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夢現
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「……きもち、いい」
「俺も」
唇を離した後、熱く燃えるような瞳を見上げて言えば、翠は嬉しそうに笑った。よかった、翠も気持ちよくなってくれてるんだ。ほっとしたのも束の間、突然翠が中から雄芯を抜いて僕をうつ伏せにした。
「んんッ、ふぅ、……あッ、」
再び挿入ってくる熱い雄芯は激しく僕の最奥を穿つ。さっきまで、僕のことを労わってじっくりと味わうような腰の動きだったのに全然違う。
ギシギシとベッドが音を立てる。顔が見えないのは嫌だと思ったけれど、その代わりと言わんばかりに何度も項に口付けを落とされる。その度に甘美な痺れに全身が包まれて、無いはずの子宮がきゅんと疼いた。
――翠の全てを注ぎ込まれて、孕まされたい。
僕に芽生えた何かがそう望んでいる。
……噛んで。
喉元まで出てきていた言葉を、僅かに残っていた理性で押し留める。何も余計なことを言わないようにきゅと唇を噛み締めていれば、僕を揺さぶりながら翠が口を開く。
「……陽、」
「んん、」
「俺のものになって」
「ふっ、うん……、なるっ」
嗚呼、翠が僕を望んでくれた。
囁かれた言葉の意味を理解した途端、ぱあっと視界が開けるみたいに心がクリアになって、僕は何度も頷いた。
翠は僕のものにはなれないけれど、僕は翠のものになりたいから、形なんてもう何だっていい。翠が望むなら、その御心のままに。
「ッ翠、もうっ……」
「ん、……俺もそろそろ限界」
「あぁっ、んぅ……ッ」
「ふ、……っ、」
「……ッ!」
ドクドクと中で脈打つ翠を感じて、ぎゅうと締め付ける。あ、出されたんだってはっきり分かるほど、熱い飛沫を受け止めてたまらなく喜んでしまう。奥へと子種を押し込むようにされると、錯覚する。僕なんかが、翠の子を孕めるはずがないのに。
そう卑屈になる前に、最後にひとつ、ちゅと口付けを落とした翠は一拍置いて僕の項に歯を立てた。その瞬間、ぶわりと噎せ返るほどの甘美な香りに包まれて一瞬何が起こったのか分からなくなる。僕の雄芯は気づかぬうちにトロトロと精液を吐き出していた。
いつもは感じていた痛みもなくて、ただ甘い疼きだけが残る。それはまるでおままごとのような。たとえ意味の無い行為だったとしても、僕の心は今までで一番満たされている。
「……これで全部俺のだ」
ぽつりと零された言葉の意味を追究することはできなくて、聞こえなかったふりをした。そんな僕を慈しむように背中に、肩に口付けが降ってくる。
隣に寝転んだ翠は、星のように煌めく瞳にあたたかい光を灯して、疲れてうつらうつらしている僕の頭を撫でた。
「無理させちゃったね」
「ん、翠……」
「大丈夫、今夜はずっと隣にいるから」
翠の腕の中は心地よくて、一気に睡魔が襲ってくる。そっか、一晩中ずっと翠を独り占めできるんだ。嬉しくなって微笑みながら寝落ちた僕を、翠がどんな瞳で見ていたのか、僕は知る由もなかった。
「俺も」
唇を離した後、熱く燃えるような瞳を見上げて言えば、翠は嬉しそうに笑った。よかった、翠も気持ちよくなってくれてるんだ。ほっとしたのも束の間、突然翠が中から雄芯を抜いて僕をうつ伏せにした。
「んんッ、ふぅ、……あッ、」
再び挿入ってくる熱い雄芯は激しく僕の最奥を穿つ。さっきまで、僕のことを労わってじっくりと味わうような腰の動きだったのに全然違う。
ギシギシとベッドが音を立てる。顔が見えないのは嫌だと思ったけれど、その代わりと言わんばかりに何度も項に口付けを落とされる。その度に甘美な痺れに全身が包まれて、無いはずの子宮がきゅんと疼いた。
――翠の全てを注ぎ込まれて、孕まされたい。
僕に芽生えた何かがそう望んでいる。
……噛んで。
喉元まで出てきていた言葉を、僅かに残っていた理性で押し留める。何も余計なことを言わないようにきゅと唇を噛み締めていれば、僕を揺さぶりながら翠が口を開く。
「……陽、」
「んん、」
「俺のものになって」
「ふっ、うん……、なるっ」
嗚呼、翠が僕を望んでくれた。
囁かれた言葉の意味を理解した途端、ぱあっと視界が開けるみたいに心がクリアになって、僕は何度も頷いた。
翠は僕のものにはなれないけれど、僕は翠のものになりたいから、形なんてもう何だっていい。翠が望むなら、その御心のままに。
「ッ翠、もうっ……」
「ん、……俺もそろそろ限界」
「あぁっ、んぅ……ッ」
「ふ、……っ、」
「……ッ!」
ドクドクと中で脈打つ翠を感じて、ぎゅうと締め付ける。あ、出されたんだってはっきり分かるほど、熱い飛沫を受け止めてたまらなく喜んでしまう。奥へと子種を押し込むようにされると、錯覚する。僕なんかが、翠の子を孕めるはずがないのに。
そう卑屈になる前に、最後にひとつ、ちゅと口付けを落とした翠は一拍置いて僕の項に歯を立てた。その瞬間、ぶわりと噎せ返るほどの甘美な香りに包まれて一瞬何が起こったのか分からなくなる。僕の雄芯は気づかぬうちにトロトロと精液を吐き出していた。
いつもは感じていた痛みもなくて、ただ甘い疼きだけが残る。それはまるでおままごとのような。たとえ意味の無い行為だったとしても、僕の心は今までで一番満たされている。
「……これで全部俺のだ」
ぽつりと零された言葉の意味を追究することはできなくて、聞こえなかったふりをした。そんな僕を慈しむように背中に、肩に口付けが降ってくる。
隣に寝転んだ翠は、星のように煌めく瞳にあたたかい光を灯して、疲れてうつらうつらしている僕の頭を撫でた。
「無理させちゃったね」
「ん、翠……」
「大丈夫、今夜はずっと隣にいるから」
翠の腕の中は心地よくて、一気に睡魔が襲ってくる。そっか、一晩中ずっと翠を独り占めできるんだ。嬉しくなって微笑みながら寝落ちた僕を、翠がどんな瞳で見ていたのか、僕は知る由もなかった。
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