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第9章 勇者RENの冒険

最終話

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「フム、存外にしぶとい……」

 アークネスはさらに目の光を強めた。

「行くぞ、REN! ニュート!」

「「応っ!!!」」

 オレはソウともニュートとも戦った経験から、二人の攻撃の仕方がよくわかっていた。

 二人の合間を狙って攻撃を差し込んでいく。

 三人の波状攻撃は絶え間なく、アークネスをやがて防御一辺倒に押し込んでいった。

「行けるっ! 行けるぞっ!」

 ソウの声に弾みがつく。ここにきて、三人の攻撃に連携が生まれてきたのだ。

 少しづつだが、アークネスの鎧に傷を増やすことが出来ている。まだ、本体へのダメージはないかもしれない。だが、確実に鎧の再生速度を上回るペースで攻撃が通っていた。

「ぐぬぅぅぅぅっ!!! ちょこまかと動き回りおって!」

 アークネスは忌々しそうな声を上げる。それこそが我々の攻撃に苦戦している証拠だろう。

「一気に叩き込むぞっ!!!」

「ああっ!」「言われるまでもないっ!」

 三人の息がピッタリ合った連携が次々に決まっていく。そして少しずつだが、鎧につけた傷を広げていき、今では左肩や、胸の部分のプレートに大穴を開けていた。

「くっ! 貴様ら~~~~~っ、いつまでも調子の乗りおって!」

 アークネスを中心に大きな魔法陣が描かれる。

「いかん、距離を取れ!」

 ソウの合図と共に、その場を離れた。

 放たれたのはアークネスを中心とした爆発魔法。

 辺りの地面を大きく抉る魔法だ。

 三人共うまく距離をとって躱すことができた。

 だが、アークネスは嗤っていた。

「フンッ!!!」

 気合いと共に奴は胸と腕に目いっぱいの力を込めた。すると、奴の着ていた鎧がはじけ飛んだのだ。

 今、アークネスはボロボロになっていた鎧を全て脱ぎ捨てたのだ。

「我の本気、とくと見るがいい!!!」

 アークネスの姿が消えた。

「早いっ!」

 ニュートは一瞬でアークネスの姿を見失ったようで左右を確認した。だが、その時点でもう対応が遅かった。

 強烈な一撃がニュートの横から薙ぎ払われ、体ごと宙に吹き飛ばされる。

「「ニュートっ!」」

 オレとソウが同時に叫ぶ。

 鎧を脱ぎ捨てたアークネスのスピードはオレの目を持ってしても視認し得なかった。

 その事実にオレの肌が泡立つ。

「次は貴様だっ!!!」

 アークネスはオレに狙いを定めたように睨み、そして、その姿を消した。

「RENっ!!! 危ないっ!」

 オレの体はソウによって突き飛ばされた。

「ソウっ!!!」

 体を飛ばされながらソウを見た時には、すぐそばにまでアークネスが剣を突き出していた。

 強力かつ、俊敏なアークネスの突きがソウの体を貫く。

「グフッッッ!!!!!」

 ソウは口から大量に吐血しながら地に落ちた。腹には大きな穴が空いており、ソウは瞬く間に呼吸すら絶え絶えとなった。

「ソウーーーーーーッッッ!!!」

 オレはすぐに駆け寄った。

 まさか、ソウがここまでやられるとは想像すらしていなかった。

 鎧を脱いだアークネスののスピードは、オレの想像を遥かに上回っていたのだ。

「RENっ! 急いでそいつの手当をっ! アークネスはオレが引き受けるっ!」

 ニュートが空を飛びながら、アークネスを急襲し、そのまままた浮かび上がっていく。

 オレは急いでソウを生き返らせるためにリザレクションを唱えた。

「ソウ……、生き返ってくれッッッ!!!」

 だが、RENが魔法を使っている間、アークネスと戦えるのはニュートただ一人。

「RENッ! 急いでくれッ!」

 ニュートは必死に空を飛び、アークネスの剣を躱し続けている。

「この蚊トンボめッ! すぐに落としてくれるッ!」

 アークネスの剣は容赦なく振られていく。その衝撃波を躱すだけで、もはやニュートに攻撃をしかける暇などなかった。

「グッ!!! RENッ!!!」

 ニュートの体が剣の風圧に巻き込まれた。そして、百メル以上離れた山にまで飛ばされ、激突する。

「次は貴様で終わりだッッッ!!!!!」

 アークネスがオレに向かって突進してくる。

「は、早くッ! 生き返ってくれ!!! ソウッ!」

「RENッッッ!!! ここはまかせてっ!!!」

 遠くから聞こえる声。それはイヴリスだった。

 その両隣にはズールとミリィの姿もある。三人は手を組み、魔力をお互いに融通させ、イヴリスに集中していた。

 そのイヴリスの頭上に現れたのは太陽。それも試合で見せたものよりも大きな太陽がアークネスに向かって動き出した。

「このデカブツめっ! これでもくらええええええっっっ!!!!!」

「イヴリスよっ! 我が魔力全てお主に託す!」

「…………仕方ないから私も協力してあげるわ」

 三人の魔力を吸収したイヴリスの太陽はより大きさを増し、1回戦で見せた時の倍以上の大きさにまでなっている。

「フンッ!!!!! 小癪なりっ!!!!! 我が怒りの剣を喰らうがいい!!!!!」

 アークネスはイヴリスの太陽と真っ向から勝負を仕掛けた。

 手に持った剣に魔力を込め、上段から振り下ろす。

 そして、巨大な太陽とアークネスの剣が激突した。

 吹き荒れる爆風。ほとばしる稲妻。溶けるように消えていく大地。

 その全てがインパクトの強さを物語っている。

 アークネスを包み込むように爆発の光が辺り一帯を覆い尽くした。



「ハァッハァッ、……こ、これでどう? もう私も動くことも出来ないわ」

 片膝を地について肩で息をするイヴリスの隣には、座り込むズールとミリィの姿があった。

 だが、爆発の煙が晴れた時、イヴリス達三人の目が驚愕に見開いた。

「フハハハハハハハハハッッッ!!!!! 今の一撃で動けなくなったか! ならばっ! すぐに止めを刺してやろうッッッ!!!」

 アークネスは健在であった。その剣にわずかなヒビやカケが見られるが、本人は全くの無傷だったのだ。

「クッ! 悔しいけど……ここまでのようね」

 うなだれるイヴリス。

「小娘よ。お主は諦めるのが早すぎる。だから試合に勝てんのだ」

 イヴリスの背後からかかる声。

「誰? こんなところに来るなんて……。お、お前はっ!!!」

 振り向いたイヴリスは驚きの声を上げる。

 そこに現れたのはジーク。その後ろにはトーナメントに参加していたキュイジーヌ、マリーン、バッジ、そして、驚いたことにグリーナの姿までもが並んでいた。

「だが、お主の魔法は悪くない。そのまま使わせてもらおう!」

 ジークは両手を空に掲げた。

 そこに現れたのは巨大な隕石。その隕石の内側からマグマが吹き出し始めた。そのマグマは隕石の表面を覆い尽くし、まるで先程の太陽のような見た目に変化した。

「よし、皆のもの。頼む!」

 ジークの掛け声に皆が一斉に魔力をジークへと集め始めた。

「ぬぅぅぅっ!!! これほどとはな……、これであの邪神を消滅させてくれるわッ!!!」

 ジークは両手をアークネスに向かって振り下ろす。

 巨大な隕石はまるで太陽のように真っ赤に燃え上がり、そして、皆の魔力の供給を経て、イヴリス達が放ったフォーリングサンのさらに倍以上の大きさにまで成長していた。

「うぬうぅッッッ!!! どこまでも邪魔ばかりしおって、この蚊トンボめらが!!!」

 アークネスは、両手の剣をクロスさせ、落ちてくる隕石に真正面から斬りかかる。

 先の衝突よりもさらに大きな衝撃が辺りを覆い尽くす。

 すでに森は焼け落ち、山は削れ、大地は荒れ尽くした。

 だが…………、それでも爆心地に立ち続ける者がいた。

「ぐぬ!!! これほどの魔法に耐え抜くとは!!!」

 ジークは叫んだ。

 アークネスは顔を笑みに歪めた。

「クックック……、今の魔法は効いたぞ。貴様……部下に欲しいくらいの腕前だ。まさか我が剣をボロボロにするとはな……、だが……我に歯向かった者には死あるのみ! 消えてもらうっ!!!」

 アークネスはヒビにまみれた剣を二本とも捨て去った。そして再び、アークネスは動き出す。完全に丸腰となった今も戦意が衰えてはいなかった。それどころか、より早いスピードでの移動となっていた。

「死ねいッッッ!!!」

 アークネスがジーク達を目掛けてパンチを放っていく。数百メルの距離があっという間になくなる。

「RENよ……、時間は稼いだぞ」

 ジークの口角が上がった。

「「待たせたなっ!!!」」

 RENとソウがアークネスを両側から挟み込むように刀で斬りつけた。

 アークネスは剣を失っており、鎧も纏っていない。二人の攻撃はクリーンヒットし、アークネスを大きく吹き飛ばした。

「REN!」

「ソウ!」

 オレはソウに決意の視線を送る。ソウも決心した目を返してくれた。

「オレを忘れてもらっちゃ困るぜ?」

 肩で息をしながらも駆けつけたのはニュートだった。

「大丈夫だったか!」

「当たり前だ! 奴をブチ殺すまで死ねるか! それよりも早く準備しろ! 三人のフルパワーを合わせなければ、奴を倒すことは出来まい」

「あぁ!」

「REN! 行くぞ!」

 オレは刀を上空に構えた。雲ひとつなかった青空が一瞬にして暗くなる。そして稲妻が縦横に走り始めた。

 ソウは両手にホーリーソードを出し、上方で二本のソードを一つに合わせた。その神聖な光は融合し、遥か上空にまで伸びていく。

 ニュートは全ての魔力を口元に集結させた。ドス黒いオーラにその体が包まれる。

 アークネスがゆらりと立ち上がる。

「今だッッッ!!!」

 三人の攻撃が始まる。

 オレの刀へ大量の稲妻が落ち、そして、巨大な稲妻の剣が出来上がった。その剣を上段から一気に叩きつける。

 ソウのホーリーソードは魔力を帯びるごとに巨大化していき、今や上が見えないほどに伸びていた。その超巨大な聖なる剣を振り下ろす。

 ニュートは大きく口を開いた。さらに口の周りに魔法陣を展開し、風魔法によるブレスの強化を入れた。そして、今、最強のブレスが吐き出された。

 三つの攻撃は途中で一つに混じり合い、稲妻の剣と神聖なる剣、毒と呪いのブレスが一つの太いビームのようになり、アークネスの体を覆い尽くす。

「がはッッッ!!! な、なぜだっ? 我が、負けるだと……」

 三人の最強の攻撃はアークネスの体を完全に無に返すのだった。



   ***



「これで貴様には恩を返したぞ……」

「あぁ、助かったよ」

 フンッと鼻息を荒くしてニュートは帰っていった。

「またな……」

 オレは正直に驚いた。ニュートからそんな言葉が出るとは思っていなかったのだ。

「いい仲間が出来たな」

 隣で笑顔になっているのはソウだ。

「でもどうしてこのトーナメントに来たんだ? それも途中から……」

「うむ、以前にイクスっていう邪神を倒したんだが……、それで悪神達の権威が弱まりすぎたようでね。奴らが何かをしかけてくる、という情報があったんだ。それで駆けつけたんだが、トーナメントの開始には間に合わなくてね」

「なるほど……。助けた皆はどうするんだ?」

「あぁ、こんなに強い者たちだ。残らずアルティメットハンターズに加入してもらう!」

 ソウは拳を高々と上げた。

「そっか。勧誘のために皆を死なないようにしていたって所か」

「あぁ、こんな馬鹿らしい戦いで死ぬことなんてないだろう?」

 ソウはニカッと笑みを浮かべた。

「ふぅ、それじゃオレもそろそろ行くか……」

「ん? オレと一緒に来ないのか? お前の強さはもう……」

「会っておきたい人がいるんだ。その後に合流するよ」

 オレにはどうしても会いたい人たちがいる。獣人の国へ行かねばならない。

「そうか……、友の帰還を待っている!」

 オレはソウの言葉に胸を熱くしながら、この場を立ち去る。

 オレの歩く先にはイヴリスとズール、ミリィが待っていた。

「もちろん、私はついていくわよ? 嫌だって言っても追いかけてあげるんだから!」

「むろん、我もだ。よもや置いていくまいな?」

「…………私を救ったのはアナタ。責任はとってもらう」

 三人の言葉にフッと笑いがこみ上げる。

「あぁ、行こう! まだまだオレ達の知らない世界、冒険が待っている!」



 完
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みんなの感想(1件)

赤井水
2022.08.17 赤井水

16話も17話も内容一緒ですね。

荻野
2022.08.19 荻野

ご指摘ありがとうございます。
遅れてはしまいましたが、修正を終えております。
また、新しく19話と20話をアップさせていただきました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

解除

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