないのよ。心配で...
そうそう。病院に行った方がいいのかしら。」
ドアの向こう側で母親が誰かと会話しているのが聞こえる。まさか父親か?父親なら俺の顔を真っ先に見に来いよ!
そう期待していると、ドアが開き母が入ってくる。母は俺を撫でながら板に向かって何やら話をし続ける。
「やっぱりそうなの?病院の予約とかしとかなきゃ...」
何をしているんだ?そんな板切れに俺のことを相談しても意味はないと思うが。ってそんなことより病院!嫌だ嫌だ。もしかしたら異端児として排除されるかもしれない。せっかく転生したのにそれはあんまりだ。とはいえ俺はまだ喋れないので家族サービスで笑顔をプレゼント...
ダメだ表情筋がぎこちない。魔力を使うか。
筋力強化 発動
...
何も起きない。まさか魔力が0なのか?確かに魔力は体力と同じく体に依存するから生まれたてはそうなのか。
こうなったら意地でも笑うしかない...
二カァ
そんな効果音が入るような笑い方をした。ほとんど口元しか動いてなくて「イ」の口だがしょうがない。
「あ、やっぱり大丈夫みたい。心を開いてくれたわ。今笑ってくれてる。」
「うぅあぁ」
おっ声が出た。
「きゃ!今声出した?声出せたの?」
普通は生まれた瞬間声は出せるのだがな。驚くポイントが違うぞママン。
母親が出ていったあと俺は考え出した。
ヒトの人生は約40年から60年。ふり幅が大きいのは時代によって寿命が違う生き物だからだ。しかしこの世界の人間の寿命は恐らく高い。時代によっては俺が想定している60年を超える時代もあるだろう。
俺にとってその年月は長いようで短い。そんな限られた一生をドブに捨てるなんてゴメンだね。俺は上に立つ人間になる。NPCで文字通り脳無しだった俺はこの人生で駆け上がって見せる。
どうやら会話を聞いた話から予測するにこの世界にも魔法と言う概念はあるし、モンスターだっている。レベルなんていう概念も存在するようだ。
それに俺はドラゴンの精神を持つ。魔力が無限からゼロに?鉄の壁も貫く筋力がゼロに?関係ない。
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