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第9章 勇者RENの冒険

第152話 一回戦第四試合 ドライアド代表 グリーナ VS 機械の国代表 ミリィ

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 対峙した瞬間に分かった。ジーク、こいつは強い……。

 奴の剣を受け止める。凄まじい轟音を立て、奴の神剣と俺の聖剣がぶつかり合った。剣の押し合いは五分と五分。リッチのくせにその膂力は相当なものだ。しかもスピードも速い。

「貴様……、ワシの邪魔をするのか?」

 その声は低く、抑揚もなく、奴の持つ冷酷さが俺の耳に届く。

「勝負はもうついた。無駄な殺戮はやめてもらえないだろうか?」

 実際、イヴリスにはもう動く気配すらない。完全に試合を諦めているのだ。

 力を込め、奴の剣を弾き飛ばすと、ジークは後方へ大きく飛び退いた。

 だが、奴の殺気は未だ発せられたまま、治まってはいない。

 実況がイヴリスの反則負けを言い渡し、この勝負は終了する宣言が為された。しかし、観客席は静まりかえったまま、ただただ舞台に注目しているようだった。

「確か……、RENといったな。一つだけ聞きたい」

 遠くに離れているにもかかわらず、奴の声ははっきりと俺まで届く。

「貴様は神の味方をするのか?」

 奴の目に青白い炎が灯り、こちらをジロリと睨み付けてくる。

「俺は別に神の味方というわけではない。ただ、コイツがこんな所で死んでしまうのは惜しいと思ってね」

「そうか……」

 ジークの殺気が治まっていく。眼窩に燃えていた青白い炎も消え、奴はゆっくりと振り返って退場していくのだった。

 奴の退場を確認したあと、俺はゆっくりとイヴリスに手を伸ばした。

「立てるか?」

 イヴリスはただ頷いて俺の手をとったが、腰が抜けてしまっており、肩を貸して退場することになるのだった。



   ***



 イヴリスの控え室に入り、寝台へ彼女の身体を乗せ、ヒールで傷ついた身体を癒やしていく。

「ねぇ……、どうして私を助けたのかしら?」

 今まで俺を散々からかうように話していたイヴリスの面影はなく、神剣な眼差しだった。

「うぅむ……、お前にもやりたいことがあるのだろう? 俺としきりに契約したがっていたのもその為だと思っていたのだが……違うか?」

「え、……えぇ、その通りよ。でもそんなの理由になってないでしょう?」

「俺にもやらなければならないことがあってな。ま、実の所、お前を助けるのは、ついで、だ。俺が用事あるのは……」

 俺は剣を握り、振り返る。

 白い魔力の塊が宙に浮いていた。俺がじっと見ていると、それはやがて地上に集まり、そして人型を為していく。

 現れたのは神だった。長い金髪、整った白い顔、白いローブで身体全身を覆った背の高い男だった。

「私はイヴリスをこの場へ派遣した博愛の神。彼女と二人で話をしたいのですが……」

 一聴すれば耳あたりのいいように言っている。だが……、

「話だと? フッ……、そんなに殺気を放ちながら何を話すって言うんだ? イヴリスの魂を吸い取り、大神へ捧げるための話し合いか?」

 一瞬にして博愛の神を名乗る男の顔が歪む。怒りを露わにし、俺を睨み付ける。

「今すぐここを立ち去るなら、アナタは見逃して差し上げても良いと言っているのですよ? それとも……、私と一戦交えるおつもりなのですか?」

「フンッ、俺は始めからそのつもりだったからな」

 俺はこの広めの控え室にバリヤーを何重にも張り巡らせた。

「これで俺達以外にこの部屋へ近づくものはいない。……神の実力とやら、拝ませてもらおうか?」

「とても正気とは思えませんね。ですが……死にたいのならばいいでしょう。私が貴方たちを消して差し上げましょう」

 何もなかった空間に突如として現れる白い霧。そこに博愛の神が手を差し入れ、何かを引き出した。それは長い両手剣。ズッシリと重さのありそうな剣を両手で持ち、腰を落として俺に剣先を向けるのだった。



   ***



「さぁ、会場の皆様たいへんお待たせいたしました! 整備も整いまして、いよいよ本日の最後の試合となります一回戦第四試合を始めます!」

 リサの解説と共に会場は盛り上がる。

「東の方角! 森の妖精、ドライアド代表! グリーナ!!!」

「さぁ、まずは古代の大森林からやってきたドライアド、グリーナです! 緑色の髪の毛を腰辺りにまで伸ばした女性が入場してきました。身体には神秘的に輝く布を纏い、そこから伸びる手足は透き通るような白っぽい肌色になっています! 今大会の美肌ナンバー1かもしれませんね!」

「えー、便宜上、グリーナを彼女と呼びますが、彼女は妖精族ということもあり、性別が存在していません。あの姿ですが……、恐らくエルフか人間を模して変身しているのでしょう。個人的には森の奥地にのみ棲息しているハイエルフに似ているのではないか? と感じております。ただですよ……、変身魔法というのはかなりハイレベルな魔法でして、それを使いこなしているということは相当の使い手である、と言わざるを得ません。一体、どれほどの使い手なのか、期待しましょう!」

「なるほど、彼女には性別がないんですね。その魔法の腕前、期待が高まります! さぁ、グリーナが入場しました。続いては対戦相手の入場です!」

「西の方角、機械人形の国代表! ミリィ!!!」

「さぁ、反対側からやってきたのはメイド服の美少女、ミリィ! 今大会では果たしてどんな闘いをみせてくれるのでしょうか?」

「ミリィを開発した人々はいずれも滅ぼされてしまいました。その開発者達は大賢者と呼ばれるほどの魔法使いだったと聞き及んでおります。つまり、大賢者よりも単純に強い、ということしかわかっておりません。使用する武器や攻撃方法も全くの未知というわけです。いやぁ~、どこからどう見ても人間にしか見えませんね! 控えめな胸周り、すごく短いスカート! 黒いタイツとスカートの間の絶対領域にはやわらかそうな肉が揺れており、今も観客席にファンを増やしていることでしょう!」

「ローファンさん……、何かやましいこと考えてません? ドン引きなんですけど……」

「これは男にしか分からないロマンなんです! リサさんもあの格好してみてはいかがです? 新しい世界が開けるかも知れませんよ?」

「えぇ……」

 ミリィの入場が終わり、二人の戦士はお互いを睨み合う。

「さぁ、入場が終わりました! 妖精 VS 機械! 大自然 VS 超文明! 果たして勝つのはどちらなのか!? 一回戦第四試合! レディーーーッ、ゴーーーーーーッッッ!!!」


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