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第9章 勇者RENの冒険

第172話 グレンの復活

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「いかがです? 私のテレポート魔術は。無事にあの剣を得ることができたようで安心しましたよ」

 蛇の国の神はニッコリとしたままニュートに握られたグレンを見た。

「あぁ、助かったぜ。礼を言う」

 神はグレンの同意と共に、テレポートの魔術を行使、俺の元へグレンを届けてくれたのだった。

 素直に頭を下げると神は少し驚いたように口を開いていた。

「どうした?」

「いえ、アナタの意外な一面を見た気がしましてね……。お役に立ててよかったです。それでは私は失礼しますよ。少し疲れてしまいました。休憩させていただきます。アナタの健闘、期待していますよ?」

 神は振り返り、廊下を歩いて去っていく。

「あぁ、もう一つだけ、仕事を頼みたい」

「仕事? ウゥッッッ!!!!」

 グレンを手にした時、その意思、意識、記憶が俺の中に入ってきた。そしてオレは瞬時に理解したのだ。この刀が血を求めていることを。血を吸い、その中の魔力を補給し、自己再生するのだと……。

 ならば身近の者から血を補給させてもらうのが手っ取り早い。

 オレは神の背中にグレンを突き刺したのだ。

 口からドッと青い血を吐き出す神。

「な……、なぜ……」

 その顔は驚きに満ちていた。

「オマエには感謝している。俺の呪いを強化し、この舞台へ連れてきれくれたこと。グレンをこの手に握らせてくれたこと。そして、オマエの命でグレンをより強化させてくれたことにな」

「ニ、ニュート……キサマ……」

「さぁ、グレンよ。遠慮はいらん。神の血。とくと味わうがいい。そしてパワーアップした姿をオレの前に現わすがいいッッッ!!!」

 神は死んだ。

 そしてニュートの手には刃幅が倍、刃長も倍、重さは4倍にもなったグレンが握られているのだった。



   ***



「さぁ、第七試合、健闘を見せたグレンでしたが最後はギガースの鉄球に押しつぶされてしまいましたね!」

「えぇ、残念な最後でしたが、それも仕方がありません。このトーナメントを勝ち抜くには死ぬ覚悟も必要ですからね」

「そろそろ、舞台の用意が整いそうです。いよいよ一回戦第八試合! 一回戦の最後の試合が始まる模様です」

「一回戦の最終試合ですが、ついに優勝候補の一角、ドラゴン族のバハルが登場します! 相手は蛇人族スネークマンのニュートですね。どこまで喰らいつけるのか、楽しみですね」

「その口ぶりですとやはりバハルが優勢になるとお考えですか? ローファンさん?」

「えぇ、どうしても蛇とドラゴンでは種族としての格が違いますからね。まぁ蛇といえどヒュドラや大蛇はたしかに強いのです。ですが……ドラゴンほどの脅威ではない、というのが実情ではないでしょうか」

「確かにそうかもしれませんね。さぁ、両者の入場です!」



「東の方角ッ! ドラゴン族代表! バハル!!!」

「さぁ、やってきたのはバハルです! 白い独自の衣装に身を包んだ男がやってきました!」

「あれは神竜族伝わる伝統衣装ですね。戦いに赴く前に着用し、出陣するのが習わしとなっているそうです!」

「破壊竜、バハムートの子孫ということですが、今大会では人形ヒトガタで入場してきましたね」

「さすがにこの舞台では竜の姿では大きすぎるでしょうね。むしろ人形のほうが小回りが効いて、対戦するのも楽になるはずですよ」

「そうなのですか。てっきり大きい姿からブレスでも吐くのかと思いました」

「ブレスならあの姿でも全く同じ性能で出せるはずですよ。まぁ、この舞台でブレスを吐くと逃げ場がないでしょうから相手は大変でしょう。果たして、ニュートのブレス対策も見どころの一つではないでしょうか?」

「なるほど……。さぁ、バハルの入場が終わりました。次はいよいよ最後の戦士の入場ですね!」



「西の方角! 蛇人族スネークマン代表! ニュート!!!」

「最後の戦士が入場してきました! これでついに参加戦士16名、全員が舞台で戦うこととなります!」

「あれ? リサさん! ニュートですが、武器が変わってますよ?」

「あっ、そうですね? たしか、ニュートは腰に剣を何本も差していたと思いますが……、今は手に持っている長い刀を一本だけという装備ですね!」

「んー、相手がバハルということもあり、特別な装備を用意したんでしょうかね? 私の情報ではニュートは二刀流を得意とする男だと聞いていたのですが……、これは不気味ですね」

「ニュートの持つ刀ですが、長いですねぇ。先程のグレンの刀も相当な業物だった気がしますが、それよりも遥かに上回る大きさとなっています!」



 ニュートは一人ほくそ笑んだ。

 くくっ、誰も気づかないとはな。パワーアップしたグレンは見た目にもはるかに大きくなっており、誰も同じ刀だとは気づいていない。グレンは俺に超常の技を仕込んでくれた。そして俺の能力もそこに乗せ……。

 本来、格上であるドラゴン族。その族長であるバハルが相手とあっても、今のニュートに怯むところはなかった。

 まずはキサマで試し切りをさせてもらおう。

 そして、我が覇道の生贄として、死んでもらう。

 今、ニュートの目が白く鋭く光り、バハルを睨みつけるのであった。


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