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第四章 暗黒神編

第59話 一週間の休暇

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王座に座るアルセリスを前に膝をつく守護者及び守護者補佐達、ランスロットが欠けて全員揃っているとは言えないが久し振りに殆どが揃った気がした。


「よく集まった、それぞれ報告を頼む」


アルセリスは声を作り低く威圧感のある声で言うとオーフェンが桃色の髪を揺らし可愛らしい仕草で立ち上がった。


「先ずはフェリス帝国組から報告します!アルスセンテメンバーのアルドスが死亡した事により国内は一時的に揺れましたが皇帝と新たに力を付けたアダムスにより国はより一層一体感を増し、警備も過去に無いほど強化されてます」


「そ、そうか」


アルスセンテの事は正直覚えて居ない、アダムスの名は微かに残っているがアルドスに至っては誰かすら分からない……それと一つ気になる事があった。


「オーフェン、その仕草はなんだ?」


「ああ、これですか?」


そう言い可愛らしくピースを目元に当て片足をあげる、元アダマスト大陸の英雄だった男の仕草とは思えなかった。


「私も気になってましたよ、オーフェン、君ってそんなキャラだった?」


アルセリスの言葉に便乗してリリィも立ち上がる、その言葉にオーフェンは指を立てて左右に振ると『ちっちっ』と言った。


「アルセリス様もリリィも分かって無いなー、せっかく可愛い体を手に入れたんだから利用しない手は無い!リカに教えてもらったんですよ、これで潜入の時も怪しまれない!」


そう自身満々に言い胸を張るオーフェン、過去の彼を知る人物からすると爆笑モノだろう。


「くっ……くくっ……」


必死に笑いを堪える声が聞こえる、アルセリスは視線を移すと其処には顔を真っ赤にしたアルラが居た。


そう言えばアルラとオーフェンは一度過去に戦った経験を持つ仲……しかもその時のオーフェンは筋骨隆々な男……それが今やあんな少女であんな言動……想像するとこっちまで笑いそうだった。


「アルセリス様、私からも報告が」


そう言い立ち上がるウルス、ほんわかしているオーフェン達を他所にアルセリスは視線を移した。


「確か大陸担当だったな」


「はい、フェンディル、マールと100体ほどのゴブリンを引き連れ大陸に向かったのですが辿り着けませんでした」


「辿り付けない?」


ウルスの言葉にアルセリスの声色は明らかに険しくなって居た。


「厳密には謎の壁に阻まれ進めない……と言ったところです」


「魔法陣の類か?」


「恐らく……もう少しお時間を頂いても宜しいですか?何か解けそうな気がするのです」


難しい顔をして言うウルス、謎の壁に阻まれる……魔法陣の類とウルスは予測しているが数千キロにも及ぶ海に大陸と大陸を隔てる障壁を張る魔法陣を生成するなど有り得ない……ウルスレベルの魔導師が五人集まっても出来るか怪しかった。


「……頼んだウルス」


「かしこまりました、それでは」


そう言いウルスは姿を消す、暗黒神の事でもう少し居て欲しかったのだが仕方が無いだろう。


「粗方報告は終わったか……良し、お前達は今この世界の状況を把握しているか?」


「暗黒神の復活……で御座いますねアルセリス様」


アルセリスの言葉に素早く反応するアウデラス、流石王国の頭脳、情報が早かった。


「そうだ、暗黒神カルザナルドの復活……ついでに魔人や魔獣もな」


「げっ……カルザナルドっておれ、じゃなくて私が封印に携わった奴じゃ無いですか」


カルザナルドの名を聞き面倒臭そうに表情を歪めるオーフェン、そこら辺の歴史は知らず少し意外だったがアルセリスは話を続けた。


「アルカド王国の目的はこの大陸及び世界の征服……暗黒神の復活はまたと無いチャンスだと思わないか?」


「どう言う事でしょうアルセリス様?」


立ち上がり両手を広げるアルセリスにアルラは首を傾げ尋ねた。


「力での征服では反感を買い下克を生む……それも良いのだが私としては面倒臭いのは避けたい、そこで暗黒神をアルカド王国のメンバーで封印するのだ」


王国を世に知らしめるまたと無い機会……暗黒神復活を止めなかったのはこう言う理由もあったからだった。


「成る程……流石アルセリス様です!」


そう言いアウデラスは拍手を送る、だが問題はここからだった。


「一先ず各自一週間の休暇を与える、恐らくその間に暗黒神は世界に絶望を与える……絶望の中の休暇、楽しむが良い」


その言葉を残してアルセリスは杖を突き自室へと転移する、そしてベットに鎧のまま寝転がると大きくため息を吐いた。


「絶望の中の休暇、楽しむが良い……」


その言葉、数秒前に自分が言い放った言葉なのだが恥ずかしくて死にそうだった。


厨二臭さ満載……だが部下に良いイメージを与え威厳を保つ事は出来た筈だった。


「一週間……ゆっくり寝よ」


そう言い眠りにつこうとする、だがその時扉がノックされた。


「アルラです」


その声にアルセリスは立ち上がり机の前に適当な書類を出現させると如何にも仕事をしている風を装った。


「入れ」


その言葉と同時にアルラは扉を開けた。


「職務中失礼します……最近末端の部下達がアルセリス様に不信感を抱いて居まして」


「不信感……何故だ?」


アルラの言葉に首を傾げる、恐らくはランスロットの件なのだろうが一応の為確認をしておいた。


「ランスロットが殺された件で部下の力量も分からず任務に築かせたから……だそうです、殺しましょうか?」


物騒な言葉にアルセリスは苦笑いをしながら首を振った。


「言っただろ、暴力では反感しか買わない、その件に付いては後に対処する」


「は、はい……それともう一つ」


用が終わり出て行こうとするアルラが扉前で足を止め背を向けながら言う、まだ何かあるのだろうか。


「いえ、やっぱり何もないです」


アルラはそう言い残すと扉を閉め出て行った。


一体何を言いたかったのだろうか……だが今はどうでも良いこれから一週間の休暇、それを今は存分に満喫するのみだった。
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