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第三章 クリミナティ調査編

第34話 造られた存在

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トイレの鏡前に立ち兜に手を伸ばす、そしてアルセリスは兜を持ち上げ外そうとするがその手を離した。


自身の素顔を知ってしまえば何かが崩れ去る……そんな気がした。


正直この世界で素顔などどうでも良かった、自分には慕ってくれる部下が居る……それに圧倒的強さがある、それだけで良かった。


アルセリスはトイレから出るとアルラとシャリエルが待つテーブルへと戻る、相変わらず犬猿の仲だった。


「セリス様、何故こんな女を一緒に?」


シャリエルの方を怪訝そうに見ると机に置いてあったシャリエルの紅茶を少し遠い場所に移動させる謎の嫌がらせをするアルラ、何故と言われても勝手について来た故にアルセリスは返答に困っていた。


「別にいいでしょ、減るもんじゃ無いし……て言うかさっきから足蹴るのやめて貰える?」


微かに揺れるテーブル、その下ではアルラがシャリエルの足を蹴り、それ彼女は足裏で止めていた。


あまりに子供じみた戦いにアルセリスは溜息を吐く、ある意味仲が良いのかも知れなかった。


「そう言えば貴方達珍しいわよね、人間と他種族のパーティーなんて」


そう言いシャリエルはアルラの角を指差す、指摘されて始めてアルラは無意識のうちに角が出ていた事に気が付いた。


「この国は他種族に理解があると聞いたがやはりまだ珍しいのか?」


動揺するアルラの肩を叩きアルセリスは尋ねる、その言葉にシャリエルは少し間を空け悩むような表情を見せた。


「そうね、国王が理解のある人だから他種族の入国を許可してるけど国民は正直8割の人は理解してないわ、まぁ私は正直なんでも良いけど」


「8割……」


他種族を拒む気持ちがアルセリスには分からなかった。


様々な種族のキャラを従わせて居るからでは無く、ただ純粋に同じ生き物として差別する必要があるのか……疑問だった。


「私が貴女のこと嫌いなのは種族が違うからって事じゃないから」


遠ざけられた紅茶を自分の方に寄せて飲みながらシャリエルは言った。


「種族関係無く私も大嫌いですよ」


そう言ってそっぽ向くアルラ、基本的に人間が嫌いな彼女だがシャリエルの事は少し気になっている様子だった。


やはり何だかんだ仲は良さそうだった。


アルセリスは椅子を立つとカフェのマスターに代金を払い店を出る、何も言わず立ち上がったアルセリスを見てアルラは一瞬戸惑うも、すぐ様アルセリスを追った。


「また……ね」


シャリエルは店を去るアルセリスの背中を見てそう呟くと残っていた紅茶を全て飲み干した。


「セリス様、人間と言う種族は分からないものですね」


路地裏にある空き地のベンチに座り遠くでいじめられて居るエルフの子供を眺めながら呟くアルラ、その表情は何処か虚ろだった。


「そうだな」


アルセリスはそれだけを言うとアルラの隣に座った。


「私は……人間が憎かったです、過去に数千……数万と超える人間を殺しました、今となっては興味すら抱かない様になりました……ですがシャリエルの様な人は久し振りに見ました」


アルラの言葉に黙って頷くアルセリス、だが内心驚いていた。


数万と言う人間を殺して来たと言う設定だったとは……あまりキャラ設定を深く読んでいなかった故に驚きを隠すので精一杯だった。


ゲーム時代はいつでも見れたのだが異世界となってしまった今は見る術が無い……こうして話して貰えるのは正直有り難かった。


「何故そんなにも人間が憎いんだ?」


「私は鬼姫、オーガの女王と呼ばれていました、ですが実際は人間とオーガの混合種、人間にオーガ遺伝子を組み込む事で生み出す事に成功したいわば作られた存在です」


「造られた存在か……」


混合種……アルラには悪いが少し良い案かも知れなかった。


「今となってはそのお陰で人間のように魔法を使いオーガの様に凄まじい力を発揮する事が出来るので良いんですけどね」


そう言って笑うアルラ、だがその表情は何処か悲しそうだった。


「セリス様、こんな暗い話しやめましょう!」


すぐにアルラは表情を明るくし手を叩くと立ち上がる、そしてアルセリスの手を引いた。


「まぁ……そうだな」


アルセリスは笑顔のアルラを見てそう呟くと立ち上がる、そして空を見上げるとアルラに手を引かれ歩いて行った。
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