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第9章 勇者RENの冒険

第210話 激闘

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 ニュートはゆっくりとオレの方を振り向いた。

 オレのつけた傷はすでに治りつつあり、ニュートの左腕は何事もなかったかのように戻っている。

(あの再生能力……、なんて厄介な)

 奴の再生能力は巨人族のギガースから奪い取ったもの。オリジナルほどではないにしろ、あまり魔力を消費せずに回復するため、試合が長引けば長引くほど、MPに限りのあるオレの方が不利になる。実際、ルシフェルは焦りから自滅したようなものだ。

(ならば……、再生能力など関係ないほど致命的な一撃で勝負を一気に決める必要がある)

 オレの額に汗がタラリと流れ落ちた。

(これほどの使い手であるニュートに致命的な一撃を入れる…………か)

 オレは刀を握る手に力を込めた。

(やるしかない。オレは負けるわけにはいかないんだ)

 今、再びニュートと対峙する。

「今のは中々の攻撃だった。だが、この程度の傷などオレにとってはかすり傷に等しい。クククッ……貴様を倒し、オレはこの世界の王になるっ! 貴様の能力を喰らい、さらなる進化を遂げ、オレに歯向かうものなどこの世に存在しなくなるのだ! 光栄に思うがいい! 王のいしずえとなることを!」

 ニュートの叫びは会場の観客すらも怯えさせ、会場中が静まり返る。

「他人を一方的に蹂躙しておいて王などと……、ならばオレが止めてみせよう! ニュートよ。お前の野望もここまでだ!」

 オレの刀とニュートの刀が再び相まみえる。

 何度も交わされていく剣戟。火花が激しく散ったかと思えば、そのすぐそばからまた新たな火花が咲き誇り、そして散っていく。

「す、凄まじい剣と剣のぶつかり合いですっ! 正直、剣と剣がぶつかる火花があるから私でも剣同士がぶつかっているのが分かりますが、それが無かったら二人がなにをしているのかすら分からないかも知れません!」

「そうですね。これほどハイレベルな攻防を見るのは私も始めてです! ニュートはルシフェルを取り込んでからさらにパワーアップしましたね! 剣のスピードが準決勝とは一段違うように感じます! それについていくRENですが、まさかこれほどの実力を持っていたとは……。いやぁ、世界は広いとしか言いようがありません! まさに歴史に残る試合と言っても過言ではないですね!」

 解説者の熱い声と想いが観客達の声援に火を灯した。

 観客達は地鳴りのような音を足で踏みしめ、声高く、舞台に声援を送っていく。

 どちらを応援するでもなく、この歴史的な試合を見せる二人を応援せずにはいられないのだ。

 会場から怒涛の声援が飛び交う中、ニュートと攻防を重ねていたオレは舌を巻いていた。

(くうううっっっ! こ、これほどの強さ。あの時を思い出す……)

 オレの脳裏に思い浮かんだのは、洗脳され、チームメイトであり、親友であり、なにより最大のライバルであるソウと戦った記憶が蘇ってくる。

 洗脳されていたとはいえ、ソウとの戦いの映像はしっかりと脳裏に焼き付いていたのだ。

(思い出せ、あの容赦ない無数の剣を! ソウはオレの目にもとらえきれないほどのスピードで数十体もの残像を残し、さらに複数の技を行使していたのだ。今のオレならそのレベルの高さがよくわかる。実質のレベルが最高峰に到達しているだけではない。剣のありとあらゆる可能性を突き詰めていった先にある強さ。

 オレは、あの高みへ到達しなければならない。そして、いつかソウを倒し、彼のライバルとしての地位を取り戻す!!!

 それがソウにしてやれるオレの恩返しでもあり、本当のチームメイトとなるための必須条件なのだ!!!)

 オレは戦いの中で少しずつパワーアップしていた。ニュートほどの強敵と戦っていると否が応でも経験値が溜まっていくのだ。そして、身体強化が強まるにつれ、すぐにそのスピードを身にまとい、戦いの中で身につけていく。

「ぬうっ!?」

 ニュートの眉根が寄る。

 奴の態勢こそ崩せはしないが、剣を振るスピードにおいては完全に上回っている。

(この調子なら…………)

 オレはニュートの怯んだ微かな隙を見逃さなかった。

 奴の放った小太刀による払いあげ。そこに絡めるように自らの刀を走らせ、そして上空へと巻き上げた。

 瞬間、ニュートの左側がガラ空きになる。

(ここだっ!!!)

 オレは勝負を仕掛けるため、ニュートの左側から大太刀で振り下ろした。

「もらった~~~~~っ!!!!!」

 オレは勝利を手にした…………はずだった。

 ニュートは目をキラリと光らせ、口を大きく開くとその最奥からドス黒い魔力の塊を吐き出したのだ。

 ブレス。あの竜族の神、バハルの能力を奪い取り、元々ニュートが持っていた毒と呪いの効果を最大限にまで高め上げた必殺技。

 今、ニュートの最大の奥義が不用意に踏み込んだオレに襲いかかったのだ。

(くっ、この態勢では躱すことはできない!!! このまま刀を振り下ろし、奴のブレスを斬るしかないっ!!!)

 瞬間、オレの視界は全て黒に染め上げられた。ブレスの勢いとオレの刀がぶつかり合う。

 怒涛の勢いで流れ来る黒い奔流。オレは刀を支えるだけで精一杯だった。

(くうううっっっ!!! これほどの威力だとはっ!)

 オレの抵抗も虚しく、ニュートのブレスはオレの胸にぶつかった。

「ぐああああああっっっ!!!!!」

 体が浮き上がり、数十メルも吹き飛ばされ、オレの体は入場口近くの壁に激突。そこでようやく止まるのだった。

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