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第9章 勇者RENの冒険

第156話 もう一つの決着

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「しょ、勝負有りッッッ!!! グリーナの体が消えていきます! この第四試合、終わってみればミリィの圧勝でした!!!」

「そうですね。グリーナも弱かったわけではありません。巨大なドラゴンやまして、神獣フェンリルですからね……、我々が闘ったのならば、相当の被害が出たことは間違いないでしょう。ここはミリィの強さが圧倒的だったということだと思います」

「さて、そのミリィですが、次の対戦相手がジークですね! どう思われますか? ローファンさん!」

「んー、これは予想しづらい! ジークも神剣を使いこなすほどの剣の腕前です。恐らくですが、激しい剣の打ち合いになるでしょうね! そこで神の創り出した剣と、文明の生み出した剣のどちらが強いのか? ここが見どころとなるのは間違いないでしょう!」

「なるほど~、神か、文明か、この対決、楽しみですね! さぁ、本日はこの第四試合を持って終了となります! また明日、第一回戦第五試合でお会いしましょう! それでは!」



   ***



「一体何が起きたと言うの?」

 私は目の前の光景にただただ驚きを隠せなかった。

 横たわっているのはあの長い剣を持っていた神だった。

 彼は何事もなかったかのように剣を鞘に収めながら、神を見下ろしていた。

 時間にしてほんの数旬のことだった。私はこの戦いに既視感を覚えた。 そう、黒騎士とRENとの戦いだ。あの時は黒騎士が弱いものだとばかり思っていた。現実は違ったのだ。黒騎士が弱かったのではない。彼が強すぎたのだ。

 そして、それは今眼の前で起こった戦いも全く同一だった。あまりにも彼は強すぎたのだ。神は袈裟斬りに切りかかった。RENは神の横へ一瞬で移動すると、神へ致命的となる一撃を振り下ろした。それで終わりだった。神ですら相手にならず、たったの一合も交えることなく神を打ち倒してしまったのだ。

 私は体の奥底から震えた。あの神は、私でも倒すのは容易ではなかっただろう。MPの切れた現在の状況であれば、もはや勝利は絶望的である。

 私は一切返り血すら浴びずにいる彼の姿に美しさすら感じた。この今の私に湧き上がる気持ちは一体何なのだろう。尊敬、恋慕、崇拝、そのどれもが混じり合ったような気持ちが私の中に強く芽生えたのだ。

 それをはっきりと認識したとき、私の足は自然に動いた。そして彼の元にひざまずき、頭を垂れた。

「ん? 一体どうした?」

「REN様。どうか今までの非礼をお許しください。そしてこの命ある限り、私のすべてをあなたに捧げます」

 私は彼の手の甲を取り、くちづけをした。手の甲が光を放ち、部屋全体を包みこんだ。

「こ、これは? イヴリス、一体何をしたんだ?」

 やがて光が落ち着くと、彼の手の甲にははっきりと、ある文様が描かれていた。

「これは悪魔族との契約の証でございます」

「契約だと? 私は契約などした覚えはないが……」

 彼は困惑に眉をひそめた。

「これは私の忠誠の証でございます。あなたを縛るものは一切何もなく、あなたが私の全てを自由にできる権利でございます。どうか私の覚悟の証だと思い、受け入れて頂ければ幸いでございます」

 彼は最初、困ったような顔をしていたが、やがてを受け入れてくれたようで、ひとつ頷いてくれた。

「そんな不利な契約、悪魔が結んでいいのか?」

「構いません。契約がなければそもそも私は現界することすらできないのです。今まではそこに倒れている神と契約があったので、現界することができていましたが、それも時間切れのようですので……」

「む? それはすまなかったな。確認もせずに倒してしまって」

「問題ありません。REN様との契約があれば、私は幸せでございますから」

「まぁ、色々と確認したいことはあるが、今しばらく時間をもらえないだろうか? なんせやることが山積みでね」

「かしこまりました」

 私は少し後ろに下がり、彼の様子を伺った。

 それと彼が唱えた魔法は……、

「リザレクション!!」

 周囲は凄まじい光に包まれた。そして時間を巻き戻すかごとく、倒れていた神の傷口がみるみるうちに塞がり、神は生き返った。

「ぬぅ……、こ、これは? 私は死んだはずでは……」

 躯であった神の体が起き上がる。

「そうだ、お前は一度死んだ。だが、私が蘇らせたのだ」

「蘇らせた、だと? 神であるこの我を……。貴様……本当に人間か?」

 神は驚愕の表情を浮かべ、彼を凝視した。

 そんな神のことなどお構いなく、彼は剣を一閃し、神を切り伏せた。

 私には理解できなかった。なぜ彼はわざわざ神を蘇らせたのか? そしてなぜまた切って捨てたのか。

 そんな私の気持ちを知ってか、彼は口角を上げ口を開いた、

「どうやら、俺が何をしているのかわからないようだな」

「えぇ、これはいったい?」

 彼は親友から教えてもらったというその方法を語りだすのであった。

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