34 / 73
第三章 クリミナティ調査編
第34話 造られた存在
しおりを挟む
トイレの鏡前に立ち兜に手を伸ばす、そしてアルセリスは兜を持ち上げ外そうとするがその手を離した。
自身の素顔を知ってしまえば何かが崩れ去る……そんな気がした。
正直この世界で素顔などどうでも良かった、自分には慕ってくれる部下が居る……それに圧倒的強さがある、それだけで良かった。
アルセリスはトイレから出るとアルラとシャリエルが待つテーブルへと戻る、相変わらず犬猿の仲だった。
「セリス様、何故こんな女を一緒に?」
シャリエルの方を怪訝そうに見ると机に置いてあったシャリエルの紅茶を少し遠い場所に移動させる謎の嫌がらせをするアルラ、何故と言われても勝手について来た故にアルセリスは返答に困っていた。
「別にいいでしょ、減るもんじゃ無いし……て言うかさっきから足蹴るのやめて貰える?」
微かに揺れるテーブル、その下ではアルラがシャリエルの足を蹴り、それ彼女は足裏で止めていた。
あまりに子供じみた戦いにアルセリスは溜息を吐く、ある意味仲が良いのかも知れなかった。
「そう言えば貴方達珍しいわよね、人間と他種族のパーティーなんて」
そう言いシャリエルはアルラの角を指差す、指摘されて始めてアルラは無意識のうちに角が出ていた事に気が付いた。
「この国は他種族に理解があると聞いたがやはりまだ珍しいのか?」
動揺するアルラの肩を叩きアルセリスは尋ねる、その言葉にシャリエルは少し間を空け悩むような表情を見せた。
「そうね、国王が理解のある人だから他種族の入国を許可してるけど国民は正直8割の人は理解してないわ、まぁ私は正直なんでも良いけど」
「8割……」
他種族を拒む気持ちがアルセリスには分からなかった。
様々な種族のキャラを従わせて居るからでは無く、ただ純粋に同じ生き物として差別する必要があるのか……疑問だった。
「私が貴女のこと嫌いなのは種族が違うからって事じゃないから」
遠ざけられた紅茶を自分の方に寄せて飲みながらシャリエルは言った。
「種族関係無く私も大嫌いですよ」
そう言ってそっぽ向くアルラ、基本的に人間が嫌いな彼女だがシャリエルの事は少し気になっている様子だった。
やはり何だかんだ仲は良さそうだった。
アルセリスは椅子を立つとカフェのマスターに代金を払い店を出る、何も言わず立ち上がったアルセリスを見てアルラは一瞬戸惑うも、すぐ様アルセリスを追った。
「また……ね」
シャリエルは店を去るアルセリスの背中を見てそう呟くと残っていた紅茶を全て飲み干した。
「セリス様、人間と言う種族は分からないものですね」
路地裏にある空き地のベンチに座り遠くでいじめられて居るエルフの子供を眺めながら呟くアルラ、その表情は何処か虚ろだった。
「そうだな」
アルセリスはそれだけを言うとアルラの隣に座った。
「私は……人間が憎かったです、過去に数千……数万と超える人間を殺しました、今となっては興味すら抱かない様になりました……ですがシャリエルの様な人は久し振りに見ました」
アルラの言葉に黙って頷くアルセリス、だが内心驚いていた。
数万と言う人間を殺して来たと言う設定だったとは……あまりキャラ設定を深く読んでいなかった故に驚きを隠すので精一杯だった。
ゲーム時代はいつでも見れたのだが異世界となってしまった今は見る術が無い……こうして話して貰えるのは正直有り難かった。
「何故そんなにも人間が憎いんだ?」
「私は鬼姫、オーガの女王と呼ばれていました、ですが実際は人間とオーガの混合種、人間にオーガ遺伝子を組み込む事で生み出す事に成功したいわば作られた存在です」
「造られた存在か……」
混合種……アルラには悪いが少し良い案かも知れなかった。
「今となってはそのお陰で人間のように魔法を使いオーガの様に凄まじい力を発揮する事が出来るので良いんですけどね」
そう言って笑うアルラ、だがその表情は何処か悲しそうだった。
「セリス様、こんな暗い話しやめましょう!」
すぐにアルラは表情を明るくし手を叩くと立ち上がる、そしてアルセリスの手を引いた。
「まぁ……そうだな」
アルセリスは笑顔のアルラを見てそう呟くと立ち上がる、そして空を見上げるとアルラに手を引かれ歩いて行った。
自身の素顔を知ってしまえば何かが崩れ去る……そんな気がした。
正直この世界で素顔などどうでも良かった、自分には慕ってくれる部下が居る……それに圧倒的強さがある、それだけで良かった。
アルセリスはトイレから出るとアルラとシャリエルが待つテーブルへと戻る、相変わらず犬猿の仲だった。
「セリス様、何故こんな女を一緒に?」
シャリエルの方を怪訝そうに見ると机に置いてあったシャリエルの紅茶を少し遠い場所に移動させる謎の嫌がらせをするアルラ、何故と言われても勝手について来た故にアルセリスは返答に困っていた。
「別にいいでしょ、減るもんじゃ無いし……て言うかさっきから足蹴るのやめて貰える?」
微かに揺れるテーブル、その下ではアルラがシャリエルの足を蹴り、それ彼女は足裏で止めていた。
あまりに子供じみた戦いにアルセリスは溜息を吐く、ある意味仲が良いのかも知れなかった。
「そう言えば貴方達珍しいわよね、人間と他種族のパーティーなんて」
そう言いシャリエルはアルラの角を指差す、指摘されて始めてアルラは無意識のうちに角が出ていた事に気が付いた。
「この国は他種族に理解があると聞いたがやはりまだ珍しいのか?」
動揺するアルラの肩を叩きアルセリスは尋ねる、その言葉にシャリエルは少し間を空け悩むような表情を見せた。
「そうね、国王が理解のある人だから他種族の入国を許可してるけど国民は正直8割の人は理解してないわ、まぁ私は正直なんでも良いけど」
「8割……」
他種族を拒む気持ちがアルセリスには分からなかった。
様々な種族のキャラを従わせて居るからでは無く、ただ純粋に同じ生き物として差別する必要があるのか……疑問だった。
「私が貴女のこと嫌いなのは種族が違うからって事じゃないから」
遠ざけられた紅茶を自分の方に寄せて飲みながらシャリエルは言った。
「種族関係無く私も大嫌いですよ」
そう言ってそっぽ向くアルラ、基本的に人間が嫌いな彼女だがシャリエルの事は少し気になっている様子だった。
やはり何だかんだ仲は良さそうだった。
アルセリスは椅子を立つとカフェのマスターに代金を払い店を出る、何も言わず立ち上がったアルセリスを見てアルラは一瞬戸惑うも、すぐ様アルセリスを追った。
「また……ね」
シャリエルは店を去るアルセリスの背中を見てそう呟くと残っていた紅茶を全て飲み干した。
「セリス様、人間と言う種族は分からないものですね」
路地裏にある空き地のベンチに座り遠くでいじめられて居るエルフの子供を眺めながら呟くアルラ、その表情は何処か虚ろだった。
「そうだな」
アルセリスはそれだけを言うとアルラの隣に座った。
「私は……人間が憎かったです、過去に数千……数万と超える人間を殺しました、今となっては興味すら抱かない様になりました……ですがシャリエルの様な人は久し振りに見ました」
アルラの言葉に黙って頷くアルセリス、だが内心驚いていた。
数万と言う人間を殺して来たと言う設定だったとは……あまりキャラ設定を深く読んでいなかった故に驚きを隠すので精一杯だった。
ゲーム時代はいつでも見れたのだが異世界となってしまった今は見る術が無い……こうして話して貰えるのは正直有り難かった。
「何故そんなにも人間が憎いんだ?」
「私は鬼姫、オーガの女王と呼ばれていました、ですが実際は人間とオーガの混合種、人間にオーガ遺伝子を組み込む事で生み出す事に成功したいわば作られた存在です」
「造られた存在か……」
混合種……アルラには悪いが少し良い案かも知れなかった。
「今となってはそのお陰で人間のように魔法を使いオーガの様に凄まじい力を発揮する事が出来るので良いんですけどね」
そう言って笑うアルラ、だがその表情は何処か悲しそうだった。
「セリス様、こんな暗い話しやめましょう!」
すぐにアルラは表情を明るくし手を叩くと立ち上がる、そしてアルセリスの手を引いた。
「まぁ……そうだな」
アルセリスは笑顔のアルラを見てそう呟くと立ち上がる、そして空を見上げるとアルラに手を引かれ歩いて行った。
0
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
神の布使い
KeyBow
ファンタジー
高校3年生の主人公はスキー大会の決勝中、ジャンプをしたタイミングで異世界に飛ばされてしまう。
鼻をほじった奴の所為で召喚事故が!本来の場所には雪の塊のみが現れ、主人公は女子風呂に落下!
その後鉱山送りにされ、移送中に魔物の襲撃があり、魔物から死物狂いで逃げて・・・川に落下。
その後流されて目を覚ました所から物語はスタートする。
そして1人の少女と出会い・・・
右も左も分からぬ異世界で生き残れるのか?
手にするのは神の布(褌)
布だと思い頭に巻いていますが、それは神が身につけていた臭い付の汚い褌だというのを知らぬが仏。でもチートアイテムには代わりない!
魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。それでも俺は甘やかします~
うみ
ファンタジー
馬の装蹄師だった俺は火災事故から馬を救おうとして、命を落とした。
錬金術屋の息子として異世界に転生した俺は、「装蹄師」のスキルを授かる。
スキルを使えば、いつでもどこでも装蹄を作ることができたのだが……使い勝手が悪くお金も稼げないため、冒険者になった。
冒険者となった俺は、カメレオンに似たペットリザードと共に実家へ素材を納品しつつ、夢への資金をためていた。
俺の夢とは街の郊外に牧場を作り、動物や人に懐くモンスターに囲まれて暮らすこと。
ついに資金が集まる目途が立ち意気揚々と街へ向かっていた時、金髪のテイマーに蹴飛ばされ罵られた狼に似たモンスター「ワイルドウルフ」と出会う。
居ても立ってもいられなくなった俺は、金髪のテイマーからワイルドウルフを守り彼を新たな相棒に加える。
爪の欠けていたワイルドウルフのために装蹄師スキルで爪を作ったところ……途端にワイルドウルフが覚醒したんだ!
一週間の修行をするだけで、Eランクのワイルドウルフは最強のフェンリルにまで成長していたのだった。
でも、どれだけ獣魔が強くなろうが俺の夢は変わらない。
そう、モフモフたちに囲まれて暮らす牧場を作るんだ!
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
帝国騎士団を追放されたのでもふもふ犬と冒険とスローライフを満喫する。~反逆の猟犬~
神谷ミコト
ファンタジー
カノン=リシャールは帝国騎士として戦場で無双の活躍していた。
停戦を迎えて、『無能で協調性のない親の七光り』と侮蔑され、ついには騎士団長エドガーの一存で帝国騎士団をそしてパーティを追放(クビ)されてしまう。
仕方なく立ち寄った田舎でゆっくりと過ごそうとするカノンであったが、もふもふのフェンリルに出会い共に旅をすることになる。
カノンを追放した団長は、将軍の怒りをかい騎士団での立場を徐々に悪くする。挙句の果てに、数多くの任務失敗により勲章の取り消しや団長の地位を失くしたりと散々の目に遭う。
カノンは旅をする中で、仲間を作りハーレム展開を楽しみながら、世界を救っていく。
これは騎士団一の戦闘能力を持った男がスローライフを望みながらも問題に巻き込まれ無双で解決!新たなペット犬(?)と旅と冒険を楽しみながら帝国将軍へと成り上がっていく物語である。
※2500文字前後でサクッと読めます。
※ハーレム要素あり。
※少し大人向けの微ダークファンタジー
※ざまぁ要素あり。
※別媒体でも連載しております。
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる