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stargazer - S
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しおりを挟むまずいと思って帽子を深く被り直した瞬間、どんと足に軽い衝撃。何だと下を向けば、どこかで会ったことのあるような、そんな顔つきの子どもがぎゅっと俺の足にしがみついている。涙を流しながらもぱっちりとした瞳がこちらをまっすぐに見上げていた。
「君は……、」
「ぱぱ」
「え?」
「ままを、たすけて」
「ママ……?」
身に覚えのない言葉を告げられても、困惑した頭上には?しか浮かんでこない。俺は君のパパではないし、ママも知らない。眉間に皺を寄せていると、先程よりも大きくドアが開いて、老夫婦が顔を覗かせた。
「玲くん、ほら大丈夫だから」
「…………」
家から出てきてしゃがみこんだおばあさんに優しく声を掛けられても、子どもは口を真一文字に結んだまま何も話さない。
「君は……、その家の住人に何か用があるのかい?」
すると、おじいさんが俺に声をかけてくる。よかった、俺の正体には気づいていないみたいだとホッとしながらもこくりと頷く。
「はい、迎えに来たんです」
「ふむ……」
俺の答えを聞いて、おじいさんは顎に手をやって考え込む。子どもの頭を撫でながら、今度はおばあさんが口を開いた。
「もう、貴方に気持ちがなくなっていたとしても?」
「ええ、たとえ俺に愛想が尽きていたとしても、何度でも好きになってもらえるように頑張るだけですから」
幸せに暮らしているならそれでいい。
……なんて、嘘でもそんな綺麗事を言えるはずがない。
だって、陽も俺を求めているって分かるから。俺を呼んでいるのは、間違いなく、このドアの向こうにいる陽だから。
「あの子を傷付けるために来たのじゃないのね」
「もちろん」
「やっと、笑えるようになったところなの。だから、また泣かせるような真似はしないでちょうだいね」
「……約束します」
まっすぐに瞳を見つめて答えれば、穏やかな微笑を浮かべたおばあさんが子どもを引き取り、陽の家の鍵を開けた。ごくりと唾を飲み込んで、恐る恐るドアを開ける。
その瞬間、ぶわりとフェロモンに全身が襲われて、理性がぶっ飛びそうになる。それに耐えるため、ふぅと大きく息を吐く俺の背中を叩いて、おじいさんが言う。
「向かって左が彼の部屋だ。後は頼んだよ」
「……はい」
パタリと背後でドアが閉まるのを感じる。子どもが俺の一挙一動を目に焼き付けるように、じいっと観察していることに気付く余裕なんてなかった。
「ッ、うぅ……、」
「陽、」
「……すい」
微かに聞こえてくる声。俺の名を呼ぶ愛しい声。
俺は、一目散にその部屋を目指してドアを開けた。
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