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悪戯な皐月
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しおりを挟む「さて、続いて第三問、東雲律が今やりたいことは何でしょう」
またしてもランプが光ったのは紡くん。
なんだか他の解答者が可哀想になってきたけれど、彼らは一番近いところでりつむぐを見れているから幸せそう。
律は紡くんに答えてもらえて嬉しそうだし、紡くんは東雲律クイズ王の称号を手に入れるために全力。解答者含むオタクは生のりつむぐに興奮して死にそう。……誰も損していない最高の番組じゃないか。
「はい、吉良くん、解答をお願いします」
「以前のんびりどこか行きたいねって言ってたので、旅行じゃないですかね……」
「正解! 吉良くん、絶好調ですね」
「えへへ、嬉しいです」
はにかむ紡くんのかわいさに目が潰れる。
そう思っていたら、律の口元がすごいことになっている。
駄目よ、カメラさん。今の律を映さないで。
紡くんがかわいすぎて、顔が溶けてる。そんな状態でさえ、美しいと思わせられる顔面の造りに感謝した方がいいと思うほど。
「よくおひとりで旅行とか行かれるんですか?」
「いえ、あまり外には出ないんですけど……。まだふたりで遠出したことがないので、紡と一緒にどこかに行きたいなあと思って話してたんです」
「え、僕と?」
「もちろん、紡を置いて他の誰かと行くわけないよ」
ねえええ、もう、なんなの。
言葉にならない尊さ。ふたりが眩しすぎて成仏してしまいそう。
次の休みは一緒に旅行に行くんですね、そうなんですね。
まだ三問目だというのに、観覧席は皆、息も絶え絶え。怒涛の供給量に処理が追いついてない。
幸せのため息を吐く度に魂が少しずつ出ていってるんじゃないかと思うほど、生のりつむぐの威力が半端ない。これからずっとこんなふたりが見られるの。最高じゃん。
だけど、今は別の心配が勝る。
私、このまま生きて帰られるのだろうか。興奮しすぎて寿命縮んでない?
ほんの少し不安になりながらも、それを吹き飛ばすほどの多幸感に包まれた私たちはりつむぐを見守り続けた。
「いや~、あっという間に次が最終問題です。今のところ、吉良さんが全問正解ですね。吉良くん、目指すはこのまま誰にも譲らずに全問答えての優勝ですか?」
「はい、頑張ります」
JTOファイナルの決勝で見せた、否、それ以上に真剣な瞳。この状態の紡くんが本気だってこと、彼をずっと見守ってきたみんながよく知っている。
「さて、それでは最終問題です。東雲律が宝物を見つけたのはいつでしょう。その宝物と日付をお答えください」
問題を聞いて紡くんの圧勝かと思われたのに、それまで無双状態だった紡くんの手がここに来て初めて止まった。
その隙を見逃さなかったOLのお姉さんがボタンを押す。
「おや、やっと吉良くん以外に解答権が渡りましたね。それではお答えをどうぞ」
「宝物は紡くんで……。あの生配信で言ってたのが紡くんのことなら、四月八日だと思います」
「…………正解!」
震える声で答えたOLさんの横で悔しそうに唇を噛み締める紡くん。JTOで準優勝に終わったときの姿を思い出して、胸がぎゅんと締め付けられた。
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