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第9章 勇者RENの冒険
第179話 二回戦第一試合 REN VS ズール
しおりを挟む「東の方角ッ! 阿修羅の国代表! ズールッ!」
花道にズンッ! と音が響き、その男が歩く度に地面を踏みしめる音がなっていく。
「さぁ、ズールの入場です。って……、あれ? 気のせいか……ズールが大きくなった気がするんですが……」
「確かにそうですね。これはおかしいですよ。ズールは身長190程度だったはずです。それが……、どうみても2メル30以上はありそうですね。これは一体……」
「心なしかズールの身体の色も変わってる気がします……、って顔つきも変わってる感じです! 一体何があったのでしょうか?」
「うーん、ブッピー戦で無くしたはずの腕も戻っていますし、その際に何かしらあったんでしょうね。ともかく、ズールは完全復活したということでしょう」
「うーむ、少し考えてしまう所はありますが、腕が3本もない状態では戦えませんからね。むしろ、しっかりと準備してきたズールを称えるべきでしょうか! さぁ、ズールが舞台へ上がりました! 以前は精悍な顔つきでしたが、今回のズールは違いますッ! 憎しみのこもったような怒りの表情ッ! まさに戦いの準備は万端ッ! 激闘が予想されますッ!」
「ズールですが、腕も一回り太くなっていますからね。ブッピー戦以上のパワーと技で戦ってくれそうですね!」
「西の方角ッ! 獣人族代表! RENッ!!!」
俺は花道を歩いていく。視界にはズールが鬼の表情でこちらを睨んでいた。
ズール……、あれほど戦いに拘る、高貴な男が……。
俺は確信していた。ズールは神の力を譲り受けたのだろう。恐らくは傷ついた身体を修復するため。だが、神の力と言っても千差万別。ズールの神は理性を吹き飛ばす、バーサーカーを生み出す力を持っていたのだろう。
あの真っ赤に染まった目。最早、理性が残っているとは思い難い。
出来ることなら、一回戦で奴とは戦いたかったな。
「さぁ、一回戦を一瞬で勝ち上がった唯一の男。完全にノーダメージのまま二回戦に上がってきたのは彼だけですッ!」
「一回戦はすぐに終わってしまいましたからね。この二回戦で彼の実力がはっきりするんではないでしょうか? どれほどの実力なのか? 非常に楽しみですね!」
「さぁ、両者、舞台イン完了しましたッ! お互い睨み合うッ! 会場の盛り上がりも最高潮ッ! ついに二回戦が始まりますッッッ!!!」
「阿修羅族代表ッ! ズールッ! VS 獣人族代表ッ! RENッ! レディ…………、ゴーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
ズールは舞台の結界が消えた瞬間に仕掛けてきた。
姿を一瞬にして消し、俺の側面から剣の乱撃を放ってきたのだ。
フム、スピードも2割増といったところか。
俺は剣を防御のために払いつつ、身体を横方向へずらした。敵の攻撃の動線から自分の体を外すためだ。
剣と剣がぶつかり合い、手には衝撃が伝わってくる。
ズールは六本の腕にすべて剣を装備しており、すぐさま次の一撃が放たれてきた。
俺もスピードを上げ、次の一撃も流しつつ、細かに剣をコントロールし、連撃を避けていく。
「仕掛けたのはズールッ! は、疾いッ! これほどのスピードではなかったと思いますが、今のズールは別人のようですッ!」
「確かに、いいスピードでの踏み込みです。ですが、ズールの技を活かしつつ攻撃してますよ! 通常、スピードやパワーが上がるとその制御が難しいものなんですが、ズールには関係なかったようですね」
「ズールがさらに踏み込んでいくッ! 連撃、連撃、連撃ィッ!!! RENは再度に移動しつつ、防戦一方! この状況、果たして打開できるのかッ!」
「うーん、ズールの攻撃が止むことなく続いてますから、これに反撃するのは難しいですよ? カウンターを狙おうにも、次の攻撃がすぐに飛んできますからね! 絶え間ない攻撃は非常に厄介なはずです!」
解説者の言う通り、俺は手を出しあぐねていた。
純粋な剣の勝負であれば、今のズールに手を出すのは難しいだろう。
だが……、
「これならどうだ?」
俺は剣に雷の魔法を纏わせた。
剣がぶつかり合う。すると、俺の剣から小さな雷が放出され、ズールの次の手に当たる。
一瞬ではあるが、ズールの手が引っ込んだ。
これは試合。何でもありの戦いなのだ。純粋な剣術だけの戦いではないのだ。
一瞬引っ込んだ所へ俺は剣を伸ばしていた。ズールが攻撃しようとしていた次の腕が繰り出される所に。
伸ばされた剣は見事にズールの腕にヒットする。
ズールは切られたことに気づき、素早く後方へ飛び跳ねた。
再び、距離が離れる。
「す、凄まじい攻防~~~~~~ッッッ!!! 一体何が起こったんでしょうか? 私には何が起きたのかよくわかりませんが、RENの攻撃がズールを捉えましたッ!」
「これは高度な戦いですよ! RENという男、その実力は確かなようです。剣に魔法を纏わせ、ズールの連撃を怯ませたんですね。そして、次のズールの攻撃を分かっていたかのような見事なカウンターです! 思わず大きく息を吐いてしまうほどに見事な攻撃でした!」
「あ、あの一瞬でそんな攻防があったんですね! さぁ、両者、にらみ合ったまま。今度はどちらが出るのかッ? この戦い、一瞬たりとも目が離せませんッッッ!!!」
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