125 / 219
第9章 勇者RENの冒険
第123話 パワーレベリング
しおりを挟む「ん? これは一体どうしたことだ?」
ドラゴンの様子がおかしいのだ。
溜め込んでいた魔力の量は膨大だったはずだ。だが、ドラゴンブレスは、もう既にしぼみ始め、威力を減衰させている。
どうやら無事にブレスをやり過ごせたな。
俺は内心安堵した。ここにいるのは俺だけじゃない。リンとザッツはまだ、レベルが充分ではないのだ。余りに激しいぶつかり合いだったため、岩陰に隠れて避難していることだろう。
ブレスが終わったら攻撃を仕掛ける合図をするため、俺はブレスを終えたドラゴンを注視した。辺りはまだ、土煙で覆われ、レッドドラゴンは確認出来ない。
やがて土煙が晴れてきた。うっすらとドラゴンの影が見えてくる。
レッドドラゴンはその首を真っ直ぐに伸ばし頭部はこちらを向いている。
よし、今だ。
「リン! ザッツ! 攻撃開始だ!」
二人に聞こえるように叫んだ。
レッドドラゴンは俺を口で攻撃しようとするのか、首を前に倒してきた。
「む? 丁度いい! その首もらい受ける!」
俺は聖剣を構えなおし、レッドドラゴンに向かって走り始めた。
レッドドラゴンの首はどんどん前に来る。俺は高くジャンプし聖剣を横薙ぎに降っていく。
だが、レッドドラゴンの頭は俺を向くことなく、さらに下に向かって落ちていった。
「な?」
聖剣は空を切った。思わぬ展開に何が起こったのか分からず、焦りが浮かぶ。
だが、レッドドラゴンの首はそのまま地面に轟音を立てて落ちてしまうのであった。
「えっ……と、これは一体、どうゆうことだ?」
全くワケがわからない。レッドドラゴンは横たえた首を動かす気配がない。
その目は完全に白目を剥いており、呼吸もしていなかった。つまり、既に死んでいると言うことだ。
ま……、まさか? あの二人が?
俺はドラゴンの腹の方を見ると、リンが満面の笑みでこちらに手を振っているのが見えた。
反対側を向くとザッツが俺の視線に気づき、ニッコリと微笑むと、軽やかに一礼をした。
間違いない。やったのはあの二人ということだ。獣人に身体強化魔法がこれほど相性がいいとは……。レベルが上がったらとんでもないことになるんじゃないか?
だとしたら……、是非とも見てみたい。一体どこまで伸びるのか? もしかしたら俺も戦闘では勝てなくなるかも知れない、そう思えるほどの圧倒的な特性。
「フッフッフ。面白い! リンっ、ザッツ! 今日は日が暮れるまでレッドドラゴンの千本ノックをするぞ!」
俺は高らかに宣言した。
「はい? 千本ノック? とは一体なんでしょう?」
リンは首を傾げる。
「フゥム、興味深そうな単語ですね。年甲斐もなくワクワクしてまいりました」
ザッツは分かってはいないようだが期待に目を輝いているな。
「よし、では……いくぞっ! リザレクション!」
先ほどまで寝そべっていたレッドドラゴンがまた目を覚ました。白目だった目に赤い虹彩が戻り、首を持ちあげ、辺りを見回している。
「わわっ! 先生っ!どうして倒したレッドドラゴンが蘇ったのですか?」
「ほほぅ! これは、もしや……蘇生魔法というものですかな? これは非常に興味深い!」
二人とも驚き目を丸くしたが、すぐに戦闘時の目に戻っていった。
「よし、ではまた戦闘だっ! 何度でも蘇らせるから一気にレベリングしていくぞ!」
「おおー!」
「かしこまりました。すぐにかたづけて見せましょう!」
二人とも気合の入った返事をしてくれた。神聖魔法のレベル、少しだけ上げておいて良かった~。役に立てたようだ。とはいえ、まだレベルが低いせいで、失敗もあるだろうし、死んだ直後でなくては使えない。俺もレベリングが必要だな。
俺はソウに教わったホーリーソードを出し、二人と息を合わせて攻撃を開始するのであった。
***
「フゥ~、久しぶりのレベリング。楽しい~!」
ただひたすらに繰り返す作業だが、俺は充実感を感じていた。
「せ、先生……。まだ……続くんでしょうか?」
リンの目は少し虚ろになってきていた。
「ふぅむ、さすがに私もキツくなってきました。REN殿は体力も超一流ですな」
ザッツも肩で息をしており、足がフラついている。もう現界近いだろう。
「二人とも、レベルはどうだ? いくつになったかな?」
「ん……と、えっ? うそっ!? 4300になってる!」
リンは驚愕の余り、目も口も大きく開く。
「何と……、私も4300とは……。パワーレベリング、これほど凄まじいとは……」
ザッツは何やら頷いている。
因みに俺の神聖魔法のレベルも4000を超えた。お陰でエリアリザレクションが使えるほどに魔力が溜まるようになってきた。成功率もぐっとあがっており、普通のリザレクションならほぼ、失敗はなくなった。
「じゃあ、今日はこれくらいでお開きにしよう! お疲れ様~!」
「や、やっと終わった……。先生、スパルタすぎですよ……」
「ささ、お嬢様。歩けますかな? 肩を貸しまずぞ?」
ザッツの肩につかまりながらだが、リンも歩いて帰れそうだ。
「二人ともよく頑張ったね! 俺も自分のレベルアップが出来て嬉しいよ。明日はレベルアップの効果を確認してみよう」
俺の提案に、二人は頷くことが精一杯なのであった。
0
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる