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夢現

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 ふと気が緩んだ隙に翠は悪戯に手を伸ばす。露になった尖りを摘まれると、電流が走ったみたいに体が跳ねた。再び始まる攻めに唇を噛んで耐える。強く吸われる度に鬱血痕が白い肌に散りばめられていく。シーツに描かれた髪の毛が身悶える度に模様を変えていた。

 だけど、イキたくてもイケないのが焦れったい。なんて、もどかしい。直接的な刺激が欲しくて、腰が揺れるのを抑えられない。


 「イキたい?」
 「……ん、おねがい」


 水の膜が張った瞳で、翠をじいと見つめながら懇願する。恥なんてとうの昔に捨てていた。


 「まだここだけでは無理そうだね」
 「ッ、すい、」
 「大丈夫、ちゃんとイかせてあげるから」


 唾液に濡れて、てらてらと光る尖りから翠の手が離れていく。これ以上の責め苦には耐えられそうになかったから、ほっと息を吐いたのも束の間、今度は下着の中でどろどろになっている雄芯に直接触れられる。


 「好きなだけイッていいよ」
 「、ぁあッ」


 自分で事務的にするときとは全く違う。僕の反応を見てすぐに先端が弱いと分かったのだろう、執拗にそこばかり狙われては達するまでそう時間はかからなかった。


 「……ッ」
 「いっぱい出たね」


 ぎゅっと目を瞑って達した後、荒い息を整える。目を細めた翠はそんな僕を見下ろしながら、白濁で汚れた指を見せつけるように舐めた。かぁっと赤くなる僕に口角を上げた翠は、最後の一枚も簡単に剥ぎ取っていく。

 翠に全部見られている。そう思うと、全身が火照ってくる。心臓がうるさい。隠れる場所なんてもちろんないけれど、観察するように見つめてくる視線から逃れようと足を閉じて擦り合わせた。すると、それを許してはくれない翠にがばりと脚を開かれて、その間に体を入れられてはもう隠すことさえもできなくなっていた。


 「……見ないで」
 「ごめんね、そのお願いは聞けないなぁ」


 そう言った翠が宥めるようにキスをする。雛鳥のように必死にそれを受け止めていれば、翠の指先が後孔に触れる。先走りと精液が流れ落ちているせいか、ぐちゅと音を立てたそこの様子を伺うようにくるくると縁をなぞられた。

 また、焦らされている。ワガママを言って翠に嫌われたくないから、早くしてとは言えなくて、見上げた瞳で訴える。ひくひくと期待に震えているのは、翠にバレているだろうか。そんなことを気にする余裕もないまま、僕の身体は更なる快感を求めている。ここまで来たら、理性なんてものは最早必要なかった。


 「んぅッ」


 つぷりと慎重に挿入ってきた指先。狭く閉ざされたはずの後孔は、やっと来たかと歓迎するみたいに長く細い指を飲み込んでいく。

 未開の地を開拓するように、じっくりと進んでいく指を感じながら、僕は無意識に腰を揺らした。まるでどこがいいのか、分かっているみたいに。

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