神さまに捧ぐ歌 〜推しからの溺愛は地雷です〜Ⅱ

≠impossible

４

　琴くんと皇くん、ふたりの資料を並べたらしっくりくるけれど、真ん中に圧倒的センターが欲しい。そう思うのに、なかなかふたりの間に入れる逸材は見つからない。

　このままだと二人だけのグループになってしまう。Oneと一緒だけど、それでもいいかもなぁ。仕方なくメンバーを増やすのも違うだろうし。そんなことを考えながら、次々に映像を進めていく。

　書類でビビっとこなかったひとは映像を見てもうーんとなることが多くて、自分の直感が正しかったのだと思いたい。

　他の人から見たら魅力的に映るのだろうけれど、僕の思い描く理想のアイドル像には及ばない。厳しいと自分でも思うけれど、もう二度とないチャンスなのに妥協したくなかった。

　そして残されたのは最後の一人、プロフィールを確認した時から最も気になっていた存在。彼で駄目ならふたりでいこうと諦めがつく。期待に胸を膨らませながら、再生ボタンを押した。


　『エントリーナンバー三十番、神代弾かみしろはずむです。よろしくお願いします！』


　楽しそうに瞳をキラキラと輝かせて、明るい声を響かせる。人間にはないはずの尻尾をぶんぶんと振っているように見える彼は、まさに大型犬のようだ。

　キリッとした眉が男らしい。右目の下にある涙ぼくろが印象的で、色っぽい表情も様になるだろう。少し日に焼けた小麦色の肌は鍛えられていて、運動神経も良さそう。

　かわいいとかっこいいが共存した顔は、本人のキャラクターも相俟って老若男女問わず愛されるに違いない。


　『いい笑顔だね』
　『ありがとうございます！』
　『どうしてこのオーディションに応募したか、教えてください』
　『単刀直入に言うと、憧れの人に会いたくて応募しました』
　『それは誰か聞いても大丈夫？』
　『はい、―――さんです』
　『おお！　いいね！』


　ちょうど名前を言っている部分だけ雑音が入って聞き取れない。何度か巻き戻してみたけれど、一文字も分からなかった。

　名前を聞いて身を乗り出しているあたり、田島さんもよく知っているひとなのだろうか。気になるけれど、やっぱり男性アイドルとして憧れるといえば律かな。

　分かってるなぁ、神代くん。
　うんうん、と内心頷きながらニコニコ笑顔を絶やさない彼を見守る。

　笑うと太陽みたいに眩しくて、ポジティブな気持ちが周りにどんどん伝染していく。そんな彼から目が離せない。

　人を惹きつける華がある。それは、生まれ持った天賦の才。アイドルに必要な力。